モノ消費からコト消費の時代には消費者よりも生活者を見る必要があるのはなぜか

なぜ「消費者」をターゲットとしてきたか

 小売に関する「客」を示す単語を並べると、消費者・生活者・顧客・ユーザーとなります。

 ECなどネット主体の場合「ユーザー」が多く使われていますが、店舗中心のビジネスでは使用頻度が多くはないので、ここでは他の3つについて記載していきます。
 メーカーの方と話をする時には「消費者」という単語が非常に多く使われます。ここでの消費者は「商品・サービスの購入者・購入決定者」を指すわけです。
 一昔前のマス・マーケティングでは、消費者をターゲットとし、新規客を獲得することに多くの予算が投入されてきました。企業が物を作れば売れる高度経済成長期やバブル期には、物ありきの企業主導で通じたわけです。
 しかし、社会が成熟して需要が充足した上に、同じ年代・性別でも様々なライフステージ・ライフスタイルの人が存在している現代、そして経済が停滞し人口減少時代に突入した日本のような国では通用しない方法となりました。

 店舗では、目の前にするお客様つまり購入客は見えますが、来店していない一般の方のことはほぼ見えていません。したがって、小売業にとっては、会話の軸が新規顧客、既存顧客という「顧客」となりがちです。
 メーカーの方が「消費者」ということが多いのはID-POSで誰が何を買っているか把握することが容易な小売業と違い、「誰が」を調べるために都度リサーチコストが必要なことも原因と考えます。

メーカーは消費者(生活者)を見て、小売は顧客を見る
メーカーと小売の視点は違う

消費者と生活者の違い

 英語だと生活者・消費者はconsumer、新規客はvisitor、顧客はcustomerです。ただし、日本語で生活者と消費者のニュアンスは異なりますし、人によって見解が異なります。こういう時は個人のイメージではなく、辞書をベースにすると認識が揃います。

 消費者は、三省堂大辞林第三版によると「物資を消費する人。商品を買う人。」です。
 一方、生活者は「人は単に消費するだけではなく、消費活動を通じて生活の豊かさや自己実現を追求しているという考えに基づき、「消費者」に代わり用いられる語。」とあります。
 モノからコトへの時代には、consumerを生活者と表現した方がふさわしいと考えますので、私は生活者と記載しています。
 consumerの語源を考えると、[con-]には「完全に」「共に」という意味があり、[-sumer]は「取る人、もの」です。個人的には「完全に取る人」だと消費者、「共に取る人」だと生活者を連想します。
 なお、用語がどちらかというのは本質的な話ではなく、「生活者」「消費者」を記号と捉えるのではなく、一人ひとり多種多様な「人間」と捉えて見ることが重要と考えます。

「モノからコトへ」の誤解

 「モノからコトへの時代」と書きましたが、洋服のようなモノから、旅行のようなコトに消費が移るイメージを持っている方が多く、モノ消費、コト消費を勘違いしている人が意外と多いので、解説しておきます。

モノ消費:個別の製品やサービスの持つ機能的価値を消費すること。価値の客観化(定量化)は原則可能。

コト消費:製品を購入して使用したり、単品の機能的なサービスを享受するのみでなく、個別の事象が連なった総体である「一連の体験」を対象とした消費活動のこと。

平成27年度地域経済産業活性化対策調査(地域の魅力的な空間と機能づくりに関する調査)報告書

 一連の体験(コト)の中には、個別の事象が連なっており、そこには製品やサービスも含まれているのです。図にすると、以下のイメージです。

モノ消費とコト消費の関係性
モノ消費とコト消費の関係性
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