発注点補充点方式とは
発注点補充点方式とは、有効在庫が発注点以下になった時点で、補充点までの不足分を発注する方式です。一般にMin-Max方式に相当し、在庫理論では(s,S)方策として表されます。
発注のタイミングを決める下限値(発注点)と、補充の到達水準を決める上限値(補充点)の2つを使う点が特徴です。
定量発注方式が「発注点を下回ったら固定量を発注する」のに対し、この方式では発注量が有効在庫に応じて変動します。定量発注方式から派生した方式と位置づけられます。
仕組みと計算例
基本的な発注量は、次の式で求めます。
発注量 = 補充点 - 発注時点の有効在庫
有効在庫 = 手持在庫 + 発注済み未入荷数 - 引当済み数量
実際の発注量は、発注単位、最低発注数量、入数などに合わせて調整します。
発注点が90個、補充点が130個の商品で、有効在庫が85個まで減った場合を考えます。
85個は発注点90個以下であるため発注が起動し、発注量は130-85=45個となります。有効在庫が70個まで減っていれば、発注量は130-70=60個です。有効在庫が少ないほど発注量は多くなります。
納品頻度を抑えられる理由
発注点と補充点の差を大きく設定すると、毎回まとまった量を補充するため、次に発注点へ到達するまでの期間が長くなります。結果として納品回数が減り、荷受け・検品・品出しの固定工数と物流コストを抑えられます。1回あたりの入荷量は増えるため、売場とバックヤードに置ける在庫量が制約条件になります。
他の発注方式との違い
セルワンバイワン方式との違い
セルワンバイワン方式は売れた数量と同じ数量を補充発注する方式です。したがって納品が毎日小口で発生します。在庫は最小になりますが、納品頻度と品出し工数は最大になります。
発注点補充点方式は、発注点と補充点の差を広げることで、1回当たりの発注量を増やし、発注頻度を抑えられます。どちらが適するかは、商品の回転率、消費期限・賞味期限、納品条件、店舗の保管能力と作業能力で決まります。
定期発注方式との違い
定期発注方式は、あらかじめ決めた周期で在庫を確認し、必要量を発注します。発注日が固定されるため計画を立てやすい一方、需要が想定を上回ると、次回の発注日までに欠品するリスクがあります。

小売実務での適用
向いている商品
需要が比較的安定し、保存が利き、発注や納品をまとめたい商品に向きます。加工食品、日用雑貨、医薬品などが該当します。季節性のある定番品に適用する場合は、需要の変化に合わせて発注点と補充点を更新する必要があります。
向いていない商品
発注点と補充点の差を大きく設定する運用は、日配品や生鮮食品には向きません。まとめて補充すると販売期限内に売り切れず、値引きや廃棄が増えるためです。これらの商品では、補充点を低く設定するか、納品頻度を上げてセルワンバイワン方式や定期発注方式で管理する方法が適します。
また、複数パラメーターを用いてカテゴリーごとに補充点、発注点を可変にするシステムをオリジナルで作成する企業もあります。これを作るためには深い業務理解と専用の店舗オペレーションが必要で汎用の自動発注システムでは実現できません。
需要変動の激しい商品
販促品、季節品、イベント連動商品は需要が急変するため、固定した発注点と補充点では追従しにくくなります。需要予測に基づいてパラメータを更新するか、定期発注方式などを組み合わせる必要があります。
新商品
類似商品の実績を基に初期値を設定します。発売後は販売実績が一定量蓄積した段階で更新し、需要傾向を把握できるまでは人が補正する運用とします。
設定を維持する体制が要る
発注点と補充点という2つのパラメータを持つため、見直しの負荷は定量発注方式より大きくなります。売場変更や競合出店で需要が変われば両方の値を更新する必要があります。棚卸による在庫精度の確保に加え、見直しの担当と頻度、更新頻度を決めないまま導入すると、時間の経過とともに欠品や過剰在庫が増加します。
発注点補充点方式とIT活用
自動発注システムでの実装
小売向けの自動発注システムでは、この方式を選択肢の1つとして実装している製品があります。SKU単位・店舗グループ単位でパラメータを保持し、POS実績から推奨値を提示する機能を備えた商品もあります。
需要予測との組み合わせ
固定のパラメータではなく、予測需要から発注点と補充点を日次で算出するシステムもあります。需要予測の精度と在庫データの精度を確保できれば、販促週や連休前後の需要変動に対応し、固定値運用と比べて欠品と過剰在庫を抑えられる可能性があります。
発注点補充点方式では、発注点と補充点の差を広げるほど、1回当たりの発注量が増え、発注頻度を抑えやすくなります。一方、平均在庫と保管量が増えるため、売場とバックヤードの収容力、納品条件、品出し能力が設計上の制約条件になります。自動発注システムを導入した後に欠品が増える原因は自動発注で欠品が増える理由で整理しています。