マスク行列で疲弊するドラッグストア店舗~負の連鎖を断切る解決策と実行例

店舗が危機的状況だからこそ、経営陣が妥協せず知恵を絞る必要がある

 agendanoteの連載で

Agenda note (アジェンダノート)

 新型コロナウィルス騒動で小売店舗が疲弊  新型コロナウィルス騒動で、ドラッグストアを …

「マスク先着順」販売の否定で、ドラッグストアの利益と働きがいが向上するかもしれない というコラムを書きました。

 スマートニュースやLINEニュースで良い位置に載ったこともあって、多くの方に見ていただきました。
 あえて、読者層と合わない売上・利益のシミュレーション表を作って載せたのには理由があります。
 ドラッグストア経営陣に考え抜いて欲しかったからです。

※表示順位はパーソナライズされていますので、人により違います

ドラッグストア開店前行列の実態:4/11追記

 ドラッグストアの開店前行列や問合せから店員にいわれのない罵声を浴びせる人まで、Twitterで #ドラッグストアの現状 タグなどを見ると赤裸々にわかりますが、その中でも驚く実態をツイートされている方がいらっしゃいました。

https://twitter.com/saturday178/status/1248198984021106689

先日マスクを買う為に初めて朝からツルハに並んだのですが、7時の時点で20人近く並んでいてその殆どがマスク集めが趣味と化してる中年・年配の方ばかりでした。 私がツイートしようと思ったのは、その常連が自分達より遅く並んで買えなさそうな方々に直接転売を持ち掛ける場面を目撃したからです。
朝イチで並んでる常連達は、言い方悪いですが異様なコミュニティが出来上がっており各店舗で並んでる仲間と連携をとってやりとりしてる様子。 そして仲間内で売買もしているようで、朝から大きな声で電話、談笑、列に並んだまま喫煙をしていました。… 

上記ツイートの書き出し

 さて、新型コロナウィルス騒動のような特殊な状況になると、 小売店舗の店頭において以下のような負の連鎖が発生します。

状況変化からの負の連鎖

状況変化①臨時休校

臨時休校
→子供が家にいる
→(子によっては)家事が増える&パートに出にくくなる
→主婦パートが支える日常品小売業店舗のシフトが回らなくなる
 ・特にマスク・アルコール問合せ地獄のドラッグストアの業務は破綻する

https://twitter.com/vqzqt63gia1b8VK/status/1238060354778746880
https://twitter.com/yu_yosak0i_yu/status/1243102452880031744

→オペレーションが破綻する
→陳列・品出しが間に合わなくなる
→事実上の欠品(棚にない)が増える
→電話・店頭のマスク、アルコール、トイレットペーパー問い合わせに加えて、あらゆる商品の来店客問合わせ「これないの?」が増える
→倉庫在庫や入荷予定を調べる時間だけロスして他業務が進まない
→ますます品出しが破綻する
→欠品で売上が下がる

 問合せの増加に関しては、ドン・キホーテ中目黒本店で書かれたこちらが衝撃的な数でした。1日5,000件以上の「マスクありますか?」「入荷はいつですか?」

https://twitter.com/ShutaTAKADA/status/1246396076682178560/photo/1



状況変化②売上低下

※現状はマスク、アルコール、トイレットペーパー等を探す人の来店で売上は他業態よりも良いですが、売上の下がった店はこうなります。

→売上が下がると売上を上げようとして本部から店舗への指示が増える
→人手がますます足りなくなる
→品出しが追いつかなくなる
→クレームが増える
→対応に時間と精神が削られる
→退職者が増える
→人手不足でますます業務が回らなくなる
→売上が下がる
→以後、繰り返し

「退職者が増える」の補足:金だけじゃない

  この退職者が
(1)薬剤師だった場合:年収550万円とした場合、人材紹介会社への手数料が150~200万円かかり、教育コスト(40時間として)が10万円かかります。他に本社採用面談等の人件費コストもかかります。また、一般にドラッグストアへの定着率は低いので…
(2)医薬品登録販売者社員中堅だった場合:年収330万円とした場合、採用コストはまちまちですが、広告含め50万円として、教育コストが6~7万円かかります。本部採用コストは同様です。
(3)店舗のパートナー、アルバイトだった場合:時給1,000円として、採用コストは地域によってまちまちですが、平均10万円とします。教育コストが4万円です。

 さて、この時点で退職者が出ることでの経費ロスは大きいのですが、もっと大きな問題は「会社を信頼できなくなる」ことです。
 社員であれば、同業他社へ転職した際に評判が伝わり、より中途・新卒採用が難しくなります。
 パートナー、アルバイトは、地域の住民です。近隣に競合があるなら他店へ流出するでしょう。本人・家族・友人…そして、その方の友人は

そのドラッグストアに就職するでしょうか?

状況変化③マスコミがより一層危機感を煽る

 一昨日から今週末のスーパー店頭をみれば、一目瞭然です。解説は省きます。

2020年3月26日 神奈川県横浜市のスーパー レジ80分待ち

解決策

 ドラッグストアをはじめとした小売業本部が今やることは、
 まず、短期の売上を上げようとしないことです。
  チラシなど販促をやめるのは当たり前です。しかし、いまだに販促を打っている会社も散見しますね。
 次に、店舗応援やマスク・アルコール対応の現場負荷を助けた方が良いです。本部スタッフが現場の苦労を知る絶好の機会でもあります。

note(ノート)

 カテゴリーサポートリーダーという仕組みが前職ではありました。  大手スーパーセンターであるトライアル社のカテゴリー…

 企業によっては本部のリモートワーク方法を会議で話して、一部実行しているそうです。
 しかしながら、 経営陣が毎日目にする本部社員の何十倍もの店頭で日々接客にあたっている社員・パート・アルバイトがいて、その方達が危機的な状況なのです。
会議している時間を圧縮して、店頭サポートをすることが全体最適に繋がると私は考えます。全体最適が成果を生むのは誰もが知っていますよね。

後はやるだけ

 その後、編集部にもリクエストが入っているということでしたので、後編として「具体的手法」の例を早速かきあげて掲載されました。

Agenda note (アジェンダノート)

 「超高齢社会」への対応にもなる 前回の記事「『マスク先着順』販売の否定で、ドラッグストアの利益と働…

 こちらも合わせてどうぞ。

最初に考えるべきこと

 ドラッグストアチェーンの店舗では、多くが夜間に物流センターから商品が納品されます。開店と同時にマスクを販売するというのは、言われた時にあるから売るという状態です。それに対して、あえて開店直後に販売しません。
 同じ人にばかり販売しないことを実現するだけならこれで十分です。この方法の調書は「腹をくくれば」すぐにできることです。
大切な優良顧客かつ働いている人が帰ってくる時間帯、
納品の品出しが終わってからシフトが厚い時間帯、
…店舗ごとになんでも良いので、売り始める時間を変えます。
 こういう状況なので、多くのドラッグストア、スーパーでチラシを止めていますが、「◯曜特売」「◯倍デー」といった定常の販促は止めていない店舗が多いです。そういった日にはマスクを販売せず、翌日に回すのも一案でしょう。
 いずれの時間からの販売でも、声の大きい人に言われて「オリコン(納品が入っているボックス)」から探し出すという非効率的な作業はなくなります。
 店舗作業を平準化することは、ドラッグストアのような小売業にとっても大変有効です。
 平準化は、作業のムラをなくすために重要な要素で、このムラがなくなることで、従業員への過負荷がなくなり、店舗の品質が安定することで多くのお客さまの期待に応えることができます。
従業員と顧客がWin-Winになるのです。

拙著『知識ゼロから育てる「事業責任者」のためのEC塾』(発行:翔泳社)より。平準化・標準化・やらないことを決める(Not to do)の効果は、書籍内で紹介しましたのでご興味があればご覧ください。

もちろん、この方法にも欠点はあります。解決策2以降は、Agenda note後編をご覧ください。また、4月中にも本来書く予定だった 本当にお店にとっての優良顧客を優遇する新業態について書きますので、ぜひお読みください。

行動したドラッグストア経営者:追記

 今回は、現場の騒動で疲弊している従業員および本当の優良顧客ではなく時間のある人に繰り返し販売している現状を打破するために、ドラッグストア経営陣に考え抜いて行動してほしい思いで書いたコラムです。

 その期待に答えて行動してくれた経営者がいらっしゃいます。
 サツドラHD、サッポロドラッグストアーの富山社長です。

【朗報】札幌の薬局「サツドラ」、開店前のマスク購入老人を封じる「これで会社帰りの人もマスクを買える」

 この文言もとことん考え抜いた末に出来上がったものです。現場の苦悩を考えてと推測しますが、安易に

「申し訳ございません」

という言葉を使わずに、ご理解を得ようというものになっています。

サツドラ掲示の全文

お客さま各位
いつもご利用いただきありがとうございます。
新型コロナウィルスの影響で、マスク・消毒液などの商品供給が追いついていなく
お客様には大変ご迷惑をおかけしております。
そのような中で連日、開店前からお客さまに長時間お並びいただく状態が続いています。
お並びいただいているお客さまにもご苦労をおかけしている事と、
朝にお並びいただけないお客さまはずっと買えないという事から誠に勝手ながら、
当店では、
マスク・消毒液などを「開店時」に販売する事を、中止させていただきます。
商品の入荷状況などは本部で一括してる上、変更する可能性もある為、
販売日や販売時間に関しましてお答えしかねますのでご了承ください。
まずは朝の開店前の混乱を無くしていく事。
お並び頂けないお客さまにも購入の機会を設ける事を目的に、
このような対応となります事を何卒、ご理解いただきたいと存じます。
株式会社サッポロドラッグストアー

他のチェーンでも

https://twitter.com/happysakukei/status/1246225077311385601

といった例が出てきていますが、個店店長(もしくはエリアマネージャー、ブロック長等々の呼称の店長の上司)判断のようです。

 もちろん、販売時間帯等々は個別対応が発生して当り前ですが、企業としてのスタンスをしっかり持つことが従業員が安心して働くためには欠かせません
 その点で、サツドラの対応は現時点で他と違うレベルのものです。

追記

 ウエルシアも対応したようです。「ウエルシアグループ」というハックなども含む表記であることから、本部発信ですね。
※状況は店舗により異なるので、人員等の関係で朝から販売する店もあるでしょう。

https://twitter.com/mitt_nico/status/1247687680432828416/photo/1

追記2

 スギ薬局も対応したと記事になりました。

スギ薬局マスク記事
https://www.j-cast.com/2020/04/10384053.html

そして、世間への告知効果

 Yahoo!ニュースの国内TOP記事にもなりました。
 ここで大事なのは、サツドラが自分達で考え抜いて行動したから、世論が多少でも動いて他社が追随したということです。
 私が発案したなかでも最もシンプル(早く出来る&本社の手間が少ない)な方法ですが、サツドラさんが行動しなかったらこうはならなかったでしょう。
 「自分達が」「考えて」「行動する」ことが最重要です。
 従業員も顧客も幸せに近づくことが企業の幸せに繋がりますよね。違いますか?!

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200410-00129912-fnnprimev-soci

アフターコロナ:マーケティングは、どう変わるのか? #特別編(4/23追記)

マスクの開店時販売を中止した大手ドラッグストア「サツドラ」英断の背景

 Agenda note編集部からサツドラ富山社長と取材を受けて欲しいという依頼がありましたので、オンラインで対談っぽい取材に参加しました。
 元々活用していた社内チャットでの全社方針決定等、異業種含めた小売業の方に参考になる記事になったと思います。ぜひお読みください。
 異業種でも参考になるのは、
・チャットで社内調整をすることで迅速な決定が出来た。
・店舗向けの電話をコールセンターに自動転送し、コールセンターでは非通知を受電できないようにすることで、暴言客への対抗策となった。
・開店時のマスク販売中止という新しい方法を一部店舗で行い、ABテストをすることで、新しい方法のメリット・デメリットを明確化して、全社意思統一が出来た。
・店頭掲示、Webサイトといった従来型の一方向発信だけでなく、SNSやアプリで繋がることで双方向のコミュニケーションが出来ることが支持された。
 というあたりですが、社内チャットやコールの仕組みを普段から使いこなしているからこそ迅速に出来た取り組みだと考えます。見習う前提として、今までのやり方を変えるということを習慣化するのが重要だと思います。

取材で一番言いたかったこと

 各種リサーチをすると分かるのですが、ドラッグストアは他業態に比べて、同業他社との差別化ができていないです。
 各チェーンのオーナーは「ヘルス&ビューティーに特化している」や「社員教育が優れている」といった魅力的に見える情報を発信していますが、どのドラッグストアも似ています。
 実際はお客さまからの評価はどこも大差がなく、「家から近いお店がいい」「安ければもっといい」という状態であり、そういった企業が上位になります。
 ところが、今回SNSを見ていると「今回の取り組みに感動した。これからはサツドラさんでしか買わない」みたいな人が出てきていました。サツドラのように、きちんとお客さまと向き合って、真摯に情報発信していることで、初めて同質化するドラッグストア業界のなかで各社が差別化できるのではないでしょうか。
 
 ドラッグストアに限らずですが、こういう危機のときこそ、真摯にお客さんに向き合うことが企業にとって大事なんだと改めて感じた、素晴らしい取り組みだったとつくづく思います。

Agenda note (アジェンダノート)

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 ヤスイ薬局池田社長のツイートで、ダイソーのA2額縁で使われているアクリル板500円をお客さん、スタッフの感染防止に使う例がありました。
 これはネイルの店舗で使うということですが、設置方法次第では、薬局の投薬台などでも使えるかもしれません。

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