この記事の要点
コンビニの平均日販は実質では減っている
セブン‐イレブン、ローソン、ファミリーマートの平均日販は、3社とも10年前より増えています。ところが全国の消費者物価指数(CPI)は、同じ10年間で14.0%上がっています。物価で補正すると、3社とも実質では減っています。減少幅はセブン‐イレブンが約6.5%、ローソンが約2.8%、ファミリーマートが約1.9%(集計範囲を揃えた場合)です。
本部は成長したが加盟店オーナー負担は増加している
チェーン全体の規模は、3社とも店舗数を18〜41%増やしたため、実質でも伸びました。本部は店舗数で成長し、1店舗当たりの売上は物価の上昇に追いつかなかったわけです。最低賃金(全国加重平均)は10年間で40.5%上がりました。加盟店オーナーが1日の粗利で払える最低賃金の労働時間は、セブン‐イレブンで約24%、ローソンで約20%減っています。
比較の条件
比較するのは2015年度(2015年3月〜2016年2月)と2025年度(2025年3月〜2026年2月)の通期です。日販は各社が公表する全店平均を使いました。物価は全国CPI総合の2015年平均と2025年平均を使いました。日販は年度、CPIは暦年なので、結果は概算です。会計基準、集計対象の店舗、商品構成の変化は補正していません。
| 項目 | 2015年度 | 2025年度 | 出典 |
|---|---|---|---|
| セブン‐イレブン 全店平均日販 | 65.6万円 | 69.9万円 | 1、5、8 |
| ローソン 全店平均日販 | 54.0万円 | 59.8万円 | 3、5 |
| ファミリーマート 全店平均日商(公表値) | 51.6万円 | 58.5万円 | 4、5 |
| ファミリーマート 全店平均日商(単体推計) | 51.6万円 | 57.7万円 | 13、14 |
| セブン‐イレブン 国内店舗数 | 18,572店 | 21,927店 | 4、5 |
| ローソン 国内店舗数 | 12,395店 | 14,697店 | 3、5 |
| ファミリーマート 国内店舗数 | 11,656店 | 16,415店 | 4、5 |
| 全国CPI総合(2020年=100) | 98.2 | 111.9 | 9、10 |
| 最低賃金(全国加重平均) | 798円 | 1,121円 | 11、12 |
ローソンの日販は「ローソン」と「ナチュラルローソン」の合計で、ローソンストア100を含みません。総務省は2026年に、CPIを2025年基準へ改定しました。新しい基準でも2015年は87.7で、10年間の上昇率は14.0%と変わりません。
ファミリーマートの2015年度の51.6万円は、単体の数字です。2025年度の58.5万円は、沖縄や南九州などの国内エリアフランチャイズ(AFC)を加えた「チェーン全店平均日商」です。同社は2022年度と2023年度について、両方の数字を公表しています。単体はそれぞれ53.4万円と56.1万円、AFC込みは54.2万円と56.9万円で、AFC込みが約1.46%高くなります。この比率で2025年度を割り戻し、単体を57.7万円と推計しました。
本稿の粗利率は、セブン‐イレブンが公表する「商品荒利率」と、ローソンが公表する「総荒利益率」を指します。
計算式
実質増減率=(2025年度の値÷2015年度の値)÷(2025年CPI÷2015年CPI)−1
年平均成長率(CAGR)=(2025年度の値÷2015年度の値)の10乗根−1
ミックス効果=全店日販の伸び÷既存店売上の10年累積の伸び−1
1.1店舗当たり日販の実質成長
| 会社 | 2015年度 | 2025年度 | 名目 | 2025年度(2015年価格) | 実質 | 実質CAGR |
|---|---|---|---|---|---|---|
| セブン‐イレブン | 65.6万円 | 69.9万円 | +6.6% | 61.3万円 | −6.5% | −0.67% |
| ローソン | 54.0万円 | 59.8万円 | +10.7% | 52.5万円 | −2.8% | −0.29% |
| ファミリーマート(単体推計) | 51.6万円 | 57.7万円 | +11.7% | 50.6万円 | −1.9% | −0.19% |
| ファミリーマート(公表値) | 51.6万円 | 58.5万円 | +13.4% | 51.3万円 | −0.5% | −0.05% |
物価は10年間、年平均1.31%のペースで上がりました。セブン‐イレブンの日販は名目で年0.64%しか伸びず、物価の伸びの半分にとどまります。ファミリーマートは単体推計で年1.12%伸びましたが、物価には届いていません。
2025年基準のCPIで計算し直しても、結果の差は0.1ポイント以内です。
2.日販の伸びを既存店と新店・閉店に分ける
開店年ごとの既存店日販は、3社とも公表していません。そこで、各社が毎年公表する既存店の前年比を10年分掛け合わせ、全店日販の伸びと比べました。両者の差が、新店の開業、閉店、ブランド転換による平均の押し上げ(または押し下げ)で、この差をミックス効果と呼びます。
| 会社 | 全店日販の伸び | 既存店の10年累積 | 既存店の実質 | ミックス効果 |
|---|---|---|---|---|
| セブン‐イレブン | +6.6% | +10.7% | −2.9% | −3.7% |
| ローソン | +10.7% | +9.2% | −4.2% | +1.4% |
| ファミリーマート(単体推計) | +11.7% | +12.1% | −1.6% | −0.3% |
| ファミリーマート(公表値) | +13.4% | +12.1% | −1.6% | +1.1% |
ファミリーマートのミックス効果は、同じ集計範囲で比べると−0.3%で、ほぼゼロでした。同社は2018年度に、1,000店を単純閉店し、980店をブランド転換に伴って閉店しています(出典15)。それでも10年間で見ると、閉店による平均の押し上げは確認できません。サークルK・サンクスとの統合で不採算店を閉めた効果が平均日販を押し上げた、という見方は、このデータでは支持できないと私は判断します。
ファミリーマートの日販の伸びは、既存店の伸びでほぼ説明できます。既存店の10年累積は+12.1%で、3社の中で最も高い数字です。
公表値で生じる+1.1%の差は、主にAFCを含めた集計範囲の変更によるものです。
セブン‐イレブンは逆に、ミックス効果が−3.7%でした。既存店は10年で+10.7%伸びたものの、新店の日販が既存店より低いため、全店平均が下がっています。2024年度の新店平均日販は57.9万円で、全店平均の69.2万円より11.3万円低い水準です(出典8)。同社は2016年度から2024年度までに、計8,357店を出店しました(出典8)。
ローソンのミックス効果は+1.4%で、新店と閉店の入れ替えが平均をわずかに押し上げました。ただし既存店の実質は−4.2%で、3社の中で最も低い数字です。
この計算には3つの限界があります。第1に、既存店の定義が年によって違います。セブン‐イレブンの2016〜2017年度はPOSAカードを含みます。ファミリーマートの2017〜2018年度はブランド転換店を除き、2024〜2025年度はたばこを除いた数字です。第2に、既存店前年比は売上高の比率で、1店舗当たり日販の比率と完全には一致しません。第3に、出店年ごとの日販(コホート)は非公開のため、どの年の新店が平均を下げたかまでは分かりません。
3.チェーン規模の実質成長(概算)
| 会社 | 店舗数の増減 | 店舗数×日販×365日 | 名目 | 実質 |
|---|---|---|---|---|
| セブン‐イレブン | +18.1% | 4.45兆円→5.59兆円 | +25.8% | +10.4% |
| ローソン | +18.6% | 2.44兆円→3.21兆円 | +31.3% | +15.2% |
| ファミリーマート | +40.8% | 2.20兆円→3.51兆円 | +59.7% | +40.1% |
3社とも、店舗数の増加で規模を実質でも伸ばしました。ファミリーマートの実質40.1%の伸びの多くは、サークルK・サンクスとの経営統合による増加です。
各社が公表するチェーン全店売上高は、10年前と同じ基準で比べられません。セブン‐イレブンは2022年度から収益認識の会計基準を変え、従来方式の数字を「総額チェーン全店売上」として別に載せています(出典8)。ローソンのチェーン全店売上高には、海外事業と成城石井が入ります。そこで「店舗数×日販×365日」で規模を概算しました。ファミリーマートの2025年度の店舗数には、サークルK・サンクスから転換した店舗が入っています。
4.加盟店オーナーから見た変化
4-1.1日の売上と粗利で払える労働時間
| 会社 | 2015年度 | 2025年度 | 増減 |
|---|---|---|---|
| セブン‐イレブン(日販÷最低賃金) | 822時間 | 624時間 | −24.1% |
| ローソン(日販÷最低賃金) | 677時間 | 533時間 | −21.2% |
| ファミリーマート(日商÷最低賃金、単体推計) | 647時間 | 514時間 | −20.5% |
セブン‐イレブンとローソンは商品の粗利率を公表しているため、1店舗1日当たりの粗利を計算しました。
| 会社 | 粗利率(2015→2025年度) | 1日の粗利 | 名目 | 実質 | 粗利で払える最低賃金の時間 |
|---|---|---|---|---|---|
| セブン‐イレブン | 31.6%→31.8% | 20.7万円→22.2万円 | +7.2% | −5.9% | 260時間→198時間(−23.7%) |
| ローソン | 31.3%→31.8% | 16.9万円→19.0万円 | +12.5% | −1.3% | 212時間→170時間(−19.9%) |
粗利率の改善で、粗利の伸びは日販の伸びを少し上回りました。それでも最低賃金の伸びには遠く届きません。セブン‐イレブンで粗利を最低賃金と同じ40.5%伸ばすには、粗利率31.8%のまま日販を約91.6万円にする必要があります。
人件費だけでなく、電気料金も上がっています。全国CPIの「電気代」は、2015年平均の101.4から2025年平均の118.1へ、10年間で16.5%上昇しました(出典23)。セブン‐イレブンの粗利の伸び7.2%、ローソンの12.5%を上回ります。
| 項目 | 2015年平均 | 2025年平均 | 10年間の増減 |
|---|---|---|---|
| 全国CPI「電気代」(2020年=100) | 101.4 | 118.1 | +16.5% |
ただし、CPIは家庭向け料金の指標です。店舗の契約や使用量、省エネ設備、本部の補助は反映しないため、加盟店の実際の負担増を示す数字ではなく、電気料金上昇の参考値として読む必要があります。
ファミリーマートの2015年度の粗利率は、公開資料で確認できませんでした。1店舗当たりの人件費は3社とも公表していません。セブン‐イレブンは2019年に経済産業省の検討会で、加盟店人件費の推移を指数のグラフで示しました(出典16)。ただし数値の表はありません。実際の負担を測るには、本部が加盟店会計で持つ1店舗当たり人件費の開示が必要です。コンビニの時給は最低賃金より高い水準にありますが、ここでは両者が同じ方向に動くと仮定しました。
4-2.セブン‐イレブンの加盟店利益
セブン‐イレブンの加盟店利益の前年比は、2021年度から2024年度まで順に98.5%、106.6%、104.5%、95.7%です。2025年度は上期が95.8%、下期が99.3%でした(出典2、5)。2020年度を100として積み上げると、2025年度は約102.4になります。物価で補正すると、5年間で約8.5%の減少です。阿久津知洋社長は、加盟店利益が2年続けて下がったことを大きな課題と述べています(出典5)。
2025年度は上期と下期の単純平均で計算しました。月額の金額は決算説明資料のグラフにしか載っておらず、今回の調査でも数値の表は見つかりませんでした。
4-3.ローソンの加盟店利益
竹増貞信社長は2026年10月の決算会見で、10年間で日販が約1.5割、加盟店利益が約2割増えたと説明しました(出典6)。ローソンが示す加盟店利益は、オーナー1人当たりの店利益です(出典7)。2015年から2025年のCPIで割り引くと、実質の伸びは約5%になります。最低賃金の伸びと比べると、約15%下回ります。
オーナー1人当たりの数字は、複数店を経営するオーナーが増えるだけでも伸びます。1店舗当たりとオーナー1人当たりの数字は、分けて読むことが望ましいです。
ファミリーマートでは2016年2月末の時点で、国内店舗の約70%が複数店経営でした(出典4)。ローソンの複数店経営の比率は、今回の調査では見つかりませんでした。1店舗当たりとオーナー1人当たりを分けるには、オーナー数か複数店経営の比率の推移が必要です。
4-4.ファミリーマートの加盟店利益
ファミリーマートは、加盟店利益が5年連続で増え、3年連続で過去最高を更新したと発表しています(出典5)。ただし金額は公表していないため、10年間の実質比較には、1店舗当たり平均加盟店利益の金額の推移が必要です。
5.小売経営への示唆
10年間で本部は店舗網を広げて成長しました。一方で1店舗の稼ぐ力は、物価と賃金の両方に対して弱くなりました。たとえオーナーが不動産を持っているケースでも、人件費と光熱費の上昇に粗利益の成長が追いついていないため、コンビニオーナーの経営は厳しくなっています。
前年比だけで見ると成長しているように見えるコンビニエンスストア各社ですが、オーナーの負担は増え続け業態としての壁が見えつつある状況と筆者には見えます。
出典
- [セブン&アイ・ホールディングス コーポレートアウトライン2016 2016年6月 https://www.7andi.com/library/dbps_data/_template_/_res/ir/library/co/pdf/2016_06.pdf]
- [セブン&アイ・ホールディングス 2025年度決算説明資料 2026年4月 https://assets.finboard.net/tdnet-filings/20260408500481.pdf]
- [ローソン 2016年2月期決算補足資料 2016年4月 http://ke.kabupro.jp/tsp/20160413/140120160413456821.pdf]
- [ファミリーマート Annual Report 2016 2016年6月 https://www.family.co.jp/content/dam/family/english/ir/library/annual/document/fm/fm2016.pdf]
- [流通ニュース コンビニ3社の業績比較(前編) 2026年4月 https://www.ryutsuu.biz/strategy/s042046.html](2次情報)
- [流通ニュース ローソン決算 3〜8月 2026年10月 https://www.ryutsuu.biz/accounts/s101516.html](2次情報)
- [流通ニュース ローソン決算 2月期 2026年4月 https://www.ryutsuu.biz/accounts/s041743.html](2次情報)
- [セブン&アイ・ホールディングス コーポレートアウトライン(数値編)国内コンビニエンスストア事業 2025年6月 https://www.7andi.com/ir/library/co_financial/2025/convenience_store]
- [総務省統計局 統計メールニュースNo.1832 2026年1月 https://www.stat.go.jp/info/mail/pdf/20260123_no1832.pdf]
- [経済温度計 消費者物価指数の推移 2026年 https://www.keizai-ondokei.net/cpi/](2次情報、検算用)
- [厚生労働省 平成27年度地域別最低賃金答申状況 2015年 https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000095389.html]
- [厚生労働省 地域別最低賃金額、未満率及び影響率 2025年 https://www.mhlw.go.jp/content/11201250/001720867.pdf]
- [ファミリーマート 2023年度決算・2024年度計画 2024年4月 https://www.family.co.jp/content/dam/family/company/familymart/overview/240410_setumeishiryo.pdf]
- [ファミリーマート 2024年度決算・2025年度計画 2025年4月 https://www.family.co.jp/content/dam/family/company/familymart/overview/250409_setumeishiryo.pdf]
- [ファミリーマート 2020年2月期決算参考資料 2020年4月 https://www.family.co.jp/content/dam/family/ir/library/references/fact_2002_wq0.pdf]
- [セブン‐イレブン・ジャパン 新たなコンビニのあり方検討会 説明資料 2019年11月 https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/new_cvs/honbuhearing/pdf/002_01_00.pdf]
- [ファミリーマート 2022年2月期 営業概況(単体) 2022年4月 https://www.family.co.jp/content/dam/family/company/familymart/overview/220414_eigyogaikyo.pdf]
- [ユニー・ファミリーマートホールディングス Annual Report 2018 データ編 2018年 https://www.family.co.jp/content/dam/family/english/ir/library/annual/document/UFHD_AR18E_10.pdf]
- [ローソン 統合報告書2022 業界動向・売上/店舗関連データ 2022年 https://www.lawson.co.jp/company/ir/library/annual_report/2022/pdf/ar2022_P64-67.pdf]
- [ローソン 2024年2月期決算補足資料 2024年4月 https://www.lawson.co.jp/company/ir/library/pdf/hosoku/hosoku_49_all.pdf]
- [ローソン 2025年度決算説明会資料 2026年4月 https://www.lawson.co.jp/company/ir/library/pdf/tanshin/setsumei_2025.pdf]
- [流通ニュース ファミマ決算 2月期 2026年4月 https://www.ryutsuu.biz/accounts/s040844.html](2次情報)
- [総務省統計局 2020年基準消費者物価指数 長期時系列データ 全国 年平均 品目別価格指数(1970年〜最新年) 2026年1月23日公表 https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&stat_infid=000032103938]
既存店前年比の出典は次のとおりです。セブン‐イレブンは出典2と8、ローソンは出典19〜21を使いました。ファミリーマートは出典13〜15、17、18、22を使いました。粗利率の出典は、セブン‐イレブンが出典2と8、ローソンが出典3と21です。