保険薬局と調剤薬局の違いとドラッグストアが誕生した理由

保険薬局? 調剤薬局?

 保険診療に基づいて医師の発行する処方箋に従い、調剤を行う薬局のことを「保険薬局」と呼びます。世間で「薬局」としてイメージされているのは「保険薬局」 です。

 「調剤薬局」 は法律上の正式な名称ではありません。薬局は調剤の業務を行う場所ですが、薬局製造販売医薬品やOTC医薬品(要指導医薬品・一般用医薬品)によるセルフメディケーションの相談などに応じることも薬局として本来の役割です。

第二条
12 この法律で「薬局」とは、薬剤師が販売又は授与の目的で調剤の業務を行う場所(その開設者が医薬品の販売業を併せ行う場合には、その販売業に必要な場所を含む。)をいう。ただし、病院若しくは診療所又は飼育動物診療施設の調剤所を除く。

○医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和35年法律第145号)


病院門前薬局の誕生

 日本の薬屋はいわゆる街のパパママ薬局の時代が長く続きました。
 一般用医薬品を販売可能な薬店(一般販売業)・薬局のうち、ようやく海外の多くの国同様に医薬分業が進展した昭和の終わりに調剤を中心業務とした薬局が病院門前から生まれました。

ドラッグストアの誕生

 同じ時期に医薬品再販売価格維持制度等の規制撤廃から、医薬品、化粧品、日用品を値引き販売するドラッグストアが一般化していきました。例えば、当時全国どこでも777円で販売していた佐藤製薬ユンケル黄帝液が大手(といっても当時は100〜200億規模)ドラッグストアでは398円で販売しているということで、プライス面のインパクトが大きかったのです。

 世間一般にドラッグストアの呼称が定着したのはマツモトキヨシのTVCMからだと認識しています。

http://www.r-matsukiyo.com/history.php

 街のパパママ薬局はドラッグストア か 医薬分業の進展で大病院のみならず、個人クリニック門前でも成立するようになった個人経営の薬局に分かれるようになりました。

 現在のドラッグストア業態に関しては許認可上は薬局も薬店(医薬品一般販売業)も存在します。
 そういった動きの中で、当初は保険薬局を主業態としたチェーン店は小規模だったものの、拡大を図るなかでドラッグストアチェーンと差別化した名称である「調剤薬局」をつけるようになりました。世間での認知拡大につれて、ドラッグストア企業・業界内部でも「調剤薬局」という呼称は一般的になりました。

日本で2番めの法令違憲判決(法令自体が憲法に違反していると判断された)は薬事法

 余談ですが、昔の薬事法(現在の薬機法:医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)には薬局開設許可に距離規制がありました。

1963年(昭和38年)に薬事法の一部を改正する法律(昭和38年7月12日法律第135号)による小改正が行われ、下記第2項-第4項の規定を追加することで距離制限規定が導入されていた

(許可の基準)第6条 次の各号のいずれかに該当するときは、前条第一項の許可を与えないことができる。一 その薬局の構造設備が、厚生省令で定める基準に適合しないとき。二 申請者(申請者が法人であるときは、その業務を行なう役員を含む。第十三条第二項において同じ。)が、次のイからホまでのいずれかに該当するとき。

イ-ホ (省略)

2 前項各号に規定する場合のほか、その薬局の設置の場所が配置の適正を欠くと認められる場合には、前条第一項の許可を与えないことができる。ただし、当該許可を与えない場合には、理由を附した書面でその旨を通知しなければならない。3 都道府県知事は、前条第一項の許可の申請について前項本文に規定する事由があるかどうかを判定するには、地方薬事審議会の意見を開かなければならない。4 第二項の配置の基準は、住民に対し適正な調剤の確保と医薬品の適正な供給を図ることができるように、都道府県が条例で定めるものとし、その制定に当たつては、人口、交通事情その他調剤及び医薬品の需給に影響を与える各般の事情を考慮するものとする。

Wikipedia 薬局距離制限事件より

 この法律は目的と手段を間違えたものであるとして、昭和50年(1975年)最高裁判所で違憲(憲法22条1項に対して)判決がでました。
 目的は薬局がないかきわめて少ない地域を解消することであり、その手段として薬局の密集地帯に開業規制を設けることは目的と手段が合致しないというわけです。

 判決結果は最高裁判所判例集  民集 第29巻4号572頁に掲載されています。
 この法令撤廃が大病院門前への保険薬局集中とドラッグストアの競争激化を生んだことも背景としてはあります。
 法令の変化、規制緩和の動きがいかに世の中の消費行動・生活を変えるのか、歴史を振り返るだけでなく今後も考えていきたいものです。

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