ハイ&ロー(Hi-Lo Pricing)|小売DX用語

「ハイ&ロー」とは

ハイ&ロー(Hi-Lo Pricing)とは、商品の通常価格をやや高めに設定しておき、チラシやセールなどで定期的に大幅な値引きを行うプライシング戦略(価格設定の方針)です。英語では「Hi-Lo Pricing」や「High-Low Pricing」と表記します。

日本の食品スーパーマーケット(SM)やドラッグストア(DgS)の大半が、この価格戦略を採用しています。「今日はお買い得!」という訴求で消費者の購買意欲を刺激し、特売日に来店を促すことが基本的な狙いです。日替わり特売、週末セール、ポイント倍増キャンペーンなどが代表的な販促(消費者の購買を促す活動)手法にあたります。

対照的な考え方がEDLP(Every Day Low Price)です。EDLPは特売を行わず、毎日同じ低価格で販売する方針で、米国のWalmartや日本のトライアルカンパニー、OKストアなどが採用しています。ハイ&ローでは通常価格がEDLP企業より10〜30%ほど高い一方、特売時にはEDLP価格を下回ることもあります。両者は「メリハリで集客するか、安定価格で信頼を得るか」という根本的な考え方の違いがあります。

「ハイ&ロー」の重要性

ハイ&ローは、日本の小売業で最も普及した価格戦略です。新聞折込チラシ文化と深く結びついており、折込チラシの大半が小売業の特売告知に使われています。

スーパーマーケット(SM) では、生鮮食品の日替わり特売が集客の柱です。卵や牛乳などを原価割れ覚悟の「目玉商品」として提供し、来店した消費者に通常価格の商品も一緒に買ってもらうことで、店舗全体の利益を確保します。この手法を「粗利ミックス」と呼びます。特売品単体では赤字でも、買い物かご全体で利益が出る構造です。

ドラッグストア(DgS) では、日用品や飲料を特売価格で提供し、利益率の高い医薬品や化粧品の「ついで買い」を誘う戦略が主流です。近年は食品の特売で集客するDgSが増えており、SMとの競合が激化しています。

コンビニエンスストア(CVS) は基本的に定価販売ですが、近年はアプリクーポンによる実質値引きで、ハイ&ロー的な要素を取り入れる動きが広がっています。

一方で、ハイ&ローには課題もあります。特売ごとにチラシの制作費、値札貼り替えの人件費、物流コストが発生します。特売に伴うオペレーションコストが売上の1〜3%を占めるという試算もあります。さらに、消費者が特売品だけを買い回る「チェリーピッカー」になるリスクも無視できません。こうした課題を背景に、ハイ&ローとEDLPを組み合わせた「ハイブリッド型」のプライシング戦略を採用する企業も増えています。

「ハイ&ロー」とIT活用

DXの進展により、ハイ&ローは「勘と経験による値付け」から「データに基づく価格最適化」へと進化しています。

AIによるダイナミックプライシング は、その代表例です。POSデータ(販売時点の情報)、在庫状況、天候、競合価格などをAIが分析し、最適な値引き幅とタイミングを自動で算出します。食品の賞味期限が近い商品に対して値引きタイミングを最適化した実証実験では、廃棄量を20〜30%削減した事例も報告されています。

電子棚札(ESL) の導入も、ハイ&ロー運用の効率化に直結します。従来は特売のたびに従業員が何百枚もの値札を手作業で貼り替えていました。電子棚札なら、本部からの一斉配信で瞬時に価格表示を変更できます。ある食品スーパーでは、年間約2,000時間の作業削減を実現しています。

デジタルチラシとアプリクーポン の活用も進んでいます。ID-POSデータ(会員IDに紐づいた購買履歴)を分析し、顧客一人ひとりに合わせた特売情報を届ける「パーソナライズ販促」が可能になりました。全員に同じチラシを配る従来型より、はるかに高い販促効率を実現します。顧客ごとの購買傾向を把握したうえでクーポンを配信する手法は、ハイ&ローの進化形といえるでしょう。

まとめ

ハイ&ロー(Hi-Lo Pricing)は、通常価格と特売価格の差で「お得感」を演出し集客する、日本の小売業で最も広く使われているプライシング戦略です。EDLPと比べて短期的な集客力に優れる反面、チラシや値札変更に伴うオペレーションコストが課題になります。AI価格最適化、電子棚札、パーソナライズクーポンといったDXツールを活用することで、ハイ&ローの効果を高めながらコストを抑える運用が現実的になっています。まずは自社の特売商品ごとの利益貢献度をPOSデータで可視化し、「成果の出ている販促」と「見直すべき販促」を仕分けるところから始めてみてください。


関連用語:

CONTACT

DXのお悩み、
代表が直接お答えします


相談はこちら →

最新情報をチェックしよう!

は行の最新記事8件