視察した店舗の概要
京阪枚方市駅の駅構内にある「ひらかた もより市」を視察した。京阪本線と交野線の乗換動線上にエキナカ食物販が組み込まれた立地である。
間口は中型サイズで、入口にベーカリー、奥に生鮮・惣菜・加工食品・ドリンクが続く。店頭ワゴンには「自社工房ベーカリーで焼き上げた こだわりのパンをお届けします」のPOPと、累計販売2万個を強調する販促物が掲示されていた。
企業概要と業態の位置づけ
運営は株式会社京阪ザ・ストア。2000年4月設立、本社は大阪市中央区大手前の京阪天満橋ビル6階。資本金1億円、従業員1,041名(うち社員152名、2023年7月時点)。株主は京阪ホールディングス株式会社と株式会社京阪百貨店で、京阪HDグループの流通中核会社である。
同社はスーパーマーケット「フレスト」、駅ナカ食品店「もより市」、スイーツ専門店「SWEETS BOX」、駅構内ユニクロやMUJIcomの業務提携運営、いなりずし「伏見稲荷千本いなり」など、駅と街の食を多業態で抑えている。「ひらかた もより市」は同社の駅ナカ業態の中核店舗のひとつに位置づけられる。
店舗立地と周辺地域の特徴
枚方市駅は京阪本線と交野線の結節駅で、大阪・京都の中間に位置し両方面の通勤通学客が日常的に乗降する。駅周辺は再開発が進み、京阪百貨店ひらかた店、枚方モールなどの商業集積が連なる。
店舗は改札内ではないが、ホーム階から改札を抜けてすぐの構内通路に面しており、降車後すぐに立ち寄れる動線にある。
業態内での特徴
もより市は「改札口を出なくても買い物ができる」をコンセプトに、駅ナカに複数専門店を集約する設計を取る。ひらかた店はマーケット、自社工房ベーカリー、スイーツ専門店で構成される。ベーカリーは冷凍生地のリベイクではなく、現場で混捏・成形・焼成までを行う仕様で、コンビニや競合エキナカとの差別化軸になっている。生鮮も最小限ながら扱い、夕食材調達の需要を取りに行く品揃えである。
小売DX・店舗運営上の示唆
鉄道会社系列の駅ナカ食物販は、JR東日本のエキュート、NewDaysなど首都圏に類例が多いが、関西の私鉄系列が自前で多業態展開する事例は相対的に少ない。京阪ザ・ストアは沿線商圏に対し、スーパーマーケット(フレスト)と駅ナカ食品店(もより市)の役割分担で「家まわり」と「駅まわり」の購買シーンを抑える設計を採る。
通勤客の帰宅動線で「焼きたて」「夕食材」「スイーツ」を一括取得できる業態は、コンビニや徒歩圏SMとは異なる「ラスト・マイル食物販」のポジションを作っている。鉄道カード(PiTaPa)や京阪グループポイントとの連携、沿線顧客のIDデータ統合は次の打ち手として余地が大きい領域である。
郡司の一言コメント
私鉄系列が駅ナカで自社工房ベーカリーを持ち込み、SMとは別フォーマットで通勤客の帰宅動線を抑える構成は、商圏を「家まわり」「駅まわり」に分けて顧客接点を多重化する好例といえる。沿線データと購買データの統合活用が次の論点になる。