セルワンバイワン方式とは
セルワンバイワン方式(Sell One, Buy One)とは、売れた数量と同じ数量を補充発注する方式です。POSの販売実績を発注数量の算定に使う、比較的単純な自動発注方式です。
筆者が1992年に最初に就職した大手ドラッグストアではすでに採用されていました。本部からの指示連絡がFAXで届いていた時代にも存在した古典的な自動発注の仕組みです。
在庫を「売れた分だけ戻す」ため、発注残を含む在庫ポジションを一定水準に保つ設計です。ただし、手持在庫は販売によって減少し、補充品が納品されると回復するため、常に一定になるわけではありません。発注ロジックが単純で、設定項目が比較的少ない点が特徴です。
仕組み
基本的な発注量は、次の式で求めます。
発注量 = 前回の発注締め以降の販売数量
実際の発注量は、発注単位、最低発注数量、発注残などを考慮して調整されます。
前回の発注締め以降に13個売れれば、発注量は13個です。ただし、ケース単位で発注する商品は入数に合わせて調整します。発注点の計算は不要ですが、欠品を防ぐには、初期在庫や基準在庫を需要量とリードタイムに応じて設定する必要があります。
セルワンバイワン方式のメリット
在庫を抑えやすい
売れた数量を基準に補充するため、需要よりも過剰な発注を抑えやすくなります。ただし、初期在庫や基準在庫を高く設定すると、過剰在庫は発生します。適切に設定すれば、在庫回転率を高め、在庫に固定される資金や廃棄ロスを抑えられます。

設定と運用が単純
発注点・補充点・安全在庫といったパラメータの設計と維持が不要です。発注点や補充点を個別に設定する方式と比べて、発注数量の算定ロジックは単純です。
鮮度を保ちやすい
高頻度で少量ずつ納品できれば、在庫の滞留を抑えやすくなります。先入れ先出しや期限管理と組み合わせることで、日配品など、鮮度が制約となるカテゴリーに適用できます。
セルワンバイワン方式のデメリット
需要の急増に追いつきにくい
この方式は、原則として販売実績を基に補充するため、将来の需要増を先回りして発注できません。テレビ・SNSでの紹介、天候の急変、競合店の休業などで需要が急増した場合、増加分を後追いで発注することになり、納品リードタイム中に欠品するリスクがあります。
納品頻度と品出し工数が増える
販売数量をそのまま補充すると、発注が小口化しやすくなります。小口での高頻度納品が増えると、荷受け・検品・カゴ車移動・棚補充・空箱処理など、納品1回ごとに発生する作業が増えます。店舗の作業能力が不足すると、品出しが遅れ、商品がバックヤードに滞留します。
欠品が自動回復しにくい
棚が空いている間は販売実績が発生しないため、販売数量を起点とする追加発注も発生しません。発注残がなく、システム上の在庫だけが残る場合は、欠品が継続します。棚卸し、在庫補正、欠品検知、例外発注の仕組みがなければ、自動では回復しにくい構造です。

発注点補充点方式との使い分け
需要が安定し、納品リードタイムが短く、高頻度で補充できる商品には、セルワンバイワン方式が適します。需要変動に備えて一定量をまとめて発注し、保存が効き、納品頻度を抑えたい商品は発注点補充点方式が適します。
自動発注の導入初期にセルワンバイワン方式を選び、欠品が増えたため需要予測型へ移行するという流れは、多くのチェーンでおこります。全カテゴリーに一律で適用せず、需要変動、鮮度、発注単位、リードタイム、納品頻度によって使い分ける設計が望ましいです。

セルワンバイワン方式は在庫を最小化できる代わりに、需要の急増と欠品からの回復に弱い方式です。導入するなら、欠品検知と例外対応の仕組みをセットで用意することが望ましいです。自動発注の導入後に欠品が増える原因の全体像は自動発注で欠品が増える理由で解説しています。