デジタルトランスフォーメーション(DX)の本質は過去の延長線上にはない

デジタルトランスフォーメーション(DX)は戦略をゼロベースで再構築するレベルの変化

 デジタルトランスフォーメーション(以下DX)は、単に「デジタルへの投資を拡大しよう…」という過去の延長線上にあるものではない。

 Transformationが本来意味するところは、見た目だけでなく特性が変わってしまうことである。
 生物学的には形質転換であり、外部からDNAを取り込んだりすることで、個体の形質が変わる現象を指す。形質転換は突然変異とは異なり,与えられた遺伝情報に従って変化は決まった方向へ進む。
 つまり、DXは
企業のゴールや方向性は不変でも、戦略・戦術に関して今までのやり方を捨てて、ゼロベースで再構築するレベルの変化
を指す。

Amazon Go 方式とセルフスキャン(スキャン&ゴ-)方式は本質的に違う

 日本は世界一高齢化率が高い超高齢社会であり、今後一層高齢化が進行する。労働力が不足することで人件費が高騰し、労働力が確保できない時代になる。
 2018年レジのない店舗AmazonGo1号店がSeattleに一般公開された。1号店は天井に約250台のカメラがあり、250枚強の陳列棚の裏には1枚16個のカメラ(つまり4千個強)があり、なおかつ7割の棚に重量センサーがついているという大規模なハード投資とそこから取得したデータを高速処理するためのシステムが必要だった。
 当初の投資額は1店舗あたり数億円とも言われている。

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 それに対し、多くの日本企業は省力化という切り口で注目した。
 そのため、Amazon Goと異なり数百万円の投資で開始できるセルフスキャン方式を採用した。セルフスキャン方式は、来店客が自らスマホアプリ等で商品をスキャンして専用レジで会計する方式である。

セルフスキャン方式先進国アメリカでは中止する超大手企業が出ている

 世界最大の小売業Walmartは店舗および来店客が自身のスマホアプリで行うセルフスキャン決済であるScan&Goを2回挑戦してやめている。
 2014年でやめた時は処理速度、店内通信電波の問題だったが、2019年にやめた原因は万引きだった。
 多くのセルフスキャン方式は万引き防止としてレシートの確認をする。ところが、1品1品精緻に確認したのでは本末転倒なので簡易なものにならざるを得ない。
 ウォルマートで当該サービスを担当した元責任者は「100品買った人が40品しかスキャンしていなかったことがある」と語っている。
 世界最大の食品スーパーKrogerが提供するScan,Bag,Goはアプリにクレジットカードを登録した顧客はチェック頻度を減らす等していた。しかしながら2019年秋に訪店した複数の知人からサービスが中止になったと聞いている。
 いずれの方式も、意図的な万引き以外のスキャン忘れが一定頻度で発生することを考慮すると、根本的な解決策にはならない。

DX設計の前に顧客体験の設計を

 これらセルフスキャン方式とAmazonGoは顧客体験の次元が違う。
 ゲート入口で身体の輪郭とAmazonアカウントとを紐づける二次元コードをタッチした後はスマホも不要になり、店内に並んだ商品を見ることに集中できる。

 Amazon Goで自分で買い物する前の私は、レジがおもてなしの核であると考えていた。
 小売業に深く関わっている人こそ、その思いは強い。

 しかし、Amazon Goを体験したことにより、私は目から鱗が落ちた。買物の主役は客であり店員は客が必要な時だけ応対してもらえればよく、買物に集中ができる場の提供こそがDX時代の小売業であるということに気付かされた。

 Amazon Goの目的は無人化・省力化ではなく、最高の顧客体験を提供することであるのが実際に買物をすると理解できる。
 何度も買物していると価格すら気にならなくなる。

 また、画像認識出来ていることは、興味を持ったが買わなかった、どの棚前で何秒迷ったということが全てデータ化されているということなので顧客理解が深まる。顧客理解が深まると、より良い顧客体験が提供できる可能性が高くなる。
 2019年にSan FranciscoとSeattleで体験した2号店以降の店舗は4千台超の棚裏カメラがなくなっており、天井カメラもオリジナル開発されていた。今後もコストが低減し続けることは間違いない。
 最終的に損益が成り立つ店舗形態になりうるかはわからないが、顧客体験にフォーカスした企業とそうでない企業のどちらがより小売業のDXを成し遂げるかは自明と考えます。目的への意識が違います。

DXは目的ではなく手段

 「手段の目的化」が起こると、ゴールを見失います。
 自社DXの目的がAmazon Goのように顧客体験価値の最大化であるのか?
 自社DXの目的が効率化による生産性向上であるのか?
 目的を見失わないことが肝要です。

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