TikTok Shop のビジネスモデルを図解

TikTok Shopとは？日本のEC業界に変革をもたらす「ショップエンターテイメント」

2025年6月に日本市場に本格参入するTikTok Shopが、先行導入された国のEC業界に大きな波紋を広げています。従来のEコマースとは一線を画す「ショップエンターテイメント」というコンセプトにより、世界各国で急速にシェアを拡大しているこのプラットフォームは、どのような仕組みで成功を収めているのでしょうか。
TikTok Shopの最大の特徴は、縦型動画コンテンツを通じた「発見型コマース」にあります。ユーザーは商品を検索するのではなく、エンターテイメント性の高いコンテンツを楽しみながら自然と商品に出会い、そのまま購入に至る体験を提供しています。
この革新的なアプローチは、特に若年層を中心に大きな支持を集めており、既存のAmazonや楽天のような検索型ECプラットフォームとは明確に差別化された市場を創出しています。

TikTok Shopのビジネスモデル｜4つの主要プレイヤーで構成されるエコシステム

TikTok Shopのビジネスモデルは、以下の4つの主要プレイヤーが有機的に連携することで成り立っています。

出品者（セラー）

商品・サービスの提供から在庫管理、価格設定、顧客対応まで、販売活動全般を担当します。TikTok Shopが提供する分析ツールや広告機能を活用し、売上最大化を目指します。いわゆるEC事業者の立場はここです。

クリエイター・インフルエンサー

TikTok Shopの「顔」とも言える存在で、ショート動画やライブストリーミングを通じて商品の魅力を伝えます。アフィリエイトプログラムに参加することで、売上に応じたコミッションを獲得できる仕組みが整備されています。

プラットフォーム（TikTok Shop）

商品掲載、決済システム、マッチング機能、販売支援ツール、物流サポートまで、ECプラットフォームとしての基盤全体を提供・運営します。

購入者（エンドユーザー）

「ショップエンターテイメント」を体験し、商品を発見・購入する最終消費者です。

なんとなく眺めていたTikTokで興味を持った商品を即購入できることで、従来のEC体験とは異なる、エンターテイメント性を重視した購買体験を享受します。

TikTok Shopの収益構造｜多角的な収益源で安定成長を実現

TikTok Shopは複数の収益源を組み合わせることで、持続可能なビジネスモデルを構築しています。

プラットフォーム手数料

・米国市場

商品カテゴリーに応じて5%～15%の紹介料
取引手数料：2.18%+α

・英国市場

標準コミッション料：9%
新規セラー向け割引制度あり

・東南アジア市場

国・商品カテゴリーにより変動
フィリピン例：5%～8.5%程度

アフィリエイトコミッション

出品者は商品価格の10%～50%の範囲でクリエイターにコミッションを設定可能です。平均は約14%とされていますが、商品特性やクリエイターの影響力によって大きく変動します。

TikTok Shop Ads

クリック課金（PPC）モデルを採用した広告プログラムです。米国では日額50ドルからキャンペーンを開始でき、商品詳細ページの情報を活用した効果的な広告配信が可能です。

FBT（Fulfilled by TikTok）

在庫保管から配送まで一括代行するフルフィルメントサービスです。AmazonのFBAと同様です。
米国： 1個あたり3.58ドルから、最初の30日間は保管料無料
英国： 1個あたり2.99ポンドから（2024年10月時点）

グローバル展開戦略｜各市場の特性に合わせた柔軟なアプローチ

・米国市場：セキュリティと透明性を重視

USDS（U.S. Data Security）設立によるデータセキュリティ強化
透明性センター（DTC）設置でアルゴリズム監査を実現
ShipBobとの物流提携によるFBTサービス拡充
返金管理手数料：返金された紹介料の20%

・英国市場：規制対応と物流インフラ整備

UK GDPR完全準拠
「Project Clover」によるデータ管理体制強化
2023年8月からFBTサービス開始
共同出資による送料無料プログラム

・東南アジア市場：現地化戦略と規制対応

「Ship by TikTok」による統合物流サービス
アフィリエイト参加要件：フォロワー数1,000人以上
インドネシア：Tokopediaとの統合で現地規制クリア
配送遅延時の無償返金機能

・日本市場：2025年6月ローンチ予定

ライブストリームコマース中心の戦略
東南アジア成功モデルの踏襲
個人情報保護法への完全準拠
楽天・Amazonとの競争激化予想

日本の小売・EC事業者が押さえるべきポイント

ライブコマースの重要性

TikTok Shopの日本戦略では、ライブストリームコマースが中心となる見込みです。リアルタイムでの商品紹介と購入体験は、従来のEC体験を大きく変える可能性があります。

クリエイターエコノミーとの連携

成功のカギは優良なクリエイターとのパートナーシップです。商品特性に適したクリエイターの発掘と、継続的な関係構築が重要となります。

データ活用とプライバシー対応

個人情報保護法への準拠は必須です。同時に、蓄積されるユーザーデータの効果的な活用方法を検討する必要があります。

まとめ：TikTok Shopが描くEC業界の未来図

TikTok Shopの「ショップエンターテイメント」は、単なる新しい販売チャネルではありません。コンテンツ起点の発見型コマース、クリエイターエコノミーとの融合、包括的な物流サポートにより、EC業界全体のパラダイムシフトを促す可能性を秘めています。
日本市場への本格参入を控えた今、EC事業者にとってTikTok Shopのビジネスモデル理解は、将来の競争戦略を考える上で避けて通れない課題と言えるでしょう。従来の検索型ECとは異なるアプローチが求められる時代に、いかに適応し、新たなビジネスチャンスを掴むかが問われています。