「死に筋」とは
死に筋とは、店舗の棚に並んでいるにもかかわらず、ほとんど売れずに滞留している商品のことです。英語では「Dead Stock」と表記します。対義語は「売れ筋(Fast Mover)」で、この2つは品揃えを評価する際の基本的な分類軸となります。
死に筋が発生する原因はいくつかあります。需要予測の精度が低く過剰に仕入れたケース、季節商品の販売時期を逃したケース、トレンドの変化に棚割り(商品の配置計画)の見直しが追いつかなかったケースなどが代表的です。また、取引先との契約条件や本部一括導入の仕組みにより、店舗の実需と合わない商品が棚に残り続ける構造的な問題もあります。
死に筋の判定には一般的にABC分析が用いられます。売上金額や販売数量の上位から商品をA・B・Cランクに分類し、Cランクの中でも特に動きの鈍い商品を死に筋と判定します。一定期間(たとえば4週間)の販売数量がゼロまたは1個以下といった基準を設ける企業が多いです。
「死に筋」の重要性
死に筋は単に「売れない商品」というだけの問題ではありません。棚スペースという限られた経営資源を占有し、売れ筋商品の陳列機会を奪っているという点で、店舗全体の売上と利益に悪影響を及ぼします。
スーパーマーケット(SM)では、1店舗あたりの取扱アイテム数が1万〜3万点にのぼります。このうち売上の80%を生み出しているのは上位20%程度の商品であり、残りの中に多くの死に筋が含まれています。SMでは生鮮食品のように消費期限がある商品の死に筋化は廃棄ロスに直結するため、在庫金額だけでなく食品ロスの観点からも深刻な課題です。
ドラッグストア(DgS)では、医薬品・化粧品・日用品・食品と幅広いカテゴリーを扱うため、死に筋が生まれやすい構造を持っています。特に化粧品はメーカーの新商品投入サイクルが早く、棚の入れ替えが追いつかないと旧商品が死に筋化します。在庫回転率(一定期間に在庫が何回入れ替わったかを示す指標)がカテゴリーごとに大きく異なる点もDgSの特徴です。
コンビニエンスストア(CVS)は売場面積が約30坪と小さく、取扱アイテム数は約3,000点に限られます。棚1段あたりの売上貢献が大きいため、死に筋を1アイテム排除して売れ筋に差し替えるだけで日販(1日あたりの売上高)に目に見える効果が出ます。CVSチェーンでは週次で棚割りを見直し、死に筋の早期排除を徹底しているケースが一般的です。
業態を問わず、死に筋を放置すると在庫回転率が低下し、キャッシュフロー(手元資金の流れ)を圧迫します。最終的に値下げ(マークダウン)で処分することになれば、粗利益率の悪化にもつながります。
「死に筋」とIT活用
DXの進展により、死に筋の検知と排除は「担当者の経験と勘」から「データに基づく仕組み化」へと移行しつつあります。
POSデータの活用が基本です。単品ごとの販売数量・販売金額・販売頻度をリアルタイムで把握し、一定期間の動きが基準値を下回った商品を自動的にアラートとして抽出できます。従来は月次の帳票で確認していた死に筋判定を、日次や週次で回すことが可能になりました。
ABC分析をさらに発展させた手法として、交差比率(粗利益率と在庫回転率を掛け合わせた指標)による評価があります。売上は少なくても粗利益率が高い商品と、売上はそこそこあるが利益貢献が低い商品を区別でき、単純な販売数量だけでは見落とす「隠れた死に筋」を検知できます。
AIを活用した需要予測も死に筋対策に有効です。過去の販売実績に加え、天候・曜日・イベント・競合の販促情報といった外部データを組み合わせることで、将来的に死に筋化するリスクの高い商品を事前に特定できます。あるSMチェーンでは、AI需要予測の導入により発注精度が向上し、死に筋在庫を約25%削減した事例が報告されています。
自動発注システムとの連携も重要です。死に筋と判定された商品の発注を自動的に停止し、棚割りシステムと連動させて代替商品への差し替えを提案する仕組みを構築している企業もあります。こうした一連の流れを人手ではなくシステムで回すことが、死に筋排除の速度と精度を高めるポイントです。
まとめ
死に筋(Dead Stock)は、棚スペースを占有しながら売上に貢献しない商品であり、放置すれば在庫回転率の低下・廃棄ロス・値下げによる粗利悪化を招きます。SM・DgS・CVSそれぞれの業態で死に筋が発生する背景は異なりますが、限られた棚を最大限に活かすために早期検知と排除が欠かせません。POSデータによるABC分析、交差比率による利益視点の評価、AI需要予測による予防的な在庫管理など、DXツールを活用すれば死に筋対策を仕組み化できます。まずは自店の売場でCランク商品の一覧を抽出し、棚1段あたりの売上貢献を可視化するところから始めてみてください。
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