「クリック&コレクト」とは
クリック&コレクトとは、消費者がECサイトやアプリで商品を注文し、最寄りの店舗で受け取る購買方式です。BOPIS(Buy Online Pick-up In Store=オンラインで購入し店舗で受け取る)とほぼ同義で使われます。
仕組みはシンプルです。顧客がオンラインで商品を選び、受け取り店舗と日時を指定して決済します。店舗側は注文を受けて商品をピッキング(棚から集める作業)し、専用カウンターや駐車場で顧客に引き渡します。配送を待つ必要がなく、顧客は自分の都合に合わせて受け取れます。
欧米では広く普及している方式です。ウォルマート(米国)はカーブサイドピックアップ(車に乗ったまま受け取り)を全米4,700店以上で展開しています。フランスのカルフールは「カルフール・ドライブ」として専用受け取りレーンを設置し、2010年代から積極的に拡大してきました。英国ではテスコやセインズベリーズが食品のクリック&コレクトを日常サービスとして定着させています。
一方、日本ではまだ発展途上の段階です。コンビニ受け取りやロッカー受け取りは普及しつつありますが、生鮮食品を含む本格的なクリック&コレクトは一部の事業者に限られています。
「クリック&コレクト」の重要性
クリック&コレクトが注目される理由は、小売業と顧客の双方にメリットがあるためです。
配送コストを大幅に削減できます。 ラストワンマイル(最終配送区間)の物流コストは、EC事業の利益を圧迫する最大の要因です。クリック&コレクトでは顧客が自ら店舗に来るため、この配送コストがゼロになります。英国の調査では、クリック&コレクトの1件あたりの物流コストは宅配の約5分の1というデータがあります。
「ついで買い」が売上を押し上げます。 商品を受け取りに来た顧客は、店内で追加購入する傾向があります。ICSC(国際ショッピングセンター協会)の調査によると、クリック&コレクト利用者の約85%が受け取り時に追加で商品を購入しています。これはEC単体では得られない売上です。
業態によって導入効果が異なります。 スーパーマーケット(SM)では、生鮮品の「鮮度を自分の目で確認したい」というニーズと「買い物時間を短縮したい」というニーズの両立が可能です。ドラッグストア(DgS)では、処方薬のオンライン予約と店頭受け取りの組み合わせで待ち時間を解消できます。コンビニエンスストア(CVS)では、豊富な店舗網を活かした受け取り拠点としての機能が強みになります。
再配達問題の解決策にもなります。 国土交通省によると、日本の宅配便の再配達率は約11.4%(2023年度)です。店舗受け取りなら不在による再配達が発生しません。物流業界の人手不足が深刻化するなか、社会的な意義も大きいといえます。
「クリック&コレクト」とIT活用
クリック&コレクトを円滑に運用するためには、複数のシステム連携が不可欠です。
リアルタイム在庫管理が前提条件です。 顧客がオンラインで注文する時点で、受け取り店舗に在庫があるかどうかを正確に表示する必要があります。POSデータと倉庫管理システム(WMS)をリアルタイムで連携し、店舗ごとの在庫を可視化することが基盤となります。
OMS(注文管理システム)が司令塔の役割を果たします。 オンラインの注文情報を店舗のオペレーションに橋渡しするのがOMSです。注文の受付、ピッキング指示、準備完了通知、受け取り確認までの一連の流れを管理します。店舗スタッフのスマートフォンやタブレットに作業指示を送る仕組みがあれば、既存のオペレーションへの影響を最小限に抑えられます。
ECサイトとの統合が顧客体験を左右します。 受け取り店舗の選択、在庫状況の表示、受け取り時間帯の指定など、オンライン上のUI(画面設計)がスムーズでなければ顧客は離脱します。また、注文確認メールや準備完了通知など、顧客とのコミュニケーションを自動化することで利便性が高まります。
モバイルオーダーとの親和性も高いです。 スマートフォンアプリから注文して店舗で受け取る流れは、クリック&コレクトそのものです。アプリにGPS機能を組み合わせれば、顧客の来店を検知して商品の準備タイミングを最適化することもできます。ウォルマートのアプリでは、駐車場到着時に自動通知が送られ、スタッフが車まで商品を届ける仕組みが実現しています。
データ活用の観点でも大きな可能性があります。 オンライン注文データと店舗での受け取り行動を組み合わせることで、顧客の購買パターンをより深く把握できます。どの商品がクリック&コレクトで多く注文されるか、ついで買いの傾向はどうかなど、オムニチャネル戦略全体の改善に役立つ知見が得られます。
まとめ
クリック&コレクトは、ECの利便性と店舗の即時性を組み合わせた購買方式です。配送コストの削減、ついで買いによる売上増、再配達問題の解消など、小売業にとって多くのメリットがあります。日本ではまだ普及の初期段階ですが、物流コストの上昇と人手不足を背景に、今後急速に広がる可能性があります。まずは自社のEC基盤と店舗在庫の連携を整備し、小規模な受け取りサービスから始めてみることをおすすめします。
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