「セルフメディケーション」とは
セルフメディケーションとは、WHO(世界保健機関)の定義によると「自分自身の健康に責任を持ち、軽度な身体の不調は自分で手当てすること」を指します。英語では「Self-Medication」と表記します。
具体的には、頭痛や風邪の初期症状、軽い胃もたれなどに対して、医療機関を受診せずにOTC医薬品(処方箋なしで薬局・薬店で購入できる医薬品)を活用して対処する行動を意味します。日本では高齢化の進展と医療費の増大を背景に、国としてもセルフメディケーションを推進しています。
OTC医薬品にはリスクの程度に応じた分類があります。第1類医薬品は薬剤師のみが販売できます。 副作用リスクが高い成分を含むため、購入時に書面での情報提供が義務づけられています。第2類医薬品と第3類医薬品は、薬剤師に加えて登録販売者も販売が可能です。この販売資格の区分は、薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)で定められています。
「セルフメディケーション」の重要性
セルフメディケーションが小売業界で注目される理由は、社会的な要請と事業機会の両面にあります。
国民医療費の抑制に貢献します。 日本の国民医療費は年間約46兆円に達しています。軽症の段階でOTC医薬品を活用すれば、医療機関への受診を減らし、医療費の適正化につながります。厚生労働省もこの考え方を支持し、セルフメディケーション税制(特定の医薬品購入額が年間1万2,000円を超えた場合に所得控除を受けられる制度)を2017年に導入しました。対象となるのはスイッチOTC医薬品(もともと処方薬だった成分を市販薬に転用したもの)が中心です。
ドラッグストア(DgS)が最も恩恵を受ける業態です。 日本チェーンドラッグストア協会の調査では、DgSの市場規模は約9兆円を超えています。OTC医薬品の売上構成比は店舗全体の約1〜2割ですが、粗利率が高い商品群であり、カウンセリング販売を通じた顧客との信頼構築にもつながります。登録販売者の配置により、第2類・第3類医薬品の販売体制を整えることが競争力の源泉となっています。
スーパーマーケット(SM)やコンビニエンスストア(CVS)も関連します。 SMでは医薬品販売の許可を取得した店舗が増えており、ワンストップショッピングの強化に活用されています。CVSでも第2類・第3類の一部を取り扱う店舗が登場しています。ただし、いずれの業態も登録販売者の確保が課題です。
「セルフメディケーション」とIT活用
セルフメディケーションの推進には、ITの力が欠かせません。デジタル技術を活用することで、顧客の安全性と利便性を両立できます。
POSデータの分析がカウンセリング品質を高めます。 顧客の購買履歴をPOSシステムから抽出し、過去に購入したOTC医薬品の情報を店頭の端末に表示できれば、薬剤師や登録販売者はより的確な助言が可能になります。たとえば、同じ鎮痛剤を繰り返し購入している顧客には、受診勧奨(医療機関の受診をすすめること)を行うといった対応が考えられます。
オンラインでのOTC医薬品販売も拡大しています。 2014年の規制緩和以降、第1類医薬品を含むOTC医薬品のネット販売が可能になりました。ただし、第1類医薬品はオンラインでも薬剤師による情報提供が必要です。チャットやビデオ通話による服薬指導を組み合わせたEC販売の仕組みが整備されつつあります。
まとめ
セルフメディケーションは、生活者が自らの健康管理に主体的に取り組む考え方であり、小売業にとっては社会貢献と事業成長を両立できるテーマです。特にDgSでは、OTC医薬品のカウンセリング販売と税制対応が他業態との差別化要因になります。アプリやPOSを活用して顧客の健康データを蓄積し、適切な情報提供につなげることが今後の鍵です。まずは自社の登録販売者・薬剤師の体制を確認し、デジタルツールとの連携を検討してみてください。
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