「GMS」とは
GMSとは、General Merchandise Store(ゼネラル・マーチャンダイズ・ストア)の略称で、日本語では「総合スーパー」と呼ばれる業態です。食品・衣料品・日用雑貨・家電など、衣食住にまたがる幅広い商品を一つの大型店舗で総合的に取り扱います。
日本では1960年代から1980年代にかけて急成長しました。イオン(旧ジャスコ)、イトーヨーカ堂、ユニー(現PPIHグループ)などが代表的な企業です。売場面積は数千平方メートル規模で、ワンストップショッピング(一カ所ですべての買い物を済ませること)を実現する存在として、郊外を中心に全国に広がりました。
経済産業省の商業統計では、GMSは「衣・食・住にわたる各種商品を小売し、そのいずれも小売販売額の10%以上70%未満の範囲内にある事業所で、従業者が50人以上のもの」と定義されています。
日本のGMSとアメリカのGMSの違い
同じ「GMS」でも、日米では業態の中身が大きく異なります。 アメリカのGMSは非食品で幅広い品揃えでした。該当する業態は、現在はウォルマートやターゲットに代表される「スーパーセンター」に進化しています。
日本のGMSは食品売場が集客の核です。 イオンやイトーヨーカ堂では食品の売上構成比が50〜60%に達し、生鮮食品を含むフルラインの食品売場が来店動機の中心です。日本の消費者は生鮮食品を頻繁に購入する習慣があり、GMSはこの需要に応えるかたちで食品の品揃えを充実させてきました。衣料品や住居品が専門店に負けていった結果として、現在の日本のGMSは食品スーパーに近い存在になりつつあります。
アメリカのGMSは非食品が主軸です。 ウォルマートのスーパーセンター登場以前、アメリカのGMSは衣料品・家電・日用品など非食品が中心で、食品は補助的な存在でした。ウォルマートが1988年にスーパーセンター業態(食品+非食品の融合型大型店)を開始して以降、食品を本格的に扱うようになりましたが、それでも非食品カテゴリーの売場比率は日本のGMSより高い傾向にあります。
運営モデルにも差があります。 アメリカのウォルマートやターゲットはEDLP(エブリデイ・ロー・プライス)を基本戦略とし、圧倒的な調達力と物流効率で低価格を実現しています。一方、日本のGMSはHi-Lo型の特売を軸にした販促に依存する傾向が強く、結果として価格競争力でディスカウントストアや専門店に劣後しました。また、アメリカでは衣料品売場を直営で運営するのが一般的ですが、日本のGMSでは衣料品売場のテナント化やSC化が進んでいます。
「GMS」の重要性
GMSは日本の小売業の発展を語るうえで欠かせない業態です。同時に、その変遷は小売DXを考えるうえでの重要な教訓を含んでいます。
かつてはチェーンストア経営の象徴でした。 GMSはチェーンストア理論に基づき、標準化された店舗運営と大量仕入れによるコスト削減で成長しました。1972年には、ダイエーが三越を抜いて小売業売上高日本一になるなど、百貨店に代わる主役として台頭しました。
大店法と大店立地法がGMSの運命を左右しました。 1974年に施行された大規模小売店舗法(大店法)は、中小小売業を保護する目的で大型店の出店を規制しました。2000年には大店立地法に切り替わり、規制の焦点が周辺環境への配慮に変わりました。この転換により、出店自体のハードルは下がりましたが、すでにGMSの競争環境は大きく変化していました。
専門店やカテゴリーキラーに市場を奪われました。 ユニクロに代表される衣料専門店、ニトリなどの家具専門店、家電量販店などが台頭し、GMSの衣料品・住関連売場は競争力を失いました。「広く浅く」という品揃えが、「深く専門的に」という消費者ニーズに合わなくなったのです。
業態別に見ると、GMSの転換先は異なります。 イオンはGMSを核テナントとしつつ、SC(ショッピングセンター)化を推進しています。イトーヨーカ堂は不採算店舗の閉鎖を進め、食品に特化した店舗への転換を図っています。食品スーパーへの業態転換は、多くのGMS企業が取り組む共通課題です。
「GMS」とIT活用
GMSの変革においてもDX(デジタルトランスフォーメーション)は重要な役割を果たしています。
大型店舗の売場効率をデータで改善します。 GMSは広大な売場面積を持つため、カテゴリーごとの売場生産性(1平方メートルあたりの売上高)をPOSデータで可視化することが不可欠です。どのカテゴリーに面積を割くべきか、あるいはテナントに転換すべきかを、データに基づいて判断できます。
テナント型SCへの転換にはシステム統合が必要です。 GMSからSCへの転換では、直営売場とテナント売場の売上・在庫・顧客データを統合する仕組みが求められます。共通ポイントカードやアプリを通じて、館全体の顧客行動を把握する取り組みが進んでいます。
食品強化にはサプライチェーンの刷新が欠かせません。 食品に経営資源を集中するGMSでは、需要予測AIによる発注の自動化や、生鮮品の鮮度管理システムの導入が進んでいます。衣料・住関連の在庫管理とは異なるリードタイムや廃棄ロスへの対応が必要です。
オムニチャネル戦略も重要な柱です。 イオンの「iAEON」アプリやイトーヨーカ堂のネットスーパーのように、大型店舗の品揃えを活かしたオンラインサービスが展開されています。店舗を物流拠点としても活用することで、ネットスーパーの配送効率を高める試みが広がっています。
まとめ
GMSは、高度経済成長期に「何でも揃う便利な大型店」として日本の小売業をけん引しました。しかし、専門店の台頭や消費者ニーズの変化により、従来型の総合的な品揃えは見直しを迫られています。アメリカではGMS→ディスカウントストア→ディスカウントストア+食品のスーパーセンターと変化し、EDLPと物流効率で成長を続ける一方、日本のGMSは食品特化やSC化など独自の進化を模索しています。この日米の違いは、同じ業態名でも市場環境と戦略次第で全く異なる結果になることを示しています。DXの活用は、この転換を成功させるための鍵です。
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