健康食品の効果をうたう広告はなぜ薬機法違反?薬剤師が条文で解説

薬機法68条違反の広告事例

 健康食品が「免疫力アップ」「ウイルスに負けない体に」などと広告すると、薬機法では「承認を受けていない医薬品の広告」とみなされ、第68条に違反します。病気の治療・予防や、体の機能への作用をうたった時点で、食品でも法律上は医薬品として扱われるからです(薬機法の概要は薬機法とは)。

 この記事を書いたのは2020年の新型コロナウイルス騒動のときです。「健康食品」を中心に、薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律、旧薬事法)に違反する広告表示をいっそう多く見かけるようになりました。薬剤師として、条文の読み方を解説しておきます。

目次

「〇〇県の水道水」をパック詰めして「健康食品」と名付けても違法ではない

 厚生労働省は「健康食品と呼ばれるものについては、法律上の定義は無く、広く健康の保持増進に資する食品として販売・利用されるもの全般を指しているものです。」と説明しています。つまり、「食品」を販売する事業者が自社で「健康食品」と呼べば、それが健康食品です。
 極論すると、「〇〇県の水道水」をパック詰めして「健康食品」と名付けても違法ではありません。いわゆる「健康食品」は自称に過ぎません。

健康食品の区分:トクホ、栄養機能食品、機能性表示食品、その他

 そのうち、国の制度としては、国が定めた安全性や有効性に関する基準等を満たした「保健機能食品制度」があります。 今回は保健機能食品か自称健康食品かに関係なく医薬品以外の全てのものが対象の話です。

※保健機能食品制度は、食品の機能を表示できる制度です。特定の保健の目的が期待できる(健康の維持及び増進に役立つ)食品は、「おなかの調子を整えます」「脂肪の吸収をおだやかにします」などの機能を表示できます。国の定めた栄養成分は、一定の基準を満たせば、その栄養成分の機能を表示できます。

なぜ「健康食品は免疫力アップになる」が違法なのか

 いわゆる「健康食品」を含む食品など、医薬品(含医薬部外品、厚生労働大臣の指定する成分を含有する化粧品)以外の物について効能効果を謳えないのは、薬機法68条によるものです。

 ここでは「未承認医薬品の効能・効果に関する広告はしてはいけない」ということが書かれています。

薬機法68条とは

何人も、第十四条第一項、第二十三条の二の五第一項若しくは第二十三条の二の二十三第一項に規定する医薬品若しくは医療機器又は再生医療等製品であつて、まだ第十四条第一項、第十九条の二第一項、第二十三条の二の五第一項、第二十三条の二の十七第一項、第二十三条の二十五第一項若しくは第二十三条の三十七第一項の承認又は第二十三条の二の二十三第一項の認証を受けていないものについて、その名称、製造方法、効能、効果又は性能に関する広告をしてはならない。

[e-Gov法令検索 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律 2026年11月3日確認 https://laws.e-gov.go.jp/law/335AC0000000145]

 (健康)食品は医薬品ではありません。
 それなのに、なぜ「未承認医薬品の効能・効果に関する広告はしてはいけない」に引っかかるのでしょうか。
 ここが分かりにくいところです。薬機法に限らず、法律は全体の知識がないと読めません。プログラミングで命令を一つだけ覚えても、プログラムを書けないのと同じです。

 さて、薬機法2条1項に「医薬品の定義」があります。

薬機法2条1項とは

第二条 この法律で「医薬品」とは、次に掲げる物をいう。
一 日本薬局方に収められている物
二 人又は動物の疾病の診断、治療又は予防に使用されることが目的とされている物であつて、機械器具等(機械器具、歯科材料、医療用品、衛生用品並びにプログラム(電子計算機に対する指令であつて、一の結果を得ることができるように組み合わされたものをいう。以下同じ。)及びこれを記録した記録媒体をいう。以下同じ。)でないもの(医薬部外品及び再生医療等製品を除く。)
三 人又は動物の身体の構造又は機能に影響を及ぼすことが目的とされている物であつて、機械器具等でないもの(医薬部外品、化粧品及び再生医療等製品を除く。)

[e-Gov法令検索 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律 2026年11月3日確認 https://laws.e-gov.go.jp/law/335AC0000000145]


健康食品・食品等で効能・効果を宣伝してはいけない理由

 2号「疾病の診断、治療または予防」、3号「身体の構造又は機能に影響を及ぼす」ことを効能・効果としてうたうと、その物はこれを目的とした物になり、薬機法の上で医薬品として規制の対象になります。
 当然、薬機法68条「未承認医薬品の効能・効果に関する広告はしてはいけない」に該当するわけです。

 このあたりは薬機法第66条および67条も関連しますので、引用しておきます。

薬機法第六十六条:誇大広告等

何人も、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品の名称、製造方法、効能、効果又は性能に関して、明示的であると暗示的であるとを問わず、虚偽又は誇大な記事を広告し、記述し、又は流布してはならない。
2 医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品の効能、効果又は性能について、医師その他の者がこれを保証したものと誤解されるおそれがある記事を広告し、記述し、又は流布することは、前項に該当するものとする。
3 何人も、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品に関して堕胎を暗示し、又はわいせつにわたる文書又は図画を用いてはならない。

薬機法第六十七条:特定疾病用の医薬品及び再生医療等製品の広告の制限

政令で定めるがんその他の特殊疾病に使用されることが目的とされている医薬品又は再生医療等製品であつて、医師又は歯科医師の指導の下に使用されるのでなければ危害を生ずるおそれが特に大きいものについては、厚生労働省令で、医薬品又は再生医療等製品を指定し、その医薬品又は再生医療等製品に関する広告につき、医薬関係者以外の一般人を対象とする広告方法を制限する等、当該医薬品又は再生医療等製品の適正な使用の確保のために必要な措置を定めることができる。
2 厚生労働大臣は、前項に規定する特殊疾病を定める政令について、その制定又は改廃に関する閣議を求めるには、あらかじめ、薬事審議会の意見を聴かなければならない。ただし、薬事審議会が軽微な事項と認めるものについては、この限りでない。

[e-Gov法令検索 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律 2026年11月3日確認 https://laws.e-gov.go.jp/law/335AC0000000145]

 ところで、薬機法66条から68条は「広告」を制限する規定ですので、広告にあたらない表示は監視指導の対象外です。
 薬機法で医薬品等の「広告」にあたるのは、以下の3要件をすべて満たすものです。

・顧客を誘引する (顧客の購入意欲を昂進させる)意図が明確であること
・特定医薬品等の商品名が明らかにされていること
・一般人が認知できる状態であること

参考:薬事法における医薬品等の広告の該当性について
(平成10年9月29日医薬監第148号都道府県衛生主管部(局)長あて厚生省医 薬安全局監視指導課長通知)
https://www.mhlw.go.jp/bunya/iyakuhin/koukokukisei/dl/index_d.pdf

 違反した場合の措置も薬機法に記載されています。

(違反広告に係る措置命令等)
第七十二条の五 厚生労働大臣又は都道府県知事は、第六十六条第一項又は第六十八条の規定に違反した者に対して、その行為の中止、その行為が再び行われることを防止するために必要な事項又はこれらの実施に関連する公示その他公衆衛生上の危険の発生を防止するに足りる措置をとるべきことを命ずることができる。(以下略)

第八十五条 次の各号のいずれかに該当する者は、二年以下の拘禁刑若しくは二百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。(各号略)

[e-Gov法令検索 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律 2026年11月3日確認 https://laws.e-gov.go.jp/law/335AC0000000145]

 なお、記事を書いた2020年以降に、違反時の措置は重くなっています。2021年8月1日からは、虚偽・誇大な広告(第66条第1項)をした者に、対象商品の売上額(対価合計額)の4.5%を課徴金として納付させる制度が始まりました(第75条の5の2)[厚生労働省 課徴金制度の導入について https://www.mhlw.go.jp/content/000609186.pdf]。また、2025年6月1日に刑法改正で拘禁刑が導入され、第85条の「懲役」は「拘禁刑」に変わっています[法務省 法務省だより あかれんが vol.89 2025年 https://www.moj.go.jp/KANBOU/KOHOSHI/no89/3.html]。上の条文は、2026年11月時点の条文に差し替えました[e-Gov法令検索 医薬品医療機器等法 https://laws.e-gov.go.jp/law/335AC0000000145]。

 とはいえ、メーカーや小売業にとっては、罰金や課徴金よりも、世間の評判が地に落ちることのほうが大きな損失です。
 したがって、薬機法のギリギリを攻めるのではなく、法令を守った表現で売ることが望ましいです。

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