「ユニファイドコマース」とは
ユニファイドコマースとは、店舗・EC・アプリなど複数の販売経路を「チャネル」として区別せず、一つの統合された商取引(コマース)として捉える考え方です。「ユニファイド(Unified)」は「統合された」を意味します。
本質的にはオムニチャネルと同じことを言っています。 オムニチャネルは「すべてのチャネルをつなぐ」という発想ですが、「チャネル」という言葉を使う時点で、経路が複数あるという分断のイメージが残ります。ユニファイドコマースは、この「チャネル」という枠組み自体を取り払う発想の転換です。技術的に新しい仕組みが加わったわけではなく、顧客視点で「そもそもチャネルの区別は不要だ」と捉え直した概念といえます。
たとえば、ある顧客がスマートフォンで商品を見つけ、店舗で試着し、後日アプリから購入して自宅に届けてもらう。この一連の行動を「EC→店舗→アプリ」と3つのチャネルに分けて考えるのがオムニチャネルの視点です。一方、ユニファイドコマースでは「一人の顧客による一つの買い物」としてシンプルに捉えます。
「ユニファイドコマース」の重要性
ユニファイドコマースという考え方が広がる背景には、顧客の行動変化と企業側の課題があります。
顧客はすでにチャネルを意識していません。 経済産業省の調査によると、日本のBtoC-EC市場規模は2024年に約15.6兆円に達し、実店舗とECを併用する消費者が増え続けています。生活者にとって「店舗で買う」と「ネットで買う」は同じ買い物の一部であり、チャネルの切り替えを意識していないのが実態です。企業側もこの感覚に合わせる必要があります。
組織の壁を壊すきっかけになります。 オムニチャネルに取り組む企業でも、店舗事業部とEC事業部が別々に運営されているケースは少なくありません。「チャネル別」の組織構造が残る限り、顧客体験の統合は進みにくくなります。ユニファイドコマースという言葉を使うことで、組織設計やKPI(業績評価指標)の見直しを促す効果があります。
業態ごとに統合の優先度は異なります。 スーパーマーケット(SM)では、ネットスーパーと店舗の在庫・価格・ポイントを一体化する取り組みが重要です。ドラッグストア(DgS)では、処方薬の予約受付・OTC商品のEC販売・店頭カウンセリングを一つの顧客体験として設計する発想が求められます。コンビニエンスストア(CVS)では、アプリを通じた事前注文と店舗受け取りを「一つの購買」として管理する仕組みが進んでいます。
「ユニファイドコマース」とIT活用
ユニファイドコマースを実践するためのIT基盤は、オムニチャネルで求められるものと同じです。ただし、システム設計の思想が変わります。
単一の顧客IDですべてを管理します。 CRMを基盤に、店舗・EC・アプリの顧客情報を一つのIDで統合します。ID-POSデータとEC購買データを結びつけることで、顧客ごとの全購買履歴を一元的に把握できます。この統合IDがパーソナライゼーション(個人に合わせた提案)の土台となります。
リアルタイムの在庫・注文管理が前提です。 顧客から見て「一つの買い物」を実現するには、在庫情報がリアルタイムで統合されている必要があります。BOPIS(ネット注文・店舗受取)や店舗からのEC在庫出荷など、注文と在庫がチャネルをまたいで流動する仕組みを支えるOMS(注文管理システム)が欠かせません。
POSシステムの役割が変わります。 従来のPOSは「店舗のレジ」でしたが、ユニファイドコマースではPOSが統合コマース基盤の一部になります。店舗スタッフがPOS端末からEC在庫を確認して注文を受けたり、ECでの購入品を店舗で返品処理したりする運用が標準になります。
キャッシュレス決済の統合も重要です。 店舗・EC・アプリのどこで決済しても同じポイントが貯まり、同じ決済手段が使える環境が「一つの買い物体験」を支えます。決済データの統合は、顧客分析の精度向上にも直結します。
まとめ
ユニファイドコマースは、オムニチャネルの本質を「チャネルの区別をなくす」という一歩先の視点で表現した概念です。技術的に新しいものを導入するというよりも、顧客視点で「一つの商取引」として体験を設計し直す思想の転換といえます。すでにオムニチャネルに取り組んでいる企業は、組織構造やKPIの見直しから着手してみてください。まだこれからの企業は、顧客IDの統合と在庫の一元管理を最初の一歩として、DXを進めていきましょう。
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