「エシカル消費」とは
エシカル消費とは、商品やサービスを選ぶ際に、価格や品質だけでなく、環境保全・人権・地域社会への貢献といった倫理的な視点を取り入れる消費行動のことです。英語の「Ethical(倫理的な)」と「Consumption(消費)」を組み合わせた言葉で、日本語では「倫理的消費」とも呼ばれます。
具体的には、フェアトレード(公正貿易)商品の購入、オーガニック食品の選択、地産地消(地元で生産されたものを地元で消費すること)、障がい者就労支援施設で作られた商品の購入などが該当します。環境に配慮した商品を選ぶ、必要以上に買わない、食品ロスを減らすといった行動もエシカル消費の一部です。
消費者庁は2015年に「倫理的消費」調査研究会を設置し、エシカル消費の普及啓発に取り組んできました。2022年の消費者意識基本調査では、エシカル消費を「知っている」「聞いたことがある」と回答した人の割合が約5割に達しており、認知度は着実に高まっています。SDGs(持続可能な開発目標)の目標12「つくる責任 つかう責任」とも深く関連し、社会的な関心は今後もさらに高まると見込まれます。
「エシカル消費」の重要性
小売業にとって、エシカル消費への対応は経営戦略上の重要課題になりつつあります。消費者の価値観が多様化し、単なる安さや便利さだけでは選ばれにくい時代に入りました。環境や社会への取り組みが企業のブランド価値を左右する時代です。
スーパーマーケット(SM)では、エシカル消費への対応がもっとも進んでいる業態といえます。地場野菜コーナーの設置による地産地消の推進、MSC認証(海のエコラベル)やASC認証を取得した水産物の取り扱い、フェアトレードコーヒーの品揃え拡大などが代表的な取り組みです。イオンは「フェアトレード調達方針」を策定し、トップバリュブランドでフェアトレード認証商品を展開しています。食品ロス削減も大きなテーマで、値引き販売やフードバンクへの寄贈といった取り組みが広がっています。
ドラッグストア(DgS)では、環境配慮型のパッケージや詰め替え商品の訴求がエシカル消費対応の中心です。プラスチック使用量を削減したシャンプーや洗剤の詰め替え用商品は、環境負荷の低減とコスト削減を同時に実現できるため、消費者と企業の双方にメリットがあります。また、オーガニック化粧品や動物実験を行わないクルエルティフリー商品の取り扱い拡大も進んでいます。
コンビニエンスストア(CVS)では、食品ロス削減が最大の課題です。セブン-イレブンやローソンは、消費期限が近い商品の購入にポイントを付与する「てまえどり」推進施策を展開しています。また、レジ袋有料化をきっかけに、マイバッグ持参率が大幅に上昇しました。限られた売場面積の中でエシカル商品の棚割り(商品の配置計画)をどう確保するかが実務的な課題です。
「エシカル消費」とIT活用
DXの力を活用することで、エシカル消費に関する取り組みはより効果的になります。
まず重要なのが、商品情報の「見える化」です。トレーサビリティ(追跡可能性)の仕組みと連携し、商品がどこで・誰によって・どのように作られたかをデジタルで消費者に伝える取り組みが広がっています。店頭のQRコードやスマートフォンアプリを通じて、産地情報やフェアトレード認証の詳細を確認できる仕組みは、消費者の信頼構築に直結します。
POSデータやID-POSデータの分析は、エシカル商品の需要予測と品揃え最適化に役立ちます。どの顧客層がエシカル商品を購入する傾向が強いか、どの時間帯・曜日に売れるかといった分析により、適切な発注量を算出できます。仕入れすぎによる食品ロスの削減にもつながるため、エシカル消費の推進と経営効率の向上を両立できます。
ダイナミックプライシング(需要に応じた動的価格設定)の技術も、エシカル消費と相性がよい分野です。消費期限が近づいた商品の価格を自動的に引き下げることで、廃棄を減らしながら売上を確保できます。AIを活用した値引き推奨システムを導入した小売企業では、食品廃棄量が20〜30%削減されたという報告があります。
サステナビリティ(持続可能性)に関する情報発信にもデジタルの力が欠かせません。自社アプリやSNSを通じて、エシカル商品の特集や環境配慮の取り組みを発信することで、共感する消費者行動の変化を捉えられます。CRM(顧客関係管理)の仕組みと組み合わせれば、エシカル消費に関心の高い顧客に対してパーソナライズされた情報提供も可能です。
CO2排出量の可視化も注目されています。サプライチェーン全体のカーボンフットプリント(商品のライフサイクルにおける温室効果ガス排出量)を算定し、商品ごとに表示する取り組みが欧米で先行しています。国内でも経済産業省が算定ルールの整備を進めており、今後はデータ基盤の構築がますます重要になるでしょう。
まとめ
エシカル消費は、環境や社会への影響を考慮した購買行動であり、小売業にとって無視できないトレンドです。SM・DgS・CVSそれぞれの業態で、地産地消の推進、環境配慮型商品の拡充、食品ロス削減といった対応が進んでいます。DXを活用すれば、商品情報の見える化、需要予測による廃棄削減、顧客への効果的な情報発信が可能になります。まずは自社のPOSデータからエシカル商品の販売動向を分析し、消費者の価値観の変化を把握するところから始めてみてください。
関連用語: