「コンポーザブルコマース」とは
コンポーザブルコマース(Composable Commerce)とは、EC基盤を単一のパッケージ製品で構築するのではなく、検索、決済、在庫管理、CRM、レコメンドなどの機能ごとに最適なサービスを選び、API(プログラム同士をつなぐ仕組み)で組み合わせる設計思想です。
「Composable(構成可能な)」という名の通り、レゴブロックのように部品を組み替えて自社に最適なシステムを構築します。Gartner社が提唱した概念で、従来型の一体型ECパッケージ(モノリシック型)に対するアンチテーゼとして注目されています。ヘッドレスコマース(フロントエンドとバックエンドを分離する考え方)は、コンポーザブルコマースを実現するための技術的アプローチの一つです。
「コンポーザブルコマース」の重要性
変化への対応速度
小売業のEC環境は急速に変化します。新しい決済手段、SNS連携、ライブコマースなど、次々と登場するチャネルに迅速に対応するには、システムの一部だけを入れ替えたり追加したりできる柔軟性が必要です。一体型パッケージでは、1つの機能を変えるだけでもシステム全体に影響が及び、改修に時間とコストがかかります。
ベストオブブリード戦略
コンポーザブルコマースでは、各機能領域で最も優れたサービスを選択できます。検索はA社、決済はB社、レコメンドはC社というように、機能ごとに最適解を組み合わせる「ベストオブブリード」戦略が可能です。スーパーマーケット(SM)のネットスーパーやドラッグストア(DgS)のECサイトなど、業態固有のニーズに合わせた構成を組めます。
ベンダーロックインの回避
特定のベンダーに依存する一体型システムでは、価格交渉力が弱まり、ベンダーの開発方針に左右されるリスクがあります。コンポーザブルコマースであれば、不満のある機能だけを別のサービスに差し替えることができます。
「コンポーザブルコマース」とIT活用
MACH アーキテクチャ
コンポーザブルコマースの技術基盤としてMACHアーキテクチャが提唱されています。Microservices(マイクロサービス)、API-first(API優先設計)、Cloud-native(クラウド前提)、Headless(画面と処理の分離)の頭文字を取った設計原則です。この4つを満たすサービスを組み合わせることで、コンポーザブルな構成が実現します。
小売業での現実的な導入
ただし、コンポーザブルコマースの導入には高度なIT人材が必要です。APIの設計・管理、複数サービス間のデータ整合性の確保、障害時の切り分けなど、運用負荷は一体型パッケージより高くなります。日本の小売業では、まずヘッドレスコマースで画面と処理を分離するところから段階的に取り組む企業が多い状況です。
オムニチャネルとの親和性
コンポーザブルな構成では、バックエンドの在庫管理や顧客管理を共通基盤として持ち、店舗アプリ、ECサイト、SNSなど複数のフロントエンドを柔軟に追加できます。オムニチャネル戦略を推進する上で、コンポーザブルコマースの考え方は理にかなっています。
まとめ
コンポーザブルコマースは、EC基盤を機能単位で最適化する設計思想です。柔軟性とスピードを重視する反面、運用にはIT人材と技術力が求められます。自社のECがどの程度の柔軟性を必要としているかを見極め、段階的にコンポーザブルな構成へ移行するか、一体型パッケージで十分かを判断してください。
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