「食品ロス」とは
食品ロスとは、まだ食べられるにもかかわらず廃棄される食品のことです。英語では「Food Loss」と呼ばれますが、厳密にはフードロス(Food Loss)とフードウェイスト(Food Waste)は区別されます。フードロスは生産・流通段階で発生する損失を指し、フードウェイストは小売・外食・家庭での廃棄を指します。日本では両者をまとめて「食品ロス」と呼ぶのが一般的です。
農林水産省の推計によると、日本の食品ロス量は年間約472万トン(2022年度)です。このうち事業系食品ロスは約236万トンで、小売業はその主要な発生源のひとつです。金額に換算すると、小売業全体で年間数千億円規模の損失が生じていると考えられています。
「食品ロス」の重要性
食品ロスの削減は、経営面・環境面・法規制面の三方向から小売業にとって重要な課題です。
廃棄コストが利益を直接圧迫します。 売れ残った食品は、仕入れ原価だけでなく廃棄処理費用も発生します。とくに日配品(毎日配送される食品)や生鮮食品の比率が高いスーパーマーケット(SM)では、値引き・廃棄のコントロールが粗利率を大きく左右します。商品回転率の改善と食品ロス削減は表裏一体の関係にあります。
「1/3ルール」が業界特有の課題を生んでいます。 日本の食品流通には、製造日から賞味期限までを3等分し、最初の1/3以内にメーカーから小売店へ納品するという商慣習があります。この1/3ルールにより、まだ十分食べられる商品が納品期限切れとして返品・廃棄されるケースが多発しています。近年は賞味期限の延長や納品期限の緩和(1/2ルールへの移行)に取り組む企業も増えています。
業態ごとに課題の重点が異なります。 スーパーマーケット(SM)では生鮮・惣菜の見切り判断が鍵です。コンビニエンスストア(CVS)では弁当・おにぎりなど販売期限の短い商品の発注精度が問われます。ドラッグストア(DgS)では食品の取扱い拡大に伴い、賞味期限管理のノウハウ構築が急務となっています。
法制度の後押しも強まっています。 2019年に施行された食品ロス削減推進法により、事業者には食品ロスの削減に取り組む責務が明記されました。企業のESG(環境・社会・ガバナンス)評価においても、食品ロス削減の取り組みが注目されています。
「食品ロス」とIT活用
DXの力を活用することで、食品ロスの発生を「経験と勘」に頼らず科学的に抑制できます。
需要予測が最も効果的な対策です。 AIを活用した需要予測システムは、天候・曜日・イベント・過去の販売実績などを複合的に分析し、商品ごとの適正発注量を算出します。あるスーパーマーケットでは、AI需要予測の導入により食品廃棄量を約30%削減した事例が報告されています。
ダイナミックプライシングで売り切りを促進できます。 賞味期限が近づいた商品に対して、電子棚札やアプリを通じてリアルタイムに値引き価格を表示する仕組みです。従来の手作業による値引きシール貼りと比べ、タイミングの最適化と人件費の削減を同時に実現します。
POSデータと在庫管理の連携が基盤となります。 販売データと在庫データをリアルタイムで突き合わせることで、売れ行きの変化をいち早く察知できます。KPIとして廃棄率・値引き率・SKU別の売り切り率などをデータドリブン(データに基づく意思決定)で管理する企業が増えています。
SCM(サプライチェーン管理)の最適化も欠かせません。 メーカー・卸・小売間で販売データや在庫データを共有することで、流通段階での過剰在庫を防げます。1/3ルールの緩和もITによるデータ共有があって初めて安全に実現できます。
まとめ
食品ロスは、小売業にとってコスト削減と社会的責任の両面から取り組むべき重要課題です。AI需要予測やダイナミックプライシングなどのDXツールを活用すれば、廃棄を減らしながら売上を維持する「攻めの食品ロス対策」が可能になります。まずは自店舗の廃棄データを可視化し、どのカテゴリで最もロスが発生しているかを把握することから始めてみましょう。
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