仕事、作業、業務の違い:仕事は目的を実現し、目標を達成する手段

仕事、作業、業務の違い

あなたの会社およびあなた自身は、仕事、業務、作業という単語の使い分けは出来ているでしょうか。

「仕事」は、目的を実現することで目標を達成する手段

仕事とは、小学館デジタル大辞泉によると、

1 何かを作り出す、または、成し遂げるための行動。「やりかけの仕事」「仕事が手につかない」
2 生計を立てる手段として従事する事柄。職業。「将来性のある仕事を探す」「金融関係の仕事に就く」「週の半分は自宅で仕事する」
3 したこと。行動の結果。業績。「いい仕事を残す」
4 …

デジタル大辞泉

とあります。

「何かを作り出す、または、成し遂げるための行動」は目的を実現することで目標を達成するための手段といえます。また、「生計を立てる手段として従事する事柄」というのは、まさに「生計を立てる」という目的を実現する手段です。

仕事は目的と目標を実現する手段とも言えそうです。

目的と目標を実現するためには、まず必要な情報を集め、集めた情報を分析する必要があります。

次に、情報を分析して出てきたイシューを解決するプランを行い、実行します。

実行後は、結果検証を行い、次のプランを考えます。

特にイシューを導き出すプロセスには知恵が必要であり、知恵をつけるには知識を使って創意工夫するトレーニングが必要です。アスリートが計算されたトレーニングで自らの肉体を鍛え上げるように、ビジネスパーソンは知識を使って仕事をすることで、知恵を鍛え上げるわけです。

「作業」は、仕事を構成する要素

作業とは、仕事を構成する要素であり、目的に対して複数の動作を順序立てて組み立てたものです。

作業に関しては、判断が不要になる粒度に分解して手順と基準を明確にすることで誰でも同じ品質で出来るようになることが望ましいです。

目的・目標とそれを達成する手段である仕事、仕事と作業の関係

ここまでを図にすると以下のようになります。

目的、目標と手段である仕事。仕事を構成する作業の関係

目的、目標と手段である仕事。仕事を構成する作業の関係

「業務」は、思考→判断→作業の繰返しを日々継続して行う仕事

業務とは、職業や事業などに関して、日々継続して行う仕事のことです。

業務は、思考→判断→作業の順番で行われる。発生した課題について、まず思考し、思考の結果に基づき判断を行い、判断に最も適した作業を遂行していくことで行われます。
同じ業務を経験することの繰り返しで、思考→判断を繰り返すことで、判断力という能力が成長します。

ポータブルスキルを磨くのに必要なこと

以下のAさんとBさんのどちらがより成長しそうでしょうか。

Aさん「前と似たケースだから、前と同じでいいや…」
Bさん「前のアレと似たケースだけど、前提条件は同じだろうか?前回の判断よりも良い方法はないだろうか?…」

Aさんのように流れ作業で業務を行っている場合、思考は浅く、判断も浅いものになり、判断力は成長しません。今やっている業務の繰り返しはできるかもしれませんが、それを他の業務に活かすことは難しいでしょう。

Aさんがその業務で獲得できる能力は、その業務を行うスキルだけであり、同種の業務を行う転職を行った場合、前提条件や判断基準が異なると通用しなくなります。あくまでも同じ場所で同じ業務を行うスキルに過ぎません。

一方、Bさんのように、思考と判断を繰り返すことが習慣づいている人は誰がやっても同じと言われている種類の業務でも改革を起こすことが出来ます。同時にBさんは経験を積むことで能力を高めていることになります。

この業務で獲得した能力は、他の業務でも活かすことができるポータブルスキルと呼ばれるものです。ポータブルスキルは「持ち運び可能な、仕事をする上で重要な能力」です。

「より良い方法はないだろうか」と考え抜くことで、発想力、分析力といった対課題力を高めることで出来ます。
新たな判断を行うことで、決断力などの対自分力が高まりますし、判断の結果を人に説明し、受け入れてもらう対話を行うことで、説得力、傾聴力などの対人力を高めることが出来るわけです。

ポータブルスキルを鍛え続けることで、徐々に他の職種や業種でも活躍することができるようになります。

知識・経験と能力の関係性
知識・経験と能力の関係性

知識、経験、能力の関係を図にすると、上のようになります。

能力を高めるためには、経験の中身と行動が重要であり、知識は経験に必要なものを習得したに過ぎません。

能力の中には、複数の経験から得られるものもあります。いずれにせよ、業務経験において、思考と判断をいかに深くできるかということで能力の質が変わってくるものと考えます。

能力のうち専門能力はこちらで解説

※2020年3月30日にリライトしました。プロフェッショナルが持つ専門能力 ここでいう専門能力とは、各部門および特定領域に関わるプロフェッショナルとしての専門職幹部としての能力をさします。 プロフェッショナルとは、[…]

市場価値とは

市場価値とは

経済学で同一生産部門の商品全体の平均価値。市場での競争によって決定され、市場価格が成立する基礎となる。社会的価値ともいわれる。また、一般に、世間での価値をいう。

精選版 日本国語大辞典

市場(Market)における価値は市場が決定します。
商品の価値自体がどんなに高くても、それが市場で知られていなければ、市場価格は同種の商品と同等になります。
また、価値が高い商品が多く存在し、入手性が高くなり需要を上回ると、相対的に価格は低下します。

市場(Market)は常に変化し続けています。
常に変化する市場が今、何を求めているか?これから何が求められるか?を知って、考えた上で企業活動を行い、自社の商品やサービスに対する顧客満足を獲得し続けることが、Marketに現在進行形を表す-ingをつけたマーケティング(Marketing)です。

人材市場価値の特性

人材市場における市場価値を人材市場価値といいます。

商品同様に人材の価値自体がどんなに高くても、それが市場で知られていなければ、市場価格は同職種の相場と同等になります。

また、能力の高い人材が多くいて、市場において需要が満たされている職種の市場価値は、そうでない職種と比べて相対的に低くなります。

例えば、石鹸という商品の価値を表現する方法は使われている成分・原料や洗浄力、香り、泡立ち、硬さ、量といったスペックで性能を表現する方法や、使用シーンを表現する方法などがあります。

では、人材としての価値はどう表現できるでしょうか。

1.業務経験の価値

例えば、「給与計算」スタッフ募集の要項には、こうあります。

【歓迎する経験】
給与計算の実務経験

この会社で必要としているのは、特定の業務スキルです。その業務スキルが資格等級、スコアなどで測定しやすいものであれば、業務スキルが〇〇以上ということになりますし、そうでない場合は経験年数で判断することになります。

給与計算という業務の市場価値で待遇は決定されます。私は〇〇もできるのに、TOEIC〇〇◯点なのに…といっても待遇は変わりません。
業務をより速く、正確に行えるかどうかが人事評価となります。機械の方が安く行えるのであれば、そちらにシフトしやすい職種です。

2.業務スキルと対人スキル

医療者などの国家資格者は都市部に集中し、地方では不足している状況が慢性的になっていますので、同じ職種でも地方のほうが市場価値が高いということになります。
この場合、社内で完結する事務スタッフと異なり、患者という外部の人とのコミュニケーションが不可欠です。国家資格を所持している時点で最低限の知識を持っていることは担保されているので、面接で重視されるのはコミュニケーションなどの対人スキルです。資格自体の価値が大きいため、比較的経験による待遇の差は小さくなる傾向があります。

3.ポテンシャルと経歴の問題

【対象となる方】
自ら考え自走できる行動力がある方
柔軟な対応を行える方
熱量を持って仕事に取り組むことができる方

経験者が少ない職種やスタートアップ企業などは、目に見える実務経験に頼れないこともあり、「ポテンシャル」採用になる傾向があります。
能力重視というと聞こえが良いですが、その能力を図ることは非常に困難です。プロジェクト参加経験において、実際は関与した十数人の一人であるのに関わらず、主要人物であったように語るなど応募者が自分を大きく見せることもあるそうです。

なお、幹部職を外部採用する場合は、業界・職種が違っても、他社での肩書と実績が重視される傾向が強くなります。社長ならともかく、管理職一人で事業実績は決定しません。〇〇社部長という肩書も能力を表すものとは限りません。

しかし、得てして職務経歴が市場人材価値を決定していることが多いものです。

個人的には、採用のミスマッチが最も多いのがこの層だと思います。
経歴で判断して採用したものの、ポータブルスキルが想定したよりも低く、その企業では活躍できないということは多々起きています。
結果として、採用企業は無駄な人材投資をしたことになりますし、当人も数年でその企業を去って、次の経歴重視企業へと渡り歩くことになります。

能力を上げるのが先

能力を上げずに、人材としての市場価値を高める方法は存在します。
前項のポテンシャル採用の企業に、自分を大きく見せて採用されます。その際に、現状より上の肩書をもらえれば、次の転職では経歴採用の会社でより良い条件を得られます。

業界によりますが、これを繰り返すことである程度まで肩書と年収を増やすことは可能でしょう。

しかし、いずれ行き止まりが見えることになります。
能力そのものが向上したわけではないからです。

思考と判断と実行を繰り返すことで、能力は磨けます。
仕事は目標を実現する手段ですので、能力が高まると、仕事で成果を出すことができるようになります。
成果を出すことで、今いる会社での評価は上がります。
能力の高さを人材市場で認識してもらえば、結果として人材市場における価値が向上します。

仕事を「生計を立てる手段として従事する事柄」とだけ捉えると、前者のようになります。

「何かを作り出す、または、成し遂げるための行動」と捉えて行動する人は、能力を磨き続けることで、結果として成果を出し、人材市場価値も上がるのだと私は考えます。

おまけ:課長層までと部長層以降の違い

肩書が能力を表すとは限らない例として、それぞれに必要な機能を記載します。

管理職に必要な機能は、業務機能と人間機能にわけることが出来る。また、維持機能と改革機能にもわかることができる。
これをマトリクスにすると、以下の図になる。

管理職の機能
管理職の機能

管理職の入口である課長に求められる機能は、まずメンテナンスの役割を持つ維持管理機能です。
成長するに従って、改革機能を果たせるようになると、部長(もしくは前段階の次長)への昇進可能性が出てきます。
課長を表現すると、以下のようになります。

課長の機能
課長の機能

昇進して部長となると、維持管理機能を課長に任せた上で教育指導を行いつつ、改革機能を果たしイノベーションを起こすことを求められます。

部長の機能
部長の機能


ところが、イノベーションを起こすのはそう簡単ではありません。
ここで、管理職の評価を適切に行うことが出来ないと、難易度の比較的低い維持管理に専念して時間を費やした人材の評価が高くなる傾向が出てきます。

こういう会社の部長層以上は肩書に比して、改革能力が劣っている状態になります。
当然のことですが、そういった企業と管理職に改革能力が身についた企業では、業績に差が出てくることになります。

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