「モバイルオーダー」とは
モバイルオーダーとは、スマートフォンのアプリやWebサイトから商品を事前に注文・決済できる仕組みです。店舗に到着する前に注文を完了させておき、店頭ではスムーズに商品を受け取るだけで済みます。
もともとはスターバックスやマクドナルドなど、飲食チェーンが先行して導入した仕組みです。スターバックスは2015年に米国で「Mobile Order & Pay」を開始し、現在では全米の注文の約30%がモバイルオーダー経由とされています。マクドナルドも公式アプリを通じた事前注文を世界各国で展開し、ドライブスルーとの連携で待ち時間の大幅な短縮を実現しました。
「モバイルオーダー」の重要性
モバイルオーダーが小売業で注目される理由は、顧客体験の向上と業務効率化の両面にあります。
待ち時間の削減が顧客満足度を高めます。 レジや注文カウンターでの待ち時間は、顧客にとって大きなストレスです。モバイルオーダーを使えば、到着前に注文が完了しているため、受け取り時間は数十秒で済みます。ある調査では、待ち時間が5分を超えると顧客満足度が約40%低下するとされており、時間短縮の効果は非常に大きいといえます。
注文データの事前把握が食品ロスを削減します。 従来のデリカ(総菜)やベーカリーでは、需要を予測して見込み生産するため、売れ残りによる廃棄が課題でした。モバイルオーダーで事前に注文数が確定すれば、必要な分だけ調理できます。食品ロスの削減は、コスト面だけでなくSDGs(持続可能な開発目標)の観点からも重要です。
業態によって活用の重点が異なります。 スーパーマーケット(SM)では、デリカやベーカリーの予約注文が主な用途です。ドラッグストア(DgS)では、処方薬の事前受付等に活用できます。コンビニエンスストア(CVS)では、弁当やコーヒーの事前注文で昼食時の混雑緩和に効果を発揮します。
「モバイルオーダー」とIT活用
モバイルオーダーを実現・拡張するには、複数のITシステムとの連携が不可欠です。
アプリが顧客との接点になります。 モバイルオーダーの入り口は、多くの場合スマートフォンアプリです。アプリ内で商品一覧の閲覧、注文、決済、受取時間の指定までを完結させます。プッシュ通知で「商品の準備ができました」と知らせる機能も、顧客体験の向上に寄与します。
キャッシュレス決済との統合が前提です。 モバイルオーダーでは、注文と同時にアプリ内で決済を完了させるのが一般的です。クレジットカード、電子マネー、QRコード決済など複数の決済手段に対応することで、利用のハードルを下げられます。決済が事前に完了しているため、店頭でのレジ業務も不要になります。
POSシステムとの連携が運用の鍵です。 モバイルオーダーの注文データは、店舗のPOS(販売時点情報管理)システムに自動連携される必要があります。これにより、在庫の即時反映や売上の一元管理が可能になります。また、注文データをAIで分析すれば、時間帯別の需要予測精度が向上し、人員配置や製造量の最適化にもつながります。
BOPIS(Buy Online, Pick-up In Store)への発展が見込まれます。 モバイルオーダーは、ネットで注文して店舗で受け取るBOPISの基盤技術でもあります。デリカの予約注文からスタートし、日用品や生鮮食品にまで対象を広げることで、オムニチャネル戦略の一環として機能します。顧客は「通勤途中にアプリで注文し、帰宅時に店舗で受け取る」という新しい購買スタイルを手に入れられます。
蓄積データがマーケティングに活きます。 モバイルオーダーを通じて得られる注文履歴・時間帯・メニュー選好などのデータは、個人に合わせたクーポン配信やレコメンド(おすすめ提案)に活用できます。「毎週金曜の18時にサラダを注文する顧客」に対して、関連商品の割引を提案するといった施策が可能になります。
まとめ
モバイルオーダーは、「待たない買い物体験」を実現する仕組みです。飲食業で実証された効果は、小売業でも十分に再現できます。まずはデリカやベーカリーなど、調理を伴う商品カテゴリから導入を始めるのが現実的です。注文データの蓄積が進めば、食品ロスの削減や需要予測の高度化といった経営課題の解決にもつながります。自社のアプリ戦略やキャッシュレス対応状況を踏まえ、段階的に導入範囲を広げていきましょう。
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