クローズアップ現代 2019年4月10日(水)密着!コンビニ店主24時 便利さの裏で何が?
を見ました。コンビニオーナーの過酷な生活はよく知られているところですが、奥さんの入院にも付き添えず、亡くなった後は深夜の維持がどうやってもできなくなったので、24時間営業をやめた(本部は了承していない)オーナーへの取材から目が離せませんでした。
経営数値が赤裸々に映っていましたので、画面に見えたものを元に「なぜ24時間営業がやめられないか」を考察してみます。
このコンビニは2019年2月1日より営業時間を6時~25時19時間営業としています。
経営状態
TVに映ったPLのままでは考察しにくいので、青文字の項目を補完しました。TVでは本部チャージ増加分2%含まずとなっていたものを売上総利益×2%として加えています。
- 売上、売上総利益(粗利益)は減少しているが、売上総利益率は上がっている。
- 本部の利益となる本部チャージは(チャージ率が上がると)大差ない。
- 人件費は2/3になる。
- その他経費の構成比が一番大きいのは廃棄ロスである。そのロスが8万円近く減った。
- オーナーの収入であるオーナー利益は24h→19hにすることで51万→84.6万に33.6万円増加。これは社員を1人雇えるレベルの効果。
大きな要素は2つあります。
人件費
まず、営業時間が2割減ったことで、人件費は3割以上減っています。 これは深夜の時給が高いためであり、労働人口の減少が進む今後はこの効果はより大きくなります。
廃棄ロス
次に、廃棄ロスは原価ではなく、営業コストとしてオーナー負担であり、各種裁判等が繰り返された結果、現在は15%を本部負担しています。廃棄が減ることでオーナーは8万円の利益が増えて、何よりも環境貢献が大きいです。
本部負担金も1~1.4万(経費内訳による)減って、三方よしになりそうですが、原価に反映されないということは廃棄された場合でも仕入れが発生したほうが本部が儲かる構造は変わりません。これがボトルネックになっていることは否めません。
結果として、このケースでは、オーナーの負担は減り、正社員一人雇用できるほどに収益が向上しました。そして、コンビニ本部サイドも大きな損失にはなっていません。
24時間営業でなければ、いけない理由とは?
では、なぜ
コンビニ本部は24時間営業にこだわる
のでしょうか。本部コメントを見ると、深夜やっていた業務や物流が変わりオペレーションが変わることを慎重に検討するといって先延ばししているようにも見えます。一方、この番組のオーナーは翌朝分の納品・品出しを前日最後に行い、万全の状態で開店しているとのことでした。
一つには、長年CM投資もして築いてきた
いつでも開いている安心感の提供
があるでしょう。
また、営業時間ごとの本部チャージ設定などを設定し、オーナー離反を最低限に抑えながら
自社収益が最大化する手法を経営判断
しなければなりません。
番組を見ていて印象的だったオーナーの発言があります。
「以前は忙しくて仕事をこなすだけだった。それが今では、しっかり眠って、経営に力を入れることができる」
結果として、粗利益率を上げて、ロスを削減し、労働分配率を大幅に改善することができているわけです。
オーナーと本部双方の人の考える力を最大化する方向に動いてほしいものです。