発注点とは
発注点(Reorder Point)とは、在庫がこの水準まで減ったら発注をかける、という基準値です。定量発注方式(発注点方式)の中核をなす数値で、在庫が発注点以下になった時点で、あらかじめ決めた量を発注します。
発注のタイミングを在庫数量で決めるため、担当者の勘に依存せずに運用できます。
発注点の計算式
発注点は次の式で求めます。
発注点 = 1日当たりの平均需要量 × 発注リードタイム(日)+ 安全在庫
リードタイム中の需要を賄う在庫を確保することが基本の考え方です。そこに需要変動を吸収する安全在庫を上乗せします。1日当たりの平均需要量が20個、リードタイムが3日、安全在庫が30個であれば、発注点は20×3+30=90個となります。
発注点が低すぎるとき・高すぎるとき
発注点を低く設定すると在庫は減りますが、リードタイム中の需要増に対応できず、欠品しやすくなります。高く設定すると欠品は減りますが、在庫が積み上がり、賞味期限の短い日配品や生鮮品では廃棄ロスにつながります。発注点は、在庫量と欠品リスクのバランスを決めるパラメータです。
カテゴリーによる考え方の違い
季節品や販促品は平常時の平均需要量が参考にならないため、固定の発注点では対応しにくくなります。新商品は販売実績がないため、類似商品の実績を代用するか、当面は人が判断する運用とします。
発注点と安全在庫・補充点の違い
安全在庫との違い
安全在庫は、需要変動とリードタイム変動に備えるための緩衝在庫の「量」です。発注点は、その安全在庫を含んだうえで発注を起動する「水準」を指します。安全在庫は発注点を構成する一要素という関係になります。
補充点との違い
発注点が「いつ発注するか」を決める下限値であるのに対し、補充点は「どこまで補充するか」を決める上限値です。両方を併用する方式を発注点補充点方式と呼びます。定量発注方式では毎回同じ量を発注し、発注点補充点方式では補充点までの不足分を発注します。
小売店舗で発注点がずれる原因
理論在庫と実在庫の乖離
万引き、廃棄・見切り・入出庫の登録漏れや誤登録によって理論在庫が実在庫より多くなると、システムは発注点への到達を判定できず、欠品を招きます。発注点の設定を精緻化する前に、棚卸しと入出庫処理の徹底によって在庫精度を確保する必要があります
初期設定の放置
発注点は導入時点の需要構造を前提に算出されます。売場の移動、競合店の出店、棚割の変更で需要が変われば適正値も変わります。見直しの担当者と頻度を決めていない運用は、時間の経過とともに実態から乖離します。
リードタイムの実態とのズレ
計算に使うリードタイムが、契約上の日数のまま更新されていない場合があります。実際の納品実績から算出し直すと、発注点が過大または過小になっていることが判明する場合があります。
なお、2026年1月施行の取適法の適用対象となる取引では、適正なコスト負担を伴わない短納期発注が同法上の問題となるおそれがあります。

発注点とIT活用
自動発注システムによる判定
POSの販売実績と在庫データを基に、システムが発注点への到達を自動判定し、発注データを生成します。人手による在庫確認と計算の作業を削減し、発注漏れによる欠品リスクを抑えます。
需要予測と連動した動的な発注点
固定の発注点ではなく、曜日・天候・販促の影響を織り込んだ需要予測に基づき、発注点を日次で変える方式もあります。季節変動やイベントの影響が大きいカテゴリーほど、効果が期待できます。
発注点は、在庫管理における主要な設計値の1つです。ただし、発注点の精度は在庫データの精度を超えません。設定を精緻化する前に、在庫精度と品出しの実行精度を確認してください。発注方式全体の整理は「小売店舗の発注方式」、自動発注の導入後に欠品が増える原因は「自動発注で欠品が増える理由」で解説しています。