新型コロナウィルス騒動に関連して、「トイレットペーパーは中国からの輸入だから欠品する!」というデマから始まり紙類が不足状況になったのはご存知のとおりです。
トイレットペーパーがなぜ欠品したか?
事実としては、日本家庭紙工業会がプレスリリースを出したとおり、日本国内のトイレットペーパーは国内工場で生産されており、供給力・在庫ともに十分にありました。
日本家庭紙工業会からのお知らせ
2020 年2月 28 日
消費者の皆様へ
日本家庭紙工業会
日本家庭紙工業会からのお知らせ
「トイレットペーパー、ティシューペーパーの供給力、在庫は十分にあります」●トイレットペーパー、ティシューペーパーについては殆どが国内工場で生産されており、新型コロナウイルスによる影響を受けず、現在も通常通りの生産・供給を行っております。また原材料調達についても中国に依存しておらず、製品在庫も十分にありますので、需要を満たす十分な供給量・在庫を確保しています。
●現在、一部地域では一時的に購入しにくい状況となっておりますが、物流が整い次第、消費者の皆様のお手元に届くようになります。どうぞご安心ください。
このお知らせは、経済産業省なども告知による認知拡大を行ったため、ご覧になった方は多いと考えます。
それでも、欠品した原因は何か?
総論として、SNSで出回ったデマよりも、デマを否定する投稿を支持する人が多かったです。日経新聞の記事によると、2月中旬からトイレットペーパーの販売は伸びていますが爆発的に売れ始めたのは2/27からです。ちょうどこのタイミングで何が起きていたかというと、デマを否定する投稿の拡散(リツイート)が急激に伸びたタイミングでした。
このような状況になったスタートは、マスコミが一部店頭の欠品状況を取り上げたことです。視聴が伸びたこともあり、さらに欠品状況を報道()しようという動きになるのはいつものことです。
ここでSNSでのデマが発生しました。ただし、デマそのものを目にした人もそれを信用した人もどちらかというと少数派です。
デマを信じない人の方が多かったのに、結果として、欠品が激しくなった。なぜでしょう?
デマを信じない(正しい判断ができる)人は、デマを否定する投稿を支持します。SNSで支持した人は正しいと判断した情報を拡散します。これがデマそのもの以上に多くの人の目に触れます。
目にした人の中には、「トイレットペーパーが国外生産で供給不足になるという情報はデマである」ことを信じつつも、デマに騙される人もいるはずと考えます(実際にいますので、当然ですね)。そういう人がたまたま品薄なトイレットペーパーを目にした時に、「まだあるけど、一応買っておくか…」という行動を取るのも自然なことです。
結果として、下図のような因果関係で、全国的な欠品状態となったわけです。
イオンの一部旗艦店でトイレットペーパーが大量陳列
イオンのトイレットペーパー大量陳列、実現の舞台裏 製造・物流・販売に全力で「デマ鎮静化」目指す
という記事では、下の図でいう緑の矢印のトラックが不足しているということで、イオンがトラックを自身で回して店舗まで配送したということです。
このケースで、トイレットペーパーを小売店舗に運ぶコストがどのくらいかかるのかという試算をしてみます。
トイレットペーパーを店舗に届けるコスト(まとめた場合)
通常の小売店への配送は都市部・住宅地は2t車が多くなります。郊外は4t車が多いです。こちらはまた試算するとして、イオン東雲店のような大型店であれば4t、10t車が配送していることでしょう。ここではより一般的な4t車での配送で試算します。
Hacobu料金シミュレータ(配送マッチング)
を参考に、センターがどこにあるかわかりませんが、記事では関東とあるので仮に、埼玉県久喜市から配送したケースで試算すると、4t車で28,600円、10t車で40,100円です。
http://www.mlit.go.jp/common/001272777.pdf
によると、2t車で積載量は120ケースほどということなので、この記事の場合、400~600ケースということで、4t車2台480ケース運んだものと試算します。
①配送:28,600円×2台=57,600円
②納入個数:480ケース×8(ケース入数)=3,840ケ
①÷②=16円
通常、ドラッグストアやGMSでのトイレットペーパー粗利益額は数円~数十円ですので、今回348円で販売しているトイレットペーパーを自社でトラック手配して店舗に届けるというケースは赤字ではないと推察します。
品薄状況のなかでの欠品させない演出は、宣伝効果、イオングループの信頼感という点で大きな効果を得たケースだと思います。
なお、「赤字じゃないなら他でなんでやらないんだ!」という声もあるかと思いますが、正しくは
出来ない
のです。
イオン旗艦店と同じことが他では出来ない理由
1.納入先が小売物流センターではなく、個店配送だから
小売業の物流センターは納入するメーカー、卸から運営費をもらうことで成立しています。
紙類はサイズが大きいため、センター利用費が大きくなり、店舗に直接届けるという状態が長年つづいています。
2.大型トラックが店舗に回れないことが多い
都市部、住宅地などでは10t車はもちろん、4t車でも配送できません。必然的に2t車の利用地域が多くなります。2t車には120ケースほどしか詰めないので、仮に348円で小売しているトイレットペーパーの納入価が330円としても307,200円の収益です。1日2~3万円の配送コストが捻出できるかどうかそもそもギリギリの価格なのです。
それでも、1日に卸倉庫から数往復出来れば、収益を上げることが出来るのですが、実際はそうはいきません。
3. 小規模店が多いから
昔と違い、小売店舗が増えていることと消費低迷で1店舗あたりの販売数量は年々低下しています。また、小型店舗のバックヤードは狭く、紙類を在庫するスペースも多いとは言えません。仮に1店舗平均10ケース紙類が納品されるということで試算すると、2t車は12店舗回らなければならないわけです。
駐車に関しても年々厳しくなっていますし、夜間配送も近隣住民のクレームで制限される店舗が多いですので、卸倉庫と往復するのは年々困難になっています。
今回のイオンでの取り組みは素晴らしいですし、イオンのような大型GMSならではの強みを活かしたものです。
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