マーチャンダイジングとマーケティングとの違い。インストアマーチャンダイジングとは

マーチャンダイジングとは

 マーチャンダイジングは「消費者の欲求・要求に適う商品を、適切な数量、適切な価格、適切なタイミング等で提供するための企業活動」のことです。

 メーカーは自社の作り出した品を製品(Product)と呼びますし、小売業は品揃えする品を商品(Merchandise)と呼びます。
 製品を商品にする「商品施策」はマーケティング活動の一つです。
 総論としてのマーケティング概念のない(弱い)小売業は多いのですが、マーチャンダイジングのない小売業はありません。

 マーケティングは「顧客が真に求める商品やサービスを作り、その情報を届け、顧客がその価値を効果的に得られるようにするための」活動であり、製品(Product)を消費者に売るためにメーカーから始まった概念です。
 それに対し、マーチャンダイジングは「消費者の欲求・要求に適う商品を、適切な数量、適切な価格、適切なタイミング等で提供するための」活動のことです。
 マーケティングは長年の間、学問研究が行われています。
 一方、マーチャンダイジングという言葉が主として使われる場は、アカデミックな場ではなく、小売業の現場です。したがって、人によって定義はマチマチです。
 売場を起点にお客様(小売業の人は社内で消費者と呼ぶことは稀です)が欲しいと思う商品(Merchandise)の選びやすい品揃えや並べ方、買っていただきやすい値ごろ感のある価格を決定し、そのための商品調達と物流を構築するのがマーチャンダイジング活動です。

 適正な商品を扱えるように探索・交渉するのは主に商品部門の仕事です。
 扱う商品カテゴリーの幅と深さを決めるのは、事業戦略の重要事項である、経営陣の仕事でもあります。
 ワンストップショッピングを提供し、顧客への利便性を重視するのであれば、用途・機能の多さを重視します。

ワンストップショッピング型の小売業
ワンストップショッピング型の小売業

 また、Tシャツ専門店などのように、用途・機能あたりの品目を増やし、ブランド・色・サイズ・素材等の選択肢を増やすことで、専門性を掘り下げて商圏を広くする方法もあります。

アソートメントの深さ重視の専門店
アソートメントの深さ重視の専門店

 「適正な場所」「適正な時期」「適正な数量」「適正な価格」については、小売業の各部署が絡むインストア・マーチャンダイジングに関する事項です。

適切と適正(と適当)

適切:ぴったりと当てはまること。ふさわしいこと。
適正:適当で、正しい・こと(さま)。 

三省堂 大辞林 第3版

であり、適当とは

1 ある条件・目的・要求などに、うまくあてはまること。かなっていること。ふさわしいこと。また、そのさま。「工場の建設に適当な土地」「この仕事に適当する人材」
2 程度などが、ほどよいこと。また、そのさま。「調味料を適当に加える」「一日の適当な仕事量」
3 やり方などが、いいかげんであること。また、そのさま。悪い意味で用いられる。「客を適当にあしらう」「適当な返事でごまかす」

小学館 デジタル大辞泉

 です。適正を言い換える(適当を翻訳)すると、
 適正は「ある基準にあてはまり、正しい・こと(さま)。」といえます。 
チェーンストアにおいて扱い商品、陳列場所、展開時期、数量、価格には基準が必要ですので、私はマーチャンダイジングについて「適正」かどうかが重要だと考えています。

インストア・マーチャンダイジングとは

 インストアマーチャンダイジングは、マーチャンダイジングをより店舗にフォーカスした概念で、どの商品を露出させ、どの商品の露出を控えるのかという商品露出力に関わる「スペースマネジメント」と、いかに需要を喚起させるか、つまり商品刺激力に関わる「インストアプロモーション」の2つに大別することができます。

マーチャンダイジングとインストア・マーチャンダイジングの関係

 スペースマネジメント(商品露出力)は、「フロアマネジメント」と「シェルフスペースマネジメント」によって構成されています。「フロアマネジメント」は、店内の回遊をどのように設計し、通路幅をどれぐらい取り、どのカテゴリーをどの位置に配置するかという「レイアウト計画」や、クロスMDなどが含まれます。
 「シェルフスペースマネジメント」はゴンドラの設置場所の検討をはじめゴンドラ内での棚割、商品のグルーピング、ゾーニング、フェーシングなどがこれにあたります。

 また、インストアプロモーション(商品刺激力)には、価格主導型のものとそうでないものがあります。

 ドラッグストア業界紙である月刊マーチャンダイジング連動のMD NEXT連載第6回でインストア・マーチャンダイジングの基本について寄稿しましたので、続きはこちらでお読みください。

商品露出と商品刺激に分類できるISM
計画購買の店舗は直線的なゴンドラ配置が無難
ゴンドラ接続数で売上は変わる
チラシ特売商品を必ずしも露出させる必要はない
ハイ・アンド・ローでお客の購買意欲を刺激する
と言った内容です。

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