AIツールが日常の作業を担うことで、私たちはもっと大切なことに集中できますし、成長も早まりますし、仕事も楽しくなります。
スマホのナビが目的地までの道順を教えてくれるおかげで、私たちは道を覚える労力から解放され、目的地での活動に集中できるようになりました。AIもそれと同じで、日常的な作業を助けてくれることで、私たちの時間とエネルギーをもっと価値のあることに使えるようにしてくれるのです。
これは、「頑張る」ことの意味と価値が根本から変わる大きな転換点なのです。

AI時代の3つの大きな変化
特別を目指す
多くの仕事で、AIは簡単に「まあまあ良い」レベル(100点満点中80点)に達することができるようになりました。これは私たち人間の目指すべき方向が変わったことを意味します。もはや80点を目指して汗をかくのではなく、その基準を超えて、もっと価値のある100点や120点を目指すことが大切になります。
例えば、飲食店のメニュー開発では、定番メニューはAIが提案できますが、そこにシェフの独自の工夫や地元の食材を活かした一品を加えることで、普通の定食から特別な食事体験へと高められます。AIが「普通のおいしさ」を作れるなら、人間は「特別なおいしさ」を目指すべきなのです。

あらゆることの「その人らしさ」が主流になる
AIは情報提供や学習方法、問題解決を一人ひとりに合わせて最適化できます。これにより、みんな同じやり方ではなく、その人に合った効率的な方法が主流になります。
「正解を探す」から「改良を重ねる」へ
AIが複数の案や下書きを素早く作れるため、最初から「唯一の正解」を見つけようとするやり方は時代遅れになります。むしろ、AIが作ったものを土台として、試行錯誤しながら良くしていく「改良型」の考え方が重要です。完璧な計画よりも、まず始めて、状況に合わせて調整していく能力が求められます。
たとえば、昔は企画書を作るとき、最初から完璧を目指して何日もかけて調べ、構成を練っていましたが、今はAIに「〇〇についての企画書の第一案を作って」と頼むことで、数分後には叩き台ができます。そこから改善を重ねる方が、ずっと効率的なのです。
ただし、お金がかかる大きな設備投資などは、やはり最初にしっかり考える必要があります。重要な問題から取り組むべきことも変わりません。
頑張るの新しい形
昔ながらの「頑張り方」は、多くの場面で効果がなくなり、必要とされなくなっています。昔は時間と労力をかけていた作業の多くを、AIが手伝えるようになったからです。
例えば、以前は資料作成のために何時間もかけて情報を集め、整理し、グラフを作っていました。今はAIに「〇〇についての最新データを教えて」と頼むだけで、瞬時に情報が集まります。そして「このデータからグラフを作って」と言えば、きれいなグラフもすぐにできます。
しかし、これは頑張らなくていいという意味ではなく、頑張り方が変わるということです。基本的な情報集めや文章の下書きといったAIにまかせられる単純な作業から、戦略を考えたり、新しいアイデアを組み合わせたり、目的を明確にしたり、AIと深く対話したりといった、より人間らしい能力に力を注ぐことです。
AIが退屈な作業を引き受けることで、人間の努力はもっと効果的に、そしてもっと楽しく使えるようになります。成功にはやはり努力が必要ですが、それは力任せの作業ではなく、賢い考え方、AIへの上手な指示、繰り返しの改善、そして自分自身を振り返る力といった、質の違う努力なのです。
野球チームの例で考えると、AIはデータ分析や相手チームの研究をしてくれる助手のような役割を担い、監督や選手は戦略づくりや技術の磨き上げなど、より創造的な部分に集中できるようになります。試合の勝敗を決めるのは、依然として選手の技術と精神力ですが、それをより効果的に発揮するための環境がAIによって整うのです。
成果につながる仕組み
AIは膨大な情報にすぐアクセスでき、プロのコンサルタントのような「重要な情報」の見つけ方や、「一般化→応用」のような考え方のパターンを真似できます。これにより、何年もかかる勉強を飛ばして、洗練された考え方をすぐに使えるようになります。
たとえば、経営コンサルタントは「この業界の動向から、次のトレンドは何か?」という思考を何度も繰り返して身につけていますが、AIを使えば「この業界の動向を分析して、次に来るトレンドを予測して」と頼むだけで、似たような分析ができてしまいます。
具体的には、AIを使って「事実→一般化→応用」という考え方を進め、「つまりこれはどういう意味?」と「具体的な例は?」という質問を繰り返すことで実現できます。
熟練の技を学ぶ効率が上がる
AIはさまざまな状況をシミュレーションし、専門家レベルのアドバイスを提供し、熟練者の「目」や「技」のような言葉にしにくい知識を形にして、学びやすくすることができます。これにより、通常なら長い経験が必要な学習期間を大幅に短縮できます。

例えば、寿司職人のシャリの握り方のような言葉では表現しにくい技術も、AIが「この状況では〇〇を目安に」と形式化してくれるので、見習いの頃に何年もかけて学ぶことを短期間で習得できるようになります。

AIは多くの創造的な選択肢を生み出し、パターンを分析し、フィードバックを提供することで、センスを通常より遥かに速く磨く手助けをします。
前述の通り、AIは標準レベルの下書きや解決策を効率よく作ります。これにより、人間の力は、それをさらに良くするための工夫、創造性の追加、独自の価値を付け加えることに集中できるようになります。
試行錯誤と学びの速さ
AIはアイデアの素早い試作とテストを容易にします。
計画(Plan)-実行(Do)-評価(Check)-改善(Act)のPDCAサイクルから、
実行(Do)-評価(Check)-計画(Plan)-改善(Act)のDCPAサイクルへの移行が効果的になります。AIが可能にする素早いフィードバックを通じて行動と学びを重視します。
ケーキ作りの例で考えると、従来は本でレシピを調べ、計画を立て、材料を揃え、作り、評価して改善するというサイクルでしたが、AIの時代は「とりあえず作ってみて(手元の材料でできるレシピをAIに提案してもらう)、それを評価し、その結果から次はどうすべきかをAIに相談する」というアプローチがより効果的になります。
本当の腕前は、どの専門家の考え方を学ぶか、どんな経験を模擬体験するかを知り、それを効果的に実現するためにAIとどう対話するか、という点にあります。価値はAIの能力だけでなく、望ましい技術や知識を再現し高めるためにAIをうまく指示するユーザーの能力にあります。これは受け身ではなく、積極的に関わるプロセスなのです。
AI時代に成長するには、新しいツールを活用し、考え方を変える必要があります。
ChatGPTなどのAIチャットbotを単なる回答マシンとしてではなく、アイデアを考え、磨き、行き詰まったときに打開策を見つける、疲れを知らないパートナーとして活用しましょう。
例えば、企画書を書くときに「このアイデアどう思う?」「もっと良くするにはどうしたらいい?」とAIに相談することで、一人ではなかなか気づかない視点が得られます。まるで頼りになる同僚と一緒に仕事をしているような感覚で、AIと対話しながら考えを深めていくのです。
最初は大まかに問題をとらえ、小さく分け、解決策を探り、選択肢を絞り、より深い質問を繰り返すことで考えを深めていきましょう。
新しい考え方を身につける
具体と抽象の往復思考
AIを進行役として活用し、一般的な概念(「つまり?」)と具体的な例(「例えば?」)の間を行ったり来たりすることで、理解を深める練習をしましょう。具体と抽象の行き来をトレーニングするイメージです。
例えば「顧客満足が大切」という抽象的な言葉を、「つまりどういうこと?」と掘り下げて「お客様の期待を超える体験を提供すること」とより明確にし、「具体的には?」と質問して「注文した商品を予定より早く届ける」「問い合わせに対して期待以上の情報を提供する」といった具体例に落とし込む練習ができます。こうした思考の往復運動が、問題解決力を高めます。
仮説思考
純粋な論理だけでなく、限られた事実から「たぶんこうだろう」という説明を作り、それを繰り返し磨いていく「仮説思考」を取り入れましょう。
例えば「販売が伸びない理由は何だろう」と考えるとき、「たぶん価格が高すぎるのでは?」と仮説を立て、それを検証し、必要なら「では品質の問題かもしれない」と別の仮説に移る、という柔軟な思考法です。これは、はっきりした目標が常に決められるとは限らない、予測できない環境で特に重要になります。昔ながらの決まったキャリアパスのような硬い計画から離れ、より柔軟な戦略を取り入れることが求められます。
人間ならではの強みに焦点を当てる
「なぜ?」「すごい!」
AIが「何を」「どのように」するかを担うようになるにつれて、人間の強みは「なぜ」へと移ります。つまり、個人の情熱、使命、そしてその活動の背後にある独自の視点です。
例えば同じパン屋さんでも、「売上を上げるため」に焼くパン屋と「お客様に幸せな朝食を届けたい」という思いで焼くパン屋では、後者の方が長く続き、よりファンを獲得しやすいでしょう。この内側からの動機(「やるべき」ことではなく「やりたい」こと)が、続く努力と影響力を生み出す鍵となります。情報や機会は、自分の「なぜ」をはっきり表現できる人に集まる傾向があります。
AIには真似できない資質、つまり直感、深い好奇心(「すごい!」「やばい!」)、信念に基づいて飛躍する能力、そして不確かさがあっても行動する意欲を育てましょう。これには、あいまいさを受け入れ、リスクを冒すときの不安や痛み(不快感)を許容することも含まれます。
行動重視の考え方
計画(Plan)に時間をかけすぎるのではなく、実行(Do)と評価(Check)を優先しましょう。
完璧な計画やすべての道具が揃うのを待たないでください。まず手元にあるもので作り始めることが、すべてのピースが揃うのを待つよりも重要です。必要なものは進めながら調達すればいいのです。
例えば、ブログを始めるとき、「完璧なテーマが決まってから」「デザインが整ってから」と待っていては、いつまでも始められません。まず「今日から毎週1記事書く」と決めて始め、テーマやデザインは途中で改善していく方が成長も早いのです。
最初から完璧である必要はありません。AIを活用して素早く始め、改善に焦点を当てましょう。失敗は素早い学習プロセスの一部だと考えましょう。
AIツールと人間の考え方の相互作用
AIは始めるハードルを下げ(完璧主義を和らげ)、継続的なフィードバックを提供し(繰り返しを奨励し)、あいまいな考えを言葉にする手助けをします(自己発見を支援します)。
だから、AIツールと人間の考え方の間には共生関係があるのです。適切な考え方がAIの力を引き出し、AIツールが適切な考え方を育てる手助けをします。
AI時代の新しい「頑張り方」は、問題を効果的に定義し、AIの出力を批判的に評価し、情報を創造的に組み合わせ、そしてはっきりしない状況を乗り越える能力が重要になります。これからの時代を生き抜くには、AIツールの積極的な活用と実験、人間ならではの強みへの集中、そして「学び方を学ぶ」能力の開発が欠かせません。
最後に、AIツールは情報へのすぐのアクセスや専門知識の再現により始めるハードルを低くしましたが、本当の価値は基本能力を超えた創造性や戦略的な見識にあります。単に「それなりにできる」のではなく、AIとうまく協力して100点や120点を目指す能力こそが、これからの差別化要因となるでしょう。
プロ野球でたとえると、球速150キロの球を投げられる投手は珍しくなくなりました。AIの時代も同じで「普通に仕事ができる」だけでは差別化できません。AIと協力して、独自の視点や創造性を加え、「普通を超える価値」を生み出せる人が輝く時代なのです。
AIは日進月歩なので、2025年4月23日時点の考えであることを明記しておきます。
来週には全然違う考え方になっているのかも?