「物流」とは
物流とは、商品を生産地から消費者の手元に届けるまでの一連の活動を指します。具体的には、輸送、保管、荷役(にやく:荷物の積み下ろし)、包装、流通加工(値札付けやセット組み)、情報管理の6つの機能で構成されます。英語では「Logistics(ロジスティクス)」と呼ばれます。
物流とサプライチェーンは異なる概念です。 サプライチェーンは原材料の調達から販売までの「商流(取引の流れ)」を含む全体像を指します。一方、物流はそのうち「モノの移動と管理」に焦点を当てた活動です。たとえば、メーカーとの価格交渉はサプライチェーンの領域ですが、商品をセンターから店舗に届ける作業は物流の領域です。
また、日本語で「物流」と「ロジスティクス」を使い分ける場合があります。物流が個々の輸送・保管活動を指すのに対し、ロジスティクスはそれらを戦略的に最適化する管理手法を意味します。ただし、実務では同義として扱うケースが大半です。
「物流」の重要性
小売業にとって物流は、売上とコストの両面に直結する重要な経営課題です。
物流コストは売上高の約5%を占めます。 日本ロジスティクスシステム協会の調査によると、小売業の売上高物流コスト比率は平均4.8〜5.5%で推移しています。人件費や燃料費の上昇が続く中、この比率の改善が利益確保のカギとなります。
「2024年問題」がコスト構造を変えました。 2024年4月からトラックドライバーの時間外労働に年960時間の上限が適用されました。これにより長距離輸送の制約が強まり、中継拠点の整備やモーダルシフト(トラックから鉄道・船舶への転換)が進んでいます。小売業は配送頻度の見直しやリードタイム(発注から届くまでの時間)の再設計を迫られています。
業態ごとに物流の課題は異なります。 スーパーマーケット(SM)では、生鮮食品のコールドチェーン(低温物流)の維持が重要です。ドラッグストア(DgS)では、医薬品の温度管理や使用期限管理に加え、多店舗展開に伴う配送効率が課題です。コンビニエンスストア(CVS)では、1日3〜5回の多頻度小口配送を支える仕組みが競争力の源泉となっています。
ECの拡大がラストワンマイル物流を変えています。 ネットスーパーやBOPIS(ネットで注文して店舗で受け取るサービス)の普及により、店舗を起点とした配送網の構築が求められています。従来の「センターから店舗へ」という物流に加え、「店舗から自宅へ」という新たな動線が生まれました。
「物流」とIT活用
物流の効率化と可視化を実現するために、さまざまなITツールが活用されています。
WMS(倉庫管理システム)が物流センターの要です。 WMSは入荷・検品・保管・ピッキング(商品を棚から取り出す作業)・出荷の工程をデジタルで管理します。バーコードやRFID(電子タグ)と連携することで、在庫の位置と数量をリアルタイムに把握できます。在庫管理の精度が向上し、欠品や過剰在庫を防ぎます。
TMS(輸配送管理システム)が配送を最適化します。 配送ルートの自動計算、積載率のシミュレーション、配車計画の作成などを担います。AIを組み合わせれば、交通状況や天候を加味した動的なルート最適化も可能です。燃料費の削減とCO2排出量の低減にも貢献します。
需要予測との連携が在庫配置を変えます。 POSデータや気象データを基に需要を予測し、必要な商品を必要な拠点にあらかじめ配置する「事前配置型物流」が広がっています。これにより緊急配送が減り、全体の物流コストを抑えられます。
マテハン(マテリアルハンドリング)の自動化が加速しています。 自動倉庫、仕分けロボット、AGV(無人搬送車)など、物流センター内の作業を自動化する設備投資が拡大しています。人手不足への対応と処理能力の向上を同時に実現する手段として注目されています。
SCMシステムとの統合が全体最適をもたらします。 物流データを調達や販売のデータと一元管理することで、サプライチェーン全体の可視化が可能になります。メーカー・卸売・小売が物流情報を共有する取り組みも進んでおり、業界全体での効率化が期待されています。
まとめ
物流は、小売業の「当たり前の品揃え」を支える基盤です。人手不足とコスト上昇が続く中、ITを活用した効率化は避けて通れません。まずはWMSによるセンター内の可視化と、需要予測に基づく発注・配送の最適化から着手することをおすすめします。自社の業態や配送網に合わせて、段階的にデジタル化を進めましょう。
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