自分では当たり前の話でも、知りたいという人が多いものです。
以前、書いたプロジェクトマネジメント実務の投稿が投稿時に意外と読まれてましたので、マネジメント以前に最重要なことを今回は書きます。
「社内で〇〇プロジェクトを立ち上げる!」とトップが決定し、各部署から精鋭が集められて、「さぁ、やるぞ!」と息巻く。 が、半年後には何の成果も残さないまま、自然消滅… これって、実は業種を問わず多くの会社で起きていることなんです。 いろん[…]
プロジェクトが成功するために最も重要なこと
今回はプロジェクトを始める前に最も重要なことを一つだけ挙げます。
結論を言ってしまうと、
目的と手段を明確にすること
です。
………当たり前ですね。「はい。解散。」
だったら、わざわざブログ書きません。Twitterならともかく。
さて、あなた(または上司他社内外の誰か)が立ち上げるプロジェクトの目的は本当に明確ですか?
様々な会社と関わっている私の感覚でいうと、様々な会社のプロジェクトで目的が明確かつ間違いではないのは半分くらいです。
そして、もっと厄介なのは「目的だけ明確」で上手く行かないプロジェクトの存在です。
そのプロジェクトの目的はあってますか?
目的とは
あなたは「目的」という言葉を正しく説明できますか?
大辞林第三版によると
①実現しよう、到達しようとして目指す事柄。めあて。 「 -を達成する」 「 -をとげる」 「本来の-にかなっていない」
② 〘哲〙 行為において目指すもの。それのために、またそれに向けて行為が行われ、実現が求められるもの。 ⇔ 手段
です。
日本大百科全書によると
手段との相関概念で、広くは事象一般、狭くは人間の行動がそれへの到達またはその実現のために向かうことを予定される目当て、目標、理想をいう。
手段と目的の相関性は、たとえば健康は幸福という目的の手段であるが、さらに適当な運動、睡眠、節制などは健康を目的としてその手段となる、ということで説明される。
あらゆるものがその手段となり、それ自体はもはや他のものの手段とならない目的は究極目的だが、その可能性や存在は古来の形而上(けいじじょう)学の課題である。
目的の最初の詳細な哲学的探究はアリストテレスにみられる。以下略
目的の到達点を間違えてはいけない
目的を言い換えると「行動が目指すべき未来」とも言えるのではないでしょうか。
プロジェクトの目的は「プロジェクトをやり抜くことにより、どのような未来を実現したいか」とも言えます。
単に〇〇システム(ERPやらCRMやら何でも良いですが)を導入することはプロジェクトの目的ではありません。
目的と手段を混同しない方法
さて、本題です。ここでも結論を先に書きます。
最初にODSCを定義する。
以上、解散。
というほど、当たり前のことではないと思いますので、解説します。定義するのはO,D,SCの3つです。
目的(Objective)
プロジェクトの「目的」のことです。
前述したとおり、プロジェクトであれば「プロジェクトをやり抜くことにより、どのような未来を実現したいか」です。
システム開発プロジェクトがあったとします。「システムを完成させること」は、目的ではありません。「システムを完成させるなどのありとあらゆる手段により、どんな未来を実現したいか」を明記したものが目的です。
例えば、
「M&Aで自社が5倍の規模になっても、十分な情報処理能力を持ち社員の生産性を高めること」
「顧客の興味関心を一元管理できることにより、一人ひとりの顧客に合わせた最高のおもてなしをご提供する」
といったものが目的です。
成果物(Deliverable)
プロジェクトの「成果物」のことです。
新しいシステム構築という手段で実現する目的ならば、システムそのものやシステムのマニュアルが成果物といえます。
成果物を明確に定義するためには、まずは目的が正しく定義されていることが必要不可欠です。
そして、ここが肝心なことですが、成果物を明記することは、手段を明文化することに他なりません。成果物を明記することで、手段の目的化を阻止するわけです。
成功基準(Success Criteria)
プロジェクトの「成功基準」のことです。
新しいシステムを構築するプロジェクトであれば、
「規定したOS、端末で正常表示される」
「セッションエラー発生頻度が、1,000回に1回以下である」
「ユーザー数が1,000万人に達しても、0.◯秒以内に処理が完了する」
といった目的を達成する手段の品質基準であることも多いです。
顧客系システム(アプリ、ECなど)であれば、顧客数・満足度などが成功基準となります。
プロジェクトの目的によっては、定量的でない定性的な成功基準も当然発生しうる。また、定量指標に関しては、必ずしもプロジェクト初期に確定する必要はないし、プロジェクトの進行に合わせて基準を変更することは問題がありません。
肝腎なのは、実行する前に成功基準を決めておくことです。
副次的に「ところで、あのプロジェクトってどうだったの?」という部外者の雑音を排除することも可能となります。
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プロジェクトが動き出してからのプロジェクトメンバーは、通常業務に加えて課されたプロジェクトのタスクを一つ一つ終わらせることで多忙となります。
自然と視点が目の前のタスクだけに向きます。また、忙しくなって気が焦ったり、プロジェクトの進捗が思わしくなかったりすると、人には妥協が生まれます。
メンバーの大勢が妥協したプロジェクトと、目的に向かってブレなく遂行されたプロジェクトのどちらが目覚ましい結果を生む可能性が高いでしょうか?
目的と成果物が明文化されていることで、目的を見失うことがなくなります。
ODSCを最初に定義することで、プロジェクトメンバーの仕事の目的と手段を明文化して共有する。
達成基準が事前に明確化されていることで、妥協が発生しにくくなる。
プロジェクトのゴールであるODSCがしっかりとできたら、あとはプロジェクト計画を立て実行するだけです。
ODSCの例
私が前職時代にダイヤモンド・リテイルメディア社の講演で作成した公開情報を以下に添付する。この例のように、戦術レベルでは、必要資産(ヒト・モノ・カネ)も明文化するほうが望ましい。
オムニチャネルを活用した全体最適の統合マーケティング戦略
顧客接点拡大のオムニチャネルからIT駆使して顧客価値の最大化に挑む _ ダイヤモンド・リテイルメディア・カンファレン…
戦略ODSC例:オムニチャネル戦略
戦術ODSC例:商品情報の整備
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