小売DXで成果を出すには?利益につながる変革の本質をDXportalで語りました

DXportal®の「有識者に聞く」シリーズに、私・郡司昇のインタビューが掲載されました。

テーマは、小売DXにおける「成果を生む変革」の本質と、経営者が描くべき未来像です。

店舗勤務から、ドラッグストア経営、システム・物流統合、EC事業の黒字化、オムニチャネル戦略の推進まで。これまでの実務経験を踏まえ、デジタル導入を顧客価値と利益につなげるための考え方をお話ししました。

小売DXの出発点は、導入する技術ではありません。自社が顧客に提供したい価値と、それを実現する「あるべき姿」です。

本コラムでは、インタビューの主な論点を紹介しながら、自社の取り組みを見直すための視点を補足します。


目次

DXportal®にインタビューが掲載されました

掲載記事
小売DXの第一人者/ICT活用研究所・郡司昇氏「成果を生む変革」の本質と経営者が描くべき未来像【有識者に聞く⑨】

  • 媒体:DXportal®
  • 公開日:2026年8月12日
  • 更新日:2026年10月5日

小売DXの目的は、デジタル導入ではなく顧客価値と利益の向上

AIやデータ分析ツールを導入しても、それだけでDXが実現するわけではありません。


DXの「X」は、トランスフォーメーション、つまり変革です。デジタル技術を使って、業務や意思決定、顧客への価値の届け方を変える必要があります。

インタビューでは、顧客価値を高める方向性を2つに分けてお話ししました。

  • 買い物の「不」を取り除く。 欲しい商品がない、商品を探せない、レジで待つといった不便を減らす。
  • その店を選ぶ理由を増やす。 接客の質やサービスを高め、顧客の課題をよりよく解決する。

重要なのは、これらの変化を事業の成果につなげることです。

たとえば、発注作業の時間を短縮できても、欠品が増えて販売機会を失えば、成功とはいえません。接客支援AIを導入しても、顧客が必要な説明を受けられなければ、導入したこと自体に価値はありません。

「何を導入したか」ではなく、「顧客の何が変わり、利益にどうつながったか」で評価することが望ましいです。

デジタル化と店舗DXの違いは、「店舗DXとは?デジタル化との違いとWalmartの成功・失敗事例」でも解説しています。


成果を阻むのは、部門ごとの部分最適

小売DXの課題を、情報システム部門だけの問題として扱うと、解決すべき範囲を見誤ります。

商品部、物流、店舗運営、EC、マーケティング。それぞれの業務はつながっています。ある部門の改善が、別の部門の負担を増やすこともあります。

インタビューで挙げたのは、仕入れの例です。

バイヤーがリベート獲得を優先し、売れない商品を大量に仕入れる。商品部の評価上は成果でも、店舗では在庫、品出し、値下げの負担が増えます。仕入れ条件だけを見ていては、会社全体で利益が増えたかを判断できません。

DXを進める際は、少なくとも次の3点を確認することが望ましいです。

  1. 業務のつながり
    前後の工程を含め、どこで手戻りや滞留が発生しているか。
  2. 責任と権限の一致
    推進担当者が、必要な変更を決められるか。
  3. 評価指標の整合
    部門の成果が、顧客価値や会社全体の利益につながっているか。

ツールの選定だけでなく、業務フローと評価の仕組みまで見直す。それが、部分最適から全体最適へ進むための条件です。


小売DXの成功事例は、手法より前提条件を読む

今回のインタビューでは、ホームセンターのグッデイや、海外のユニクロなどの事例にも触れています。

ただし、他社と同じツールを使えば、同じ成果が出るわけではありません。

商圏、顧客の買い物行動、店舗規模、人員構成、物流条件が違えば、適した打ち手も変わります。店舗受け取りを例にしても、自動車で来店する顧客が多い店と、徒歩客が中心の店では、受け渡し場所や運用の設計が異なります。

事例から学ぶ際に確認したいのは、次の3つです。

  • その企業は、どの顧客課題を解決しようとしたのか。
  • 成果を支えた業務や組織の条件は何か。
  • 自社で使える部分と、変えるべき部分はどこか。

成功事例は、答えを借りるためではなく、自社の仮説をつくるために使うものです。

変わらない本質と、時代に合わせて変える手段を分ける。この「不易流行」の考え方は、「私が『本質』にこだわる理由」にもまとめています。


「あるべき姿」を、現場で確認できる状態まで具体化する

インタビューの最後にお伝えしたのは、経営者が「自分たちのあるべき姿」を具体化する重要性です。

「接客を強化する」「AIを活用する」だけでは、現場は何を変えるべきか判断できません。

たとえば接客を強みにするなら、「新人スタッフでも、顧客の商品選びに必要な情報を確認し、根拠を示して説明できる状態」まで具体化します。

そこから逆算すると、商品情報の整備、問い合わせへの対応手順、教育、AIによる支援など、必要な施策を分解できます。

取り組みを整理する際は、次のような表が役立ちます。

顧客の課題 あるべき姿 確認する指標の例
欲しい商品が見つからない 商品の場所と在庫を迷わず確認できる 商品探索時間、在庫案内の正確性
質問への回答を待たされる 担当者が必要な情報を確認して説明できる 回答までの時間、再問い合わせ率
店舗受け取りに時間がかかる 注文品を正確に、待たずに受け取れる 受け渡し時間、誤出荷率
本コラムで補足した設計例です。各社の実態に合わせて指標を設定する必要があります。

顧客体験の指標に加え、売上、粗利益、運用コストも確認します。削減した作業時間については、その時間を何に振り向け、どの成果につながったかまで追うことが望ましいです。

現場の一次情報を、変革の判断材料にする

私は、海外を年3〜4回訪れ、国内を含めて年間500店舗を見ることを目安にしています。

目的は、新しい機器を探すことだけではありません。顧客がどう買い物をし、従業員がどう働き、仕組みがどう運用されているかを確かめるためです。

発表資料では便利に見えるサービスでも、実際に使うと手間がかかることがあります。反対に、目立たない業務の変更が、買い物のしやすさを支えていることもあります。

AIで情報を集めやすくなったからこそ、現場で確認する価値があります。小売DXでは、技術の情報と店舗の実態を結びつけて判断することが欠かせません。

インタビュー全文と、小売DXのご相談について

DXportal®のインタビューでは、これらの論点に加え、EC事業の黒字化経験、著書『小売業の本質2025DX』、監修を務めた『小売業と店舗の最新トレンド2026』についてもお話ししています。

小売業の経営者やDX推進担当者はもちろん、小売向けのサービスを開発するIT企業の方にも読んでいただきたい内容です。

DXportal®で郡司昇のインタビュー全文を読む

私の経歴や活動は、郡司昇のプロフィール・経歴をご覧ください。

小売企業のデジタル活用、オムニチャネル戦略、IT企業の小売向けサービス開発に関するご相談は、小売DX合同会社で受け付けています。

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