「Amazon、処方薬ネット販売に参入」への見解

結論

まず、このコラムをGPT-4に読ませた結論を記載します。

Amazonが処方薬ネット販売に参入し、電子処方箋を前提としたオンライン服薬指導プラットフォームを展開を検討しています。大手も含めた薬局と連携し、アマゾンの配送網と個人健康データ活用を視野に入れています。中小薬局には新たなビジネス機会がもたらされる一方、オンライン服薬指導企業には厳しい状況が予想されます。

アマゾンの参入により、日本の医療デジタル化遅れが解消されるかどうかは不透明ですが、消費者に身近なアマゾンの処方薬販売がオンライン診療・服薬指導のニーズを高める可能性があります。しかし、店頭販売を重視する日本の調剤薬局ビジネスの転換点になるかは時流や複数要因によって決まるでしょう。

記載の経緯

以前、「Amazon薬局が驚異にならない理由2つ」というコラムを書きました。
9月5日〜6日にかけて日経さんが「Amazon、処方薬ネット販売に参入」という日本でも同種サービスを始めるかのような記事を複数掲載したため、このコラムへの流入が増えています。

というわけで、日経さんの以下の記事を一通り読んでの見解を書きます。

Amazon、処方薬ネット販売に参入 中小薬局と患者仲介【イブニングスクープ】2022年9月5日 18:00 

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA179IU0X10C22A8000000/

「門前薬局」に転機 Amazon、処方薬ネット販売参入 2022年9月5日 21:00

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC26BNL0W2A820C2000000

「Amazonエフェクト」国内薬局でも? 配送網カギに 2022年9月6日 5:00

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC053F60V00C22A9000000

「Amazon、処方薬ネット販売に参入」関連記事概要

まず、各記事は「匿名関係者」への取材に基づくことと推測が混ざっているので、分解してみます。

1.アマゾンが検討している可能性の高いこと

・米アマゾン・ドット・コムが日本で処方薬販売への参入を検討している

・中小薬局と組み、患者がオンラインで服薬指導を受ける新たなプラットフォームをつくる方向

・国内で電子処方箋の運用が始まる2023年に本格的なサービス開始をめざしている

・当面はアマゾン自体が薬局を運営して直接販売するわけではなく、在庫などは持たない

・アマゾンは今後、国内の中小の薬局を中心に参画を呼びかけ、システムを提供する

・患者は診察後、電子処方箋を発行してもらい、アマゾンのサイト上で薬局に申し込む

・薬局は通常通り、電子処方箋をもとに薬を調剤し、患者にオンラインで服薬指導する。その後、アマゾンの配送網を使って薬局から薬を集荷し、患者の自宅や宅配ロッカーに届ける仕組みを検討している

・アマゾンのシステムでは健康データの利用を服薬指導などにとどめる方針

・アマゾンは複数の調剤薬局大手チェーンに声をかけていた

2.記者推測要素の強いこと

・自宅との近さなどをもとに、アマゾン側で患者のニーズに合わせた薬局を紹介するとみられる

・薬局からアマゾン側にはシステム利用料などを支払うとみられる

・調剤薬局大手各社はアマゾンの要請に応じていないもよう。アマゾンへの警戒感があるとみられる

3.記者による予想・感想

・アマゾンと同様のサービスは、先行してオンライン服薬指導システムを提供する各企業なども提供可能だが、多くの利用者を抱えるアマゾンとの競争を迫られる

・現在、薬局が薬を届ける場合、即日配送で300円程度かかるケースもある。大量の注文をさばくアマゾンは、配送業者の大口割引を利用するなどし、配送料を低く抑えられる可能性もある

・中小薬局にとってはアマゾンに参加することで業務のデジタル化を進めることができ、新たな顧客を見つけるビジネス機会が得られる

・消費者にとって身近なアマゾンの処方薬販売参入をきっかけにオンライン診療・服薬指導のニーズが高まれば、海外に比べて遅れている医療のデジタル化の後押しになる

・薬局と組み処方薬のネット販売にも進出することで、日用品や雑貨などさらなる「ついで買い」も促すことができる

・店頭販売を重視する日本の調剤薬局ビジネスの転換点となる

郡司見解

電子処方箋を前提としたオンライン服薬指導を受けるプラットフォームを目指す

タイトルや文中に中小薬局と組みと記載されているが、アマゾンが大手に声かけしたとの記載もあり、大手が対象外というわけではありません。文字通り、プラットフォームビジネスで利益を目指すのでしょう。

Agenda noteの連載で記載したようにオンライン服薬指導を体験して、一番残念に感じたのは薬を受け取るまでのリードタイム(この時は発送まで6日かかった)です。この要因の1つは服薬指導を先に済ませても、患者が郵送した処方箋原本が届かなければ調剤が開始されないところにあります。電子処方箋を前提とするのは現実的な判断と考えます。

https://agenda-note.com/retail/detail/id=5228

アマゾン自体は薬局を運営しない

あくまでも「当面は」ということだと思います。
アマゾン自身が薬局はやらないという体を取ることで参画者を増やし、十分にプラットフォームが成立したところで自社参入することで、プラットフォームが成功したら必ずやってきます。

これは、2013年9月にアマゾンが出品者の医薬品販売を開始した時と同じことです。
この時、アマゾン広報は『自社でも医薬品を取り扱う可能性については「現在のところ全く検討しておらず、その可能性も考えていない」』とコメントしましたが、数年後には売れ筋から順番に自社での販売を開始しました。

アマゾンが医薬品の販売を国内で開始 第2類医薬品を約2000品目、出品者が展開:アマゾンジャパンは9月24日、運営する「Amazon.co.jp」内で、医薬品の販売を開始した。アマゾン自らは販売せず、薬剤師が顧客からの問い合わせに応じることのできる出品者が販売する。

https://webtan.impress.co.jp/e/2013/10/10/16214

極めて高確率で、この時と同じことを仕掛けるでしょう。
前職時代この件と第1類医薬品販売絡みではアマゾン・ジャパンにかなりの裏切られ方(特に詳細書けませんが第1類医薬品)をしたものです。その後、Amazon Prime Nowでは提携したりしたので、海外プラットフォームとの付き合いはそういうものと考えています。

アマゾンの配送網活用

「その後、アマゾンの配送網を使って薬局から薬を集荷し、患者の自宅や宅配ロッカーに届ける仕組みを検討している」→ただの宅配便集配であって、アマゾンの配送網()とやらが魔法の🧹を使ってない以上、大した差別化要素になりません。
シェア獲得用キャンペーン送料(無料)をやったとしても、原資がないので、シェア獲得したら値上げします。

PHR(個人の健康データ)活用

「アマゾンのシステムでは健康データの利用を服薬指導などにとどめる方針」→方針ではなくて、法令上、当たり前のことです。

郡司予想

日本版アマゾン薬局システムが上手くいくと苦しくなるのは誰か?

講演等で名刺交換した社長も多いですし、世間的知名度が高くないので社名をあげませんが、「先行のオンライン服薬指導システムを提供する各企業」にとっては、非常に厳しい状況となります。
オンライン診療でシェアを取れれば、それと連動してのオンライン服薬指導という可能性もありますが、オンライン服薬指導中心で事業計画を立てていたところは(現在赤字なのはもちろん)資金調達も非常に厳しくなります。

中小薬局メリットはあるか?

「中小薬局にとってはアマゾンに参加することで業務のデジタル化を進めることができ、新たな顧客を見つけるビジネス機会が得られる」→はい。アマゾン自身が薬局をやるまでの数年は…

日本の医療デジタル化遅れ解消になるか?

「消費者にとって身近なアマゾンの処方薬販売参入をきっかけにオンライン診療・服薬指導のニーズが高まれば、海外に比べて遅れている医療のデジタル化の後押しになる」→そんなことにはなりません。
理由は以前書きました。

ヘルスケアのリテールDX 第1回 日本でオンライン診療・服薬指導が普及しない理由

https://diamond-rm.net/technology/93921/

医療用医薬品と日用品のついで買い促進はない

他社薬局から医療用医薬品を「出荷」するときにどのように同梱するのでしょうか?物流知識がわずかでもあれば、そんなことは考えられません。また、米国でそういうサービスをやっていない理由は以前書きました。

店頭販売を重視する日本の調剤薬局ビジネスの転換点となる?

米国でもメールオーダーは2割程度なので、日本だけが店頭中心というわけではないですし、こういった変化は単一要因ではなく、時流のなかでおこります。
あくまでも記事に重要性を持たせる意図にすぎないでしょう。

お読みいただき、ありがとうございました。
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