BOPISへのOMO投資は、小売事業者に4つ、顧客に5つのメリットがある

世界最強ホームセンターのホームデポは日本のホームセンター全て足して3倍の年商!

世界最大手ホームセンターのホームデポ(Home Depot)は年商12兆円(2019年時点)を超えます。ちなみに日本のホームセンター業界の年商は4兆円ほどですので、日本の主要ホームセンターを全部合わせて、さらに3倍した規模の世界有数の小売業です。

規模も世界小売企業ランキングでBest5に入る企業なのですが、本当に凄いのはそこではありません。

ホームセンター業界世界最高峰なのに成長理由が出店ではない

日本の主要ホームセンターでは4兆円をキープするために出店(オレンジの折れ線)が増えています。
一方、ホームデポは、この10年間年数店しか出店していません。
投資を新規出店ではなく、デジタルトランスフォーメーションに振り分けているわけです。

ホームデポは、「ANNUAL REPORT 2018」の中で以下のようにうたっています。ちなみにこのレポートで「interconnected」という単語が22回も登場します。日本語で「相互接続」です。

Delivering a best-in-class interconnected shopping experience encompasses more than our digital properties and physical store assets.
意訳すると、「 私たちは、単なるデジタル資産と実店舗資産以上の、最高に(オンラインと実店舗が)相互接続された購買体験を提供します。」

相互接続した体験:実店舗からオンラインへ、オンラインから実店舗へ(Interconnected Experience: Stores to Online, and Online to Stores)

顧客は、数年前とは違った方法で買い物をし、私たちと対話しています。私たちは顧客に(オンラインと実店舗の)継ぎ目が無く、摩擦のない相互接続を提供するために多くのステップを踏みました。

●顧客に合わせたパーソナライズメッセージ
・購入履歴活用とレコメンド。
・気象条件の変化に基づいた提案。
・マーケティング活動とオンラインおよび店内での経験を結びつけて、すべてのチャネルにわたるシームレスな一連の体験提供。

●実店舗の利便性向上
・スタッフのスマホ所持。
・オンライン注文のチェックアウトプロセスの迅速化。
・通路内およびオンラインでの製品特定と在庫確認。

●One Home Depot Supply Chain
・商品を棚、サイト、および顧客に接続するもの。
・店舗商品の98%以上を集中的に予測し、補充する在庫管理。
・店舗と顧客の両方のニーズに応えるために、200以上の物流センターに加え約2000店を便利なネットワークとして活用。

https://ir.homedepot.com/~/media/Files/H/HomeDepot-IR/2019_Proxy_Updates/HDAnnualReport2018.pdf

ホームデポは2017年度末に上記について複数年に渡って110億ドルを投資すると公表して、実行に移しています。従来の小売業であれば、店舗の新規出店に当てる以上の規模の投資額をデジタルに寄せているのです。

OMOが本気の投資目的

OMO(オンラインとオフラインを融合させること)に投資することで、ホームデポは次の3点を改善し続けています。

①顧客に合わせた最適なメッセージを送り
②店舗および自宅(オフィス)での利便性を向上させて
③顧客に便利かつ効率的な物流のネットワーク化を実現する

その結果として、ECを伸ばすのはもちろん、より財務インパクトの大きな既存実店舗の売上を伸ばすことに成功しているのです。
入口はECであり、注文商品を店舗で受け取るというBOPIS(Buy Online Pick-up In Store)比率があがることで、事業者にとっては、以下のメリットがあります。

BOPISの4つの事業者メリット

①顧客ニーズ(送料負担軽減選択肢、受取タイミングの利便性向上、在庫確保等)への対応。
②店舗に寄ってもらうことで、おおむね2割程度のついで買いが発生する。
③ECと違い、宅配費用がかからない。
④上記により、店舗のみ、ECのみの事業者に対して優位性が出る。

また、顧客にとって以下のメリットがありますので、BOPISを利用してメリットを感じた顧客はますますその店で買物をします。

BOPISの4つの顧客メリット

①(宅配受取と比べて)送料負担がない。
②(宅配受取と比べて)自分の好きなタイミングで、商品を受け取れる。
③(普通の店頭購入と比べて)事前に在庫を確保できる。④(普通の店頭購入と比べて)商品を探す時間、決済の時間が短縮できる。
⑤受取時に実物を確認し、その場で返品・交換もできる。
一例ですが、スーパーマーケットのBOPISでは、トマトは赤みが強くて、まん丸が欲しいので自分の目で選び、卵・牛乳等はオンライン注文しておくという使い分けが発生しています。
BOPISによりオンラインとオフラインが融合し、従来よりも満足度の高い買い物ができるわけです。これこそがOMOの目指すべき姿といえるでしょう。


究極の顧客視点で設計されたOMOアプリ

業態と顧客の生活→買物シーンを考え抜いた最高のOMOアプリの一つとして、年商12兆円を超える世界最大手ホームセンターのホームデポ(Home Depot)のペンキを選ぶアプリがあります。

操作の画面キャプチャーと解説で動画を作りましたので、ぜひご覧ください。

OMOアプリの動画

 40秒過ぎから、ほんの10数秒見れば、すごさがわかりますのでぜひ。

選べない、欲しい色がない、気になったときに「その場で」選べるOMOアプリ

ホームデポの店頭商品の品ぞろえは3~4万SKUあり、ペンキが全色・全容量揃っているということは、3000坪の広大な売場でもありえません。万が一あっても自分が欲しい色を探すのは不可能に近いです。
すべてのカラーバリエーションを店頭でそろえることができない限り、無駄足を踏むことになるかもしれない。多くの顧客にとってホームセンターが頻繁に行く場所ではないことを考えると、「わざわざ足を運んだのに、欲しい色と容量がなかった」というのはペンキを塗る意欲を削いでしまう残念な顧客体験です。
これを100万SKUのネット在庫と連動することで解消していることがひとつ。
もうひとつは、ペンキの禿げた場所の写真を撮影して、それを見て店頭で色を選んだけれど、実際に塗ってみたら違ったという顧客の悩みです。これがハードルになって禿げたままにしているということはあるのではないでしょうか。店員さんに相談しても、店員さんが自宅まで来て試し塗りしてくれるわけではないので難しいところです。
OMOアプリ「ProjectColor」はこの悩みを解消してくれます。

ProjectColorを立ち上げて、「Colors」のタブから「Match a Color」をタップします。すると、カメラが立ち上がるので、ペンキの塗りたい場所を撮影し、塗りたい色の箇所をタップすると、最も似ている色とそれに似た色を提案してくれます。これだけでも「おぉ!」と驚きますが、まだ続きがあります。
 色をタップすると、その色で塗った部屋のイメージ画像が出てきます。従って、リフォームのイメージをつかむのにも使えます。
 そして、1ガロン、5ガロン…という普通の商品サイズで発注して、自宅配送・店舗受取りができるのはもちろんですが、試し塗りのためにサンプルをオーダーすることも可能です。
顧客の立場で、利用シーンをとことん考え抜かないと、こういう機能は開発できないはずです。顧客の立場に立って本気で投資するからこそ、OMOを実現することで成果を出しているホームデポから小売業が学ぶ点は本当に多いです。

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