視察した店舗の概要
中央ジャカルタの大型モールGrand Indonesia East Mall LG階に出店するWatsonsを2026年6月視察した。エントランス正面に大型のデジタルサイネージを掲げ、薬剤師相談サービスを訴求する。サイネージには「ask your Pharmacist」「Konsultasi via WhatsApp」「GRATIS」(無料)と並び、QRコードからチャットに遷移できる。店内は赤を基調にしたセール装飾が多く、入口付近には「SALE 50%」のPOPが複数掲示されていた。
企業概要と業態の位置づけ
Watsonsは香港のCK Hutchison Holdings傘下、AS Watson Groupが世界展開するヘルス&ビューティ専門チェーンである。インドネシア事業はPT Duta Intidaya Tbk(IDX上場、ティッカー DAYA)が運営する。株主構成はTotal Alliance Holdingsが約74%、地元法人2社で約18%、公衆が約8%である。インドネシア1号店は2006年のPondok Indah Mall 2で、現在はジャワ、バリ、スマトラなど主要島で約157店舗を展開する。
店舗立地と周辺地域の特徴
Grand IndonesiaはJl. M.H. Thamrin No.1、いわゆるジャカルタの目抜き通りに面する大型複合商業施設である。East MallとWest Mallの2棟構成で、隣接するHotel Indonesia KempinskiやBundaran HI(独立記念ロータリー)に近い。MRTのBundaran HI駅徒歩圏で、富裕層、観光客、周辺オフィスワーカーの導線が交わる。今回の店舗はLG階の主要通路に面し、隣にアパレル区画がある。ついで買いが発生しやすい配置と言える。
業態内での特徴
インドネシアのWatsonsは薬局(Apotek)併設型が多く、当店も「Apotek New Grand Indonesia」として薬局機能を持つ。サイネージでは血圧測定(cek tensi)と処方箋受付(Terima Resep Dokter)を前面に出し、単なる物販ではなく簡易ヘルスケア拠点としての性格を強調している。売場では水曜日に自社ブランドを訴求する「watsons brand on Wednesday」、メイクアップ強化エリア、日本産訴求の「SUPER MILD(Made in Japan)」など、PBと輸入商品の組合せで構成されている。
小売DX・店舗運営上の示唆
注目したいのは、薬剤師相談の窓口に専用アプリではなくWhatsAppを採用している点である。インドネシアではWhatsAppが生活インフラとして普及しており、新規アプリの導入コストを払わずに顧客接点を作っている。会員プログラム「#JadiMemberPastiUntung」と組み合わせ、健康相談から購買、再来店までを既存の通信手段の上で完結させる設計と言える。日本のドラッグストアにとっても、LINE上に同等の薬剤師相談・処方箋送信・会員特典を載せる設計は応用余地が大きいと考えられる。
郡司の一言コメント
WhatsAppによる薬剤師相談は、専用アプリを作らずに生活者の手元の通信手段に乗る設計が秀逸である。日本ではLINEで同等の体験を低コストに用意できる可能性がある。曜日×PBの販促企画も来店頻度を上げる仕掛けとして練り込みが効いており、PB戦略の参考になる。