差別化戦略で小売業が市場開拓の前にやるべき3C戦略

 取り組むべき順番は、数字順です。

1.現在、顧客に支持されていて、他社にない商品・サービス
2.自社にないが、他社が支持されている商品・サービス
3.自社、競合ともに支持されている商品・サービス(定番品)
4.生活者の支持がなくて、自社・競合ともに提供している商品・サービス
5.生活者の支持がない自社独自の商品・サービス
6.生活者に支持される新商品・サービスの開発

 経営陣や上司に「競合との差別化をしろ!」と命じられると、新商品・サービスの開発に着手したくなるものですが、ちょっと待っていただいて続きをお読みください。
 宝くじを買うよりも確実に生活費を増やす手段があったら、そちらに投資するべきですよね。

生活者(顧客)、自社、競合他社の3Cで取り組むべき集合の図

3C分析とは

 3Cをわかっている人はこのあたりは飛ばしてください。  

 3C分析とは、事業計画やマーケティング戦略を考案し、商品・サービスの重要成功要因を見出すために用いられる分析手法のことです。
 重要成功要因が備わっている商品・サービスであれば、競合に対して優位性を持つマーケティング戦略を立てることができます。
 3C分析は、1982年マッキンゼー日本支社長時代に、ビジネス・ブレイクスルー大学学長の大前研一氏が、著書『The Mind of the strategist: The art of Japanese business』で考案した戦略的三角関係が由来と言われています。

 3Cの中身は
顧客(Customer)/消費者(Consumer)
競合(Competitor)
自社(Company)
の3つですが、私は人の消費以外のシーンも大いに関連するOMO時代には「消費者」ではなく、「生活者」に注目すべきと考えます。
 ちなみに英語では「消費者」「生活者」ともに「Consumer」です。詳しくは以下をご覧ください。

消費者よりも生活者を見る必要がある

なぜ「消費者」をターゲットとしてきたか 小売に関する「客」を示す単語を並べると、消費者・生活者・顧客・ユーザーとなります。 ECなどネット主体の場合「ユーザー」が多く使われていますが、店舗中心のビジネスでは使用頻度が多くは[…]

1.現在、顧客に支持されていて、他社にない商品・サービス

 「現在、顧客に支持されていて、他社にない商品・サービス」をより多くの生活者に知ってもらう・使ってもらうのが最優先事項です。
 なぜならば、知って・使った顧客が支持しているということは、知らない・使ったことのない生活者に支持される可能性が高いからです。誰も知らない成功するかどうか博打の商品・サービスよりも確実に支持を増やせます。
 しかも、他社にない商品・サービスなので、競争優位性をより高めることができます。
 何をおいても、これが最優先です。

1.現在、顧客に支持されていて、他社にない商品・サービス
1.現在、顧客に支持されていて、他社にない商品・サービスを伸ばす

2.自社にないが、他社が支持されている商品・サービス

 2番めに取り組むべきなのは、自社が競合に差別化されてしまっている現状の回復です。
 図の②に位置する商品・サービスを取り込むわけです。

2.自社にないが、他社が支持されている商品・サービスを取り入れる
2.自社にないが、他社が支持されている商品・サービスを取り入れる

 上位メーカーA社B社C社…の競争を見ていると明白ですが、A社が〇〇という今までにない特徴の商品をリリースするという情報をいち早く察知して、B社、C社は類似特徴の商品を開発して新発売します。
 競争の激しい洗剤やアルコール飲料などで顕著です。

 また、一昔前までのコンビニエンスストアにおける商品・サービスは鈴木敏文氏時代のセブンイレブンが常に先を行って画期的なものをリリースしてきました。
 おにぎりからATM、代金収納まで、今ではどのコンビニでもあって当たり前の商品・サービスです。
 これをローソン、ファミリーマートなどの他社が素早く追随することで、大きく引き離されないようにしてきたわけです。

 D2C企業、多くに取り組む余力のない中小企業はともかく、業界シェアを争う規模の企業にとっては重要な戦略です。

3.自社、競合ともに支持されている商品・サービス(定番品)

 自社、競合ともに支持されている商品・サービス(定番品)は欠品させないことが最重要です。
 また、価格、クレンリネスで負けないなど、チェーンストアとしての基本ができているかどうかが勝負をわけます。
 都合上、番号を振りましたが、チェーンストアとしての強弱はここにあります。
 また、同じ商品・サービスであっても、入手しやすさ、使いやすさという点での差別化が可能です。オムニチャネルに本気で取り組む企業とそうでない企業の差はそこで開きます。

小売業4.0:生活者のデジタル活用の項目参照

小売業の定義 商品を販売する店舗を中心に経営している会社・個人を小売業と呼んだり、流通業と呼んだり、流通小売業と呼んだりします。 いろいろな場で講演をしていると、この区別が曖昧な方が思いの外多いので、最初に定義を説明します。[…]

未来のイメージ

4.生活者の支持がなくて、自社・競合ともに提供している商品・サービス

 財務的に余裕のない企業であれば、まずここに取り組むということも考えられます。
 不要な商品がなくなるということは財務体質改善はもちろんですが、店頭・物流のオペレーション効率を上げることになります。
 また、不要なサービスをやめることで従業員教育コストを減らすことが可能であるし、やるべきサービスに集中できることをES,CS両面で望ましいです。

4.5.生活者の支持がない商品・サービスをやめる・減らす
4.5.生活者の支持がない商品・サービスをやめる・減らす

5.生活者の支持がない自社独自の商品・サービス

 ④と同じく、やめる商品・サービスですが、競合になく自社だけにあるものは、何かのきっかけで①になる可能性があるので、先に④を優先的にやめて、店舗の棚には②③を投入または①の露出を増やすことが望ましいです。

6.生活者に支持される新商品・サービスの開発

 いわゆる新市場を開拓する。生活者に支持されるヒット商品が作れれば大きな効果を生むが、コンビニ飲料の改廃を見ればわかるように簡単ではありません。
 各企業が常に取り組むべき事項ではありますが、スーパーマーケットでいう成城石井のようにバイヤーが本気で買付に全国・全世界を探し歩く企業は多くありません。中途半端なリソースと注力で成果を出すことは難しいのです。
 少なくとも、自社デスクでメーカー・ベンダーが来るのを待っているような会社には難しいでしょう。

6.生活者に支持される新商品・サービスの開発
6.生活者に支持される新商品・サービスの開発

 ところで、D2C企業は③④⑤が少ないので、⑥への注力が重要です。それだけD2Cで大きな成功を収めるのが難しいということでもあります。

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