「消費者行動」とは
消費者行動とは、生活者が商品やサービスを認知し、情報を収集・比較したうえで購入を決定し、使用・評価するまでの一連のプロセスを指します。英語ではConsumer Behaviorと呼ばれ、マーケティングの中核をなす研究領域です。
この行動を理解するための代表的なモデルとして、AIDMA(アイドマ)があります。AIDMAは、注意(Attention)→関心(Interest)→欲求(Desire)→記憶(Memory)→行動(Action)の5段階で購買に至る流れを示したものです。インターネットの普及後は、AISAS(アイサス)という、注意→関心→検索(Search)→行動→共有(Share)のモデルが広く使われるようになりました。SNSでの口コミが購買を左右する現代において、AISASはより実態に即したモデルといえます。
もうひとつ重要な視点が、計画購買と非計画購買(衝動買い)の区別です。スーパーマーケットにおける調査では、来店客の購買の約70〜80%が非計画購買であるとされています。つまり、売場で見て初めて「買おう」と決める行動が大半を占めるのです。この事実は、売場づくりや棚割り(商品の配置計画)の重要性を裏付けています。
「消費者行動」の重要性
消費者行動を理解することは、小売業の売上と顧客満足を左右する基本です。
購買プロセスの可視化が戦略の出発点になります。 顧客がどこで商品を知り、何と比較し、なぜ購入を決めたのかを把握することで、品揃え・価格・販促の打ち手が明確になります。感覚や経験だけに頼る意思決定から脱却できます。
ショールーミングとウェブルーミングへの対応が求められます。 ショールーミングとは、店舗で実物を確認してからECで安く購入する行動です。逆に、ウェブルーミングはネットで調べてから店舗で購入する行動を指します。ある調査では、消費者の約60%がウェブルーミングを日常的に行っているとされています。小売業はこの二つの行動パターンを踏まえた価格戦略とチャネル設計が不可欠です。
業態によって重視すべき行動パターンが異なります。 スーパーマーケット(SM)では、来店頻度が高く非計画購買の比率が大きいため、店内の動線設計や売場演出が購買行動に直結します。ドラッグストア(DgS)では、化粧品や健康食品のように比較検討を重ねるカテゴリが多く、情報提供の質が重要です。コンビニエンスストア(CVS)では、「ついで買い」を促す棚配置やレジ横の商品展開が売上を左右します。
「消費者行動」とIT活用
デジタル技術の進化により、消費者行動はかつてないほど詳細に捉えられるようになりました。
ID-POSデータが行動分析の基盤です。 従来のPOSデータは「何が売れたか」しかわかりませんでした。ID-POSでは、誰が・いつ・何を・どれだけ買ったかを個人単位で追跡できます。これにより、購買頻度の変化や、併買パターン(一緒に買われる商品の組み合わせ)を分析し、消費者行動の実態を数値で把握できます。
カスタマージャーニーの設計にデータを活かせます。 カスタマージャーニーとは、顧客が商品を認知してから購入・再購入に至るまでの道筋を描いたものです。アプリの閲覧履歴、チラシのクリック率、店舗での購買データを組み合わせることで、AISASモデルの各段階でどこに離脱ポイントがあるかを特定し、改善策を講じられます。
AI・機械学習による行動予測が進んでいます。 過去の購買履歴や来店パターンをAIに学習させることで、「この顧客は来週何を買いそうか」を予測できるようになっています。この予測をもとにしたパーソナライゼーション(個人に最適化されたクーポンやおすすめの提示)は、非計画購買を計画的に創出する手法として注目されています。
店舗内の行動もデータで捉える時代です。 AIカメラやビーコン(小型発信機)を活用し、顧客の店内動線・滞留時間・棚の前での立ち止まり行動を計測する技術が実用化されています。こうしたデータは、棚割りや販促物の配置を科学的に最適化するために使われ、「売場のデジタルツイン(デジタル上の売場再現)」として活用が広がっています。
まとめ
消費者行動の理解は、小売業のあらゆる打ち手の起点です。AIDMAやAISASといったモデルを知識として持ちつつ、ID-POSやAIカメラなどのデジタル技術で実際の行動データを収集・分析することが求められます。計画購買と非計画購買の比率を自社のデータで把握し、業態に応じた売場施策に反映させましょう。データに基づく消費者理解が、感覚頼りの小売から脱却する第一歩です。
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