視察した店舗の概要
ジャカルタ南部、イオンモール・タンジュンバラットのOH!SOMEを視察した。
黄色いコンテナを模した外装に白いロゴを掲げ、間口を全面開放した造作である。店内はコスメ、雑貨、ぬいぐるみ、菓子、即席麺までを1店に収める大型のバラエティ雑貨店で、ゾーンごとに壁と天井の色を変えている。
企業概要と業態の位置づけ
注目したいのは資本の経緯である。ブランドの発祥は中国のKKグループ(広東快客電子商務有限公司)で、2020年3月にKKVとしてインドネシアに進出した。しかし2024年8月1日、KKグループと現地パートナーのBlue Origin Groupとのライセンス契約が満了。KKグループ側は現地法人PT KKV International Indonesiaの持分を売却し、既存店舗はすべてOH!SOMEへ改称された。店舗網と運営体制はそのまま残り、看板だけが替わった構図である。
さらに2026年4月30日、KKグループはKKV/X11/The Coloristの3ブランドで自社直接運営として再参入した。かつてのライセンシーが独立ブランドとして残り、元のライセンサーが同じ市場で競合する構造になっている。
店舗立地と周辺地域の特徴
イオンモール・タンジュンバラットは2021年11月18日開業、インドネシアのイオンモール4号店にあたる。開発はSinar Mas Landで、イオングループとのライセンス契約に基づく。延床面積は約97,000平方メートル、地上6階・地下3階、テナント数177。Southgate Residenceのアパートとオフィスを併設した複合開発である。タンジュンバラット駅に隣接し、南ジャカルタの中間所得層ファミリーが主要な来街者と考えられる。
視察時は1階の食品スーパーとパン屋が賑わいを見せており、ついでに上階に立ち寄るという構造。
業態内での特徴
売場の設計思想は明快で、「低単価×多色×面展開」である。
コスメゾーンでは、リップティントを数百個単位で壁面に並べる。同一形状で色数を並べることで、売場自体を装飾に変えている。手前には試し塗り用のスワッチが並び、価格はRp.25,900(およそ250円前後)と表示されていた。
同じ手法は食品ゾーンでも反復される。韓国のカップトッポギを黄色いペグボードの壁一面に数百フェイスで展開し、「SO HOT SO HOT SO HOT」などのイラストPOPを差し込む。1品を大量に見せて写真映えを作り、SNS投稿を誘発する構成である。天井にミラーを張った通路も、撮影を前提にした設計と読める。


小売DX・店舗運営上の示唆
レジ前には「SVIP CUSTOMER ONLY」の専用レーンが設けられ、隣にはGrabMartの「PICK UP POINT」表示があった。会員階層による優先レーンと、デリバリー基盤を使った店頭ピックアップを同じカウンター周りに同居させている。
オンライン注文の受け渡し拠点に実店舗を使う設計は、GrabやGoJekの配達網が生活基盤になっている市場では合理的である。

加えて、リブランド後もIPライセンス(Disney、Toy Story、Zootopia等)を継続確保している点は注目に値する。看板を替えた直後にIP調達力を維持できるかは、ライセンシー側の交渉力を測る指標になる。KKグループの再参入で、両者のIP調達競合も起きうる。
郡司の一言コメント
看板だけが替わり、店舗網と売場はそのまま残るリブランドは、ライセンス型の海外展開が持つ構造的なリスクを示している。元ライセンサーが同じ市場に自社で戻ってきた今、商品調達力とIP確保でどちらが優位を保つかが見どころである。