フランスのドラッグストア市場で存在感を高める大手3社の最新動向と成功戦略のまとめです。
フランスのドラッグストア市場概観
フランスでは日本とは異なり、「薬局」がドラッグストア的機能を担っています。近年、これら薬局は単なる処方薬調剤の場から、美容・健康商品を取り扱う総合ヘルスケアストアへと進化しています。特に大手チェーンは処方薬だけでなく、パラファーマシー商品(非処方薬・化粧品・衛生用品等)の品揃えを拡充し、デジタル技術を活用したサービス提供で消費者の支持を集めています。
本稿では、フランスドラッグストア市場をリードする3大グループ「Giphar(ジファール)」「Laf Santé/Pharmacie Lafayette(ラフ・サンテ/ファルマシー・ラファイエット)」「Pharmabest(ファルマベスト)」の最新3年間(2021-2023年)における業績、売上構成、戦略、デジタル施策、会員制度などを詳細に分析します。これらトップ企業の成功事例から、ドラッグストア業界におけるビジネスモデル変革のヒントを探ります。
Groupe Giphar(ジファール・グループ)
企業概要と業績推移
Gipharは1968年に創設されたフランス最大の薬局協同組合です。全国約1,250店の薬局が加盟し、2021年度の年間売上高合計は約21億ユーロ、2022年度には約23億ユーロ(税込)に達し、前年比+8.9%の成長を記録しました。2023年度の正式な売上は未公表ですが、引き続き堅調に推移していると見られます。
Giphar加盟薬局の売上規模は1店当たり平均約180万ユーロ強となり、業界最大規模のネットワークを形成しています。収益性の面では、薬局オーナーの利益率は従来型薬局と同程度(2022年で粗利率約32%)を維持しています。
売上構成と事業戦略
Giphar加盟薬局全体では、フランスの一般的な薬局市場構造と同様に処方医薬品売上が中心を占めています。一方で、OTC医薬品・ヘルスケア製品やパラファーマシー商品の強化にも取り組んでおり、フランス市場平均(処方薬80%・パラファーマシー20%)に対して、統一ブランド「Giphar」を掲げる店舗では独自ブランド商品の販売などでパラファーマシー比率を高めています。ただし、Giphar全体としては処方薬販売が主体であり、食品や日用品といったカテゴリーの扱いは限定的です。
Gipharは「地域の独立薬局の連合体」としての協同組合モデルを掲げ、各加盟薬局の経営効率と競争力向上を支援する戦略を取っています。具体的には、共同購買による仕入れ価格引き下げや独自プラットフォームによる物流効率化(自社で医薬品卸機能を保有し、フランス各地に物流センターを配置)を進めています。2022年には第4の物流拠点を開設し、加盟店への24時間以内配送体制を強化するなど「垂直統合型ロジスティクス」でオペレーション効率を高めています。
また、人材難に対応するため組合内で薬局スタッフ育成プログラムを設けるなど、経営支援策も講じています。収益拡大策としては、プライベートブランド商品の開発にも注力しており、「Laboratoire Giphar」という自社ブランドを展開して利益率向上と価格競争力強化を図っています。
デジタル活用の取り組み
Gipharはデジタル戦略として、オンライン注文と店舗受取(Click & Collect)サービスやモバイルアプリの導入を進めています。公式ウェブサイト上でパラファーマシー商品のオンライン販売と最寄り薬局での2時間後受取サービスを提供しており、顧客はサイトで注文し店舗で受け取れる仕組みを構築しています。
また「Mon Pharmacien Giphar」という公式アプリを通じて、近隣のGiphar薬局検索や処方せん送信、在庫確認などのサービスを提供しています。これらデジタルツールにより、利便性向上と来店促進(店舗への集客)を図り、売上アップと業務効率化につなげています。
会員制度とロイヤルティ施策
Gipharには共通の無料会員カード制度は存在しないものの、加盟各店で独自の顧客サービスを展開しています。上述の公式アプリ「Mon Pharmacien Giphar」は会員登録することで処方箋の事前送信や健康情報の受信等が可能で、顧客との接点強化ツールになっています。
また、自社ブランド商品戦略(例えば自社血圧計「Libeoz」シリーズ等)により顧客のロイヤリティを高める取り組みも行われています。Giphar加盟店はそれぞれ地域に根差した薬局として患者との信頼関係を築いており、デジタル施策と合わせて「かかりつけ薬局」としてのロイヤルティ形成を図っています。
Groupe Laf Santé/Pharmacie Lafayette(ラフ・サンテ/ファルマシー・ラファイエット)
企業概要と業績推移
Laf Santé(旧称Lafayette Conseil)は、「Pharmacie Lafayette」ブランドでフランス全国の大型薬局をフランチャイズ展開するグループです。2021年時点で約158店舗が同ブランドに加盟し、グループ全体の年間売上高は13億4千万ユーロ(前年比+16.4%)に達しました。
店舗網拡大と売上成長により、2022年には約270店舗・売上高約10億~11億ユーロ規模まで成長し(前年より+11%の増収)、LSA誌の小売業トップ100ランキングでも前年の47位から39位へと順位を上げています。さらに積極的なM&A戦略により2023年末までにグループ参加薬局数は1,200店超へ急増し、ホールディングカンパニーのHygie 31全体の売上規模は約24億ユーロに拡大しました。これはフランス薬局市場の約10%に相当する規模で、同グループは業界トップクラスの売上高を誇ります。
グループ加盟薬局の平均年商は1店あたり約480万ユーロと、フランス一般薬局平均(約195万ユーロ)を大きく上回っています。収益性については、大幅値下げ戦略により粗利率が低下する懸念もありましたが、共同購買力で仕入原価を抑えることで2022年の薬局粗利率は32%(従来型薬局と同等)を維持しています。
売上構成と事業戦略
Pharmacie Lafayetteの大きな特徴は、処方医薬品とパラファーマシー商品の売上構成をほぼ50:50の比率にまで高めている点です。一般的なフランス薬局が処方薬売上比率80%前後であるのに対し、同グループではOTC医薬品、ヘルスケア、ビューティー・コスメ、日用品等のパラファーマシー分野を強化することで売上の半分を占めるまでに拡大しています。
具体的な内訳は公表されていませんが、美容・化粧品(デーマコスメ)や栄養補助食品などの比重が高く、処方薬に依存しない売上構造を築いていることが強みです。日用雑貨や食品については、健康志向食品やベビー用品など一部の商品を扱う程度ですが、コスメ・衛生用品ではドラッグストア的な品揃えを実現しており、同社の230店舗(2022年時点)はフランス全薬局に占めるわずか1%弱の店舗数でパラファーマシー市場シェアの12%を占めるまでになっています。
Pharmacie Lafayetteは「健康分野のディスカウントモデル」を掲げ、低価格戦略と大型店展開によって急成長してきました。創業当初より「薄利多売」で医薬・健康製品の価格を引き下げ、消費者の購買力向上(#Le pouvoir d’achat)を重視する方針です。このため加盟薬局には常時数千点規模の価格引下げやプロモーションを展開させ、大手製薬会社との直接交渉による大量仕入れで値下げ分のマージン圧縮を吸収しています。
同時に品揃えの幅広さ(平均店舗面積は従来比2~3倍の広さ)とサービス充実(店内に投薬カウンセリング個室や検査・ワクチン接種ブースを設置)を両立させ、顧客満足度向上にも注力しています。また、グループ独自のPB商品(プライベートブランド)戦略も柱の一つです。2018年以降「Lafayette」ブランドのサプリメントやアロマオイル等の自社開発商品を投入し、2022年には店舗売上の17.8%増加に寄与するなどヒット商品を生み出しています。
経営戦略面では、近年M&Aによる規模拡大も鮮明で、他の地域薬局チェーンやグループを次々と傘下に収めて勢力を拡大しています。この急速な拡大は欧州域内にも及び、スペイン・イタリア・ベルギーなどへの進出も視野に入れるなど、「ヨーロッパのヘルスケア小売チャンピオン」を目指す姿勢を公式に打ち出しています。
デジタル活用の取り組み
Laf Santéグループはデジタルを成長戦略の中核に位置付けており、オンラインとオフラインの融合による売上拡大を図っています。同社は2020年にEC専門企業「Cocooncenter」(2020年売上約5,000万ユーロ)を買収し、以降グループ全体でEコマース展開を加速しました。その結果、フランス国内だけでなく英国・ドイツ・スペイン・ベルギー向けにもパラファーマシー通販サイトを展開し、「今後2~3年でグループ売上の15~20%をECが占める」という目標を掲げています。
実店舗と連携したサービスとしては、オンライン予約・クリック&コレクト(ネット注文店舗受取)や処方箋スキャン送信、店内での遠隔診療(Téléconsultation)など様々なデジタル施策を導入しています。公式サイトや各店舗サイトを通じ、処方箋画像を事前送信して調剤をスムーズに受け取れるサービスや、自宅に居ながら商品の取り置き・配送を依頼できる仕組みを提供しています。
また、本部は加盟薬局向けに統合ERPシステムやダッシュボードツールを提供し、発注・在庫・販促をデータ駆動で最適化するサポートも行っています。これらデジタルの活用により、2022年には来店客数が前年より+25%増加し年間3,000万人がPharmacie Lafayetteを利用するなど、大きな集客効果を上げました。デジタルは顧客利便性向上だけでなく、グループ全体の業務効率化・売上向上に寄与しており、同社はフランス薬局業界の中でもDX(デジタルトランスフォーメーション)の先行事例となっています。
会員制度とロイヤルティ施策
Pharmacie Lafayetteは「LaFidélité(ラ・フィデリテ)」という全店共通の会員プログラムを展開しています。このプログラムでは無料の会員カードまたはアプリを通じてポイントを蓄積でき、購入額に応じてキャッシュバックや割引クーポンが提供されます。2022年時点で会員数は200万人を超えており、同社の売上の大部分が会員経由で占められるまでに成長しています。
会員専用のウェブポータル「lafidelite.com」や店舗ごとの「Ma fidélité」ページから、自身のポイント残高や特典を確認できるほか、妊産婦・子育て世代向けの「Le Club des Parents」といったサブプログラムも運用し、ターゲット別のロイヤルティ施策も実施しています。
さらに、Pharmacie Lafayetteは公式スマートフォンアプリの提供も行っており、近隣店舗検索やオンラインサービスへのアクセスが容易になっています。これらの会員制度とデジタルツールにより、顧客の囲い込みとLTV(顧客生涯価値)の向上を図っている点が同社のマーケティング戦略の重要な柱となっています。
Pharmabest(ファルマベスト)
企業概要と業績推移
Pharmabestは2016年設立の比較的新しい薬局グループで、フランス各地の超大型薬局のみで構成されるグループメントです。2021年末時点で104店舗が加盟し、同年のグループ売上高は9億45百万ユーロ(有機的成長率+11.2%)を記録しました。2022年には店舗数111店に増え、売上はついに10億ユーロの大台を突破しています(前年比+7.5%増)。さらに2023年にはネットワークを122店舗まで拡大し、年間売上は約12億ユーロと前年比+14%の高成長を達成しました。
Pharmabest加盟薬局1店あたりの平均年商は約920万ユーロにも上り、店舗平均売場面積も700㎡と他社を圧倒しています。これはフランス「XXL薬局」とも称される規格外の大型店フォーマットに特化した戦略の成果であり、同グループは全フランス薬局のたった1%(約120店)で業界売上シェアの約3%を稼ぐまでに成長しています。
利益率について公表値はありませんが、処方薬と並び利益率の高い美容・ヘルスケア商品の売上拡大やスケールメリットによる集中購買で、各店は高い営業利益率を確保していると推察されます。
売上構成と事業戦略
PharmabestもまたLafayette同様に処方医薬品とパラファーマシー商品の売上構成を50:50に均衡させたビジネスモデルを採っています。グループ創設者は「処方薬50%:パラファーマシー50%」の比率こそが薬局経営を外部環境変化に対して強靭にすると述べており、実際に同グループの売上も調剤薬とOTC・コスメ・健康雑貨がほぼ半々です。
とりわけ美容・皮膚科学(デーモコスメティック)領域に強みがあり、Pharmabest全体でフランス薬局・ドラッグストア市場の高機能コスメ売上の8%を占めています。また栄養補助食品や植物由来医薬品にも力を入れており、ヘルスケア志向の商品群を拡充しています。食品や日用品の扱いは限定的ですが、広大な売場を活かして健康食品・オーガニック製品などを品揃えに加える店舗もあります。総じて同社はフランス市場に日本型ドラッグストアに近い総合ヘルス&ビューティーストアのコンセプトを持ち込み、売上構成を従来型薬局から大きく変革しています。
Pharmabestの経営戦略は明確に「業界最大規模の店舗による集客と収益力の最大化」にフォーカスしています。平均700㎡という広大な売場面積を持つ店舗では、処方薬の調剤に加えて数万点規模のパラファーマシー商品を在庫し、顧客がワンストップであらゆる医療・美容ニーズを満たせるようにしています。例えばあるPharmabest店舗では常時2.5万点以上の化粧品・衛生用品を揃えており、薬局でありながら大型ドラッグストアさながらの品揃えを実現しています。
価格政策の面でも「毎日がセール」を掲げており、年間を通じて数千件のプロモーションキャンペーンを展開、特に生活必需のヘルスケア用品では積極的な値下げを行っています。2022年には物価高騰に対応し、自社の利益を一部削ってでも一部日用品の価格凍結・値下げ(#Pouvoir d’achatキャンペーン)に踏み切り、年間974,000ユーロ相当の割引クーポンを発行するなど消費者の購買力支援に努めました。
また、プライベートブランド「Pharmascience」を立ち上げて独自の商品提供にも注力しています。2018年に開始した自社ブランドはアロマオイルやビタミンサプリなど自然志向の商品を中心に品揃えを拡充し、2022年時点で34%超の販売数量増・17.8%の売上増を達成するなど好調です。総じてPharmabestは「大型店×価格訴求×自社ブランド」で差別化を図り、都市圏を中心にドミナント出店と既存店の増床(拡張工事)を進めることでネットワークの成長を続けています。加盟薬局オーナーはいずれも地元有力薬剤師であり、グループはフランチャイズというよりパートナーシップ型の集合体として運営されている点も特徴です。
デジタル活用の取り組み
Pharmabestはデジタル分野にも積極的で、グループ創業当初から各店舗にオンライン販売機能を持たせてきました。2021年にはグループ全店のパラファーマシー売上のうち5%が各薬局のECサイト経由となるなど(薬局ごとの通販サイトをグループブランドで統合)オンライン販売が浸透しています。今後もOTC医薬品の解禁拡大などを見据えて、Eコマース比率をさらに高める計画です。
またロイヤルティアプリや宅配サービスにも取り組んでいます。Pharmabestは「My Very Best Card」という共通ポイントカードを導入しており、2018年の開始から4年で会員数100万人を突破しました。このプログラムでは購入金額に応じたポイント還元やクーポン配布を行い、2022年には年間3,000件以上のプロモーションを実施しています。
さらに、高齢者や病人向けには当日宅配アプリ「Pharmabest @home」を展開し、自力で来店できない患者に処方薬・OTC薬を24時間以内に配送するサービスも一部地域で提供しています。これらデジタル施策を通じて、Pharmabestは大型店の集客力にオンラインの利便性を組み合わせ、オムニチャネル戦略で売上拡大とサービス向上を実現しています。
また、店舗向けには売上や在庫を可視化するシステムを導入し、各加盟薬局がデータに基づいた品揃え最適化・発注管理を行えるよう支援しています。デジタル投資により、Pharmabestは少数精鋭の店舗網でありながら顧客接点を広げ、市場環境の変化(例:2021年の新型コロナ検査・ワクチン需要急増や、2022年以降の需要平常化による反動減)にも柔軟に対応できる基盤を築いています。
会員制度とロイヤルティ施策
上記の通りPharmabestの「My Very Best Card」はグループ全店共通の会員ロイヤルティプログラムで、ポイント還元によるリピート促進に大きな効果を上げています。会員向けには誕生日クーポンや追加割引などの特典も用意され、同グループの成長を支える重要な施策となっています。
また、一部店舗では専用スマホアプリ(Pharmabest各店ごとのアプリ)を提供し、処方箋の写真送付やチャット相談、宅配依頼などが行えるようになっています。例えば「Grande Pharmacie d’Amiens」や「Pharmacie Prado-Mermoz」といった旗艦店は独自のPharmabestアプリを公開し、地域顧客の囲い込みを図っています。
さらに、PharmabestはメールやSNSを活用した顧客コミュニケーションにも注力しており、健康情報やセール通知を定期的に配信することで来店頻度向上につなげています。総じてPharmabestのロイヤルティ戦略は、「大型店の圧倒的な品揃え・価格」だけでなく「デジタルによるきめ細かなフォローアップ」によって顧客生涯価値を高めるアプローチであり、これが高い既存店成長率の原動力の一つとなっています。
フランスドラッグストア市場から学ぶ成功の鍵
フランスの大手ドラッグストアチェーン3社はそれぞれ異なるアプローチで市場での存在感を高めていますが、いくつかの共通した成功要因が見られます。
デジタルとリアルの融合による顧客体験向上
3社に共通するのは、デジタル技術を活用した顧客サービスの拡充です。オンラインショッピング、モバイルアプリ、処方箋デジタル送信、Click & Collect、宅配サービスなど、利便性を高める取り組みが売上増加に貢献しています。特にLaf Santéグループはデジタル投資を積極的に行い、年間3,000万人が利用する集客力を実現しています。
プライベートブランド戦略の強化
各社はプライベートブランド開発に注力し、差別化と利益率向上を実現しています。GipharのLaboratoire Giphar、LafayetteのPB商品、PharmabestのPharmascience商品はいずれも高い成長率を示しており、自社ブランドによる独自価値提供が成功の鍵となっています。
会員制度による顧客ロイヤルティの向上
特にLafayetteとPharmabestは全店共通の会員プログラムを展開し、それぞれ200万人、100万人以上の会員基盤を構築しています。ポイント還元やクーポン配布を通じてリピート購入を促進し、顧客生涯価値の最大化を図っています。
パラファーマシーカテゴリーの拡充
特筆すべきは、LafayetteとPharmabestが処方薬とパラファーマシー商品の売上比率を50:50にまで高めている点です。美容・健康商品の強化により従来の薬局ビジネスモデルを変革し、収益構造の多様化と安定化を実現しています。
今後の展望とトレンド
フランスのドラッグストア業界は今後も変革が続くと予想されます。特に以下のトレンドに注目が集まっています。
Eコマース比率の拡大
オンライン販売への取り組みが進み、特にLaf Santéグループは「今後2~3年でグループ売上の15~20%をECが占める」という目標を掲げています。OTC医薬品のオンライン販売規制緩和などの環境変化も追い風になると見られます。
M&Aによる規模拡大と国際展開
特にLaf Santéグループは積極的なM&A戦略によりフランス国内での勢力拡大だけでなく、欧州各国への進出も図っています。「ヨーロッパのヘルスケア小売チャンピオン」を目指す同社の動向が業界再編の鍵を握ります。
大型店化とサービス拡充
フランス市場では、従来の小規模薬局から大型総合ヘルスケアストアへの転換が進んでいます。LafayetteとPharmabestに代表される大型店モデル(平均700㎡規模)は今後も拡大が見込まれ、処方薬調剤に加えて美容・健康相談、検査・ワクチン接種など幅広いサービス提供が標準になっていくでしょう。
まとめ
フランスのドラッグストア業界トップ3社(Giphar、Laf Santé/Pharmacie Lafayette、Pharmabest)は、それぞれ異なるアプローチで市場での成功を収めています。Gipharは協同組合モデルと物流効率化、Lafayetteは低価格戦略と大型店展開、Pharmabestは超大型店と幅広い品揃えを強みとしています。
しかし共通しているのは、デジタル技術の活用によるサービス拡充と効率化、プライベートブランド開発、ロイヤルティプログラム強化などにより競争力向上を図っている点です。また、パラファーマシー商品の強化による収益構造の多様化も各社の成長を支える要因となっています。
今後もフランス国内のドラッグストア市場において、これらトップ企業は消費者ニーズの変化やデジタルシフトに対応しつつ、売上規模とシェアを拡大していくと予想されます。特に欧州全域への展開を視野に入れる企業も現れており、国際的な競争力を持つヘルスケア小売グループの誕生も期待されます。
フランスの事例は、日本のドラッグストア業界にとっても示唆に富んでいます。特に処方薬とパラファーマシーの売上バランス最適化、デジタルとリアルの融合によるオムニチャネル戦略、ロイヤルティプログラムの高度化などは、今後のドラッグストア経営において重要な検討要素となるでしょう。
参考資料
- Pharmabest公式情報資料 (2022年)
- Commerce Associé.fr – Giphar関連記事 (2022-2023年)
- Elsie Santé – フランス薬局業界レポート (2021-2022年)
- LaFSanté.com – Pharmacie Lafayette公式情報 (2022年)
- La Vie Économique – フランス薬局業界再編動向記事 (2023年)
- Les Echos Études – フランス薬局チェーン市場動向分析 (2022年)
- Le Journal des Entreprises – フランス薬局業界利益率分析 (2022年)
- Le Moniteur des Pharmacies – 業界統計レポート (2021-2023年)